メンヘラテクノロジーの高桑蘭佳です。最近、プライベートで非常にムカつくことがありました。
ムカつくけれど、どうすることもできず、なかなか怒りの感情を消化できませんでした。その結果、気づくと怒りのあまり、スマホで「呪い」についてあれこれ調べていました。
非常に参考になる論文があったので、まずはその内容を簡単に共有します。
● 「呪い」とは、「誰かを恨んだり、妬んだり、はたまた呪いたくなる心性」のことであり、自己の不幸の要因を他人に見出そうとする意識のことである
● 超自然的な現象がリアリティを持っていた民俗社会においては、「呪い」という意識は、実際に呪いの儀式を行い発散することで、直接的な報復を回避し、間接的に社会的な秩序の維持に貢献していた
● 現代社会においては「呪い」のリアリティは薄れ、個人化によって「自己責任」において行動するべきというモラルが浸透している
● しかし、相手のせいとしか思えないような状況は、日常生活の中で現実として生じているだろうから、「呪い」の意識自体が社会から失われたわけではない
● 不幸な状況下で個人主義的価値観が強化され更に孤立をもたらすというのは、個人化の「呪い」とでも呼びうる事態である
(参考文献)伊藤慈晃. "オンライン Q&A サイトにおける不幸と個人化:「呪い」 の語に着目した身上相談を通じて." 社会学研究科年報 27 (2020): 19-30.
この論文を読んだとき、「それな」と心の中で連呼してしまうほど、私自身が呪いについて調べてしまった行動を説明してくれていると感じました。やはり、呪いのリアリティは失われているものの、「呪いたい」と思ってしまう気持ち自体は失われていないので、呪いの儀式は行き場のない感情を沈めるのには有効なのではないかと思いました。
そんな中、いつもお世話になっているデザイナーさんが開催するハッカソンイベントに参加する機会がありました。そこで、メンヘラテクノロジーのエンジニアとデザイナーとともに呪いの儀式ができるオンラインサービスを作ることになりました。
今回は、オンライン呪いサービスを作ったときのことを紹介しようと思います。
呪いの儀式の実装
今回、採用した呪いの儀式は、以下のような手順で実施したシンプルなものです。
(1)ろうそくに呪いたい対象と呪いたい気持ちを刻む
(2)ろうそくが燃え尽きるまで呪いたい気持ちを念じ続けることで成就する
ろうそくは人の寿命を連想されるものであるため呪具として適しており、ろうそくに名前を掘ることで呪いを掛ける対象の代替物であることを明確にできるのだそうです。仕組み的には、「丑の刻参り(※)」に近いタイプの呪いの儀式のようです。
(※)丑の刻(午前1時から午前3時ごろ)に神社の御神木に憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ち込むという、日本に古来伝わる呪いの一種。典型では、嫉妬心にさいなむ女性が、白衣に扮し、灯したロウソクを突き立てた鉄輪を頭にかぶった姿で行うものである(Wikipediaより引用)。
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