金融庁が2021年11月17日、デジタル・分散型金融への対応のあり方について、報告書を公表した。
この報告書は、研究会の「中間論点整理」という位置づけだが、「早急に制度的な対応を行なう必要があるステーブルコインへの対応」を中心とする内容だ。
この報告書が、早急な対応をする必要があると述べている背景には、米政府の動きがある。日本の金融庁の一足先、米政府は11月1日にステーブルコインに関する報告書を発表し、議会に対して規制強化のための法整備を求めている。
金融庁も米政府の直後に報告書を公表したことで、日本政府も米国と足並みをそろえ、近く、規制強化に踏み切る可能性が高いと考えるのが自然だろう。
ステーブルコインのおさらい
すでにおなじみの人も多いと思われるが、ステーブルコインにはいくつか種類がある。金融庁の研究会の報告書は、以下の2種類に整理している。
- 法定通貨の価値と連動するもの
- アルゴリズムで価値の安定を試みるもの
いまのところ、「法定通貨の価値と連動」するタイプが優勢だ。
たとえば、1コインに対して1円で仮想通貨を発行し、仮想通貨から円を買い戻すときも、1コイン=1円で取引されることを目指すものだ。「法定通貨担保型」とも呼ばれている。
米ドルを担保とするステーブルコインが主流で、テザー、USDコインなどがある。
JPYC(JPY Coin)など、日本円を担保とするステーブルコインもすでに存在する。
報告書は、法定通貨担保型のステーブルコインについて、次のように述べている。
「既存のデジタルマネーと同様に社会で幅広く使用される送金・決済手段となるものが出現する可能性がある」
研究会が、ステーブルコインについて幅広く使用されるようになる可能性があると述べている点については、注目する必要がある。
将来的に幅広く使われる可能性があるからこそ、研究会は利用者保護を含め、早期の規制強化が必要だと考えているようだ。
ステーブルコインの発行者は「銀行業」
ステーブルコインをめぐるニュースは、いつも難解だが、ここから先はさらに難しい。
報告書は、ステーブルコインについて、「発行者」と「仲介者」が別になる可能性を指摘している。
SuicaやICOCAといった交通系の電子マネーは、鉄道会社が発行し、それを電車に乗ったり、買い物に使ったりできるサービスも基本的に鉄道会社が提供している。
一方で、ステーブルコインについては、発行者と仲介者が別に存在するモデルが多いと考えられる。
発行者は、ステーブルコインを発行し、ユーザーから資金を受け取ってステーブルコインと交換したり、ユーザーの請求に応じて法定通貨などの資金を返す。
仲介者は、ユーザーが保有するステーブルコインを入れておく「ウォレット」(財布)をアプリとして提供し、買い物で使えるようにするサービスなどを提供する。
報告書は、ステーブルコインの発行者に対しては、事業の内容にもよるが銀行業の免許か、資金移動業の免許が求められると明記している。
さらに、海外で発行されたステーブルコインを日本で流通させる場合についても、銀行業免許か資金移動業の登録を求めている。
資金移動業という言葉は若干耳慣れないが、基本的には日本から海外に日本円を送り、送金先では米ドルで受け取れるといったサービスを提供している事業者を指す。
金融庁に登録されている資金移動業者のリストを見ると、PayPayやLINE Payも含まれる。考えてみると、PayPayやらLINE Payでは、家族や知人に送金が可能だ。こうしたサービスの提供に必要になるのが、資金移動業の登録だと理解できる。
仲介者については、現在の暗号資産交換業者など、提供するサービスの内容によって、複数の免許や登録が求められる可能性がある。
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