ドラッグや武器の密売人、殺し屋など物騒な肩書の容疑者800人が、世界各国の捜査当局に逮捕された。
作戦名は「トロイの盾」(Operation Trojan Shield)。捜査のカギとなったのはメッセージアプリ「ANOM」だった。
暗号化されたメッセージを送受信できて、悪事の相談には欠かせないアプリと思われるが、実はANOMを開発したのは米連邦捜査局(FBI)だった。
暗号化された通信で、安心して悪巧みをしていたと思ったら、その中身は捜査当局に筒抜けだった。
欧州刑事警察機構(Europol)の2021年6月8日付プレスリリースによれば、イタリアの犯罪組織や国際的な密売組織など、世界100ヵ国以上、300以上の犯罪組織がANOMを使用していたという。
「史上最大」の作戦
「史上最大の摘発」とするEuropolのプレスリリースを見ると、トロイの盾作戦の規模はたしかに、桁外れに大きい。逮捕された容疑者や押収品の数量が公表されている。
・逮捕者:800人超
・コカイン:8トン
・アンフェタミンとメタンフェタミン:2トン
・大麻:22トン
・銃器:約250丁
・現金・仮想通貨:4800万ドル(約52億6000万円)以上
・家宅捜索:700ヵ所以上
盾のロゴマークに多数の国旗が並んでいることからわかるように、17ヵ国が国際捜査に参加した。
メッセージを暗号化して送受信するプラットフォームは、登場しては消えていく。
世界各国の情報機関や捜査機関が、ネット上の通信に対する監視を強める一方で、暗号化チャットでプライベートな会話の秘密を守ろうという動きも強まっている。
筆者を含む普通の人たちにも使えるものとしては、テレグラムやSignal(シグナル)という暗号化チャットのアプリが知られている。
手元のiPhoneで確認したが、日本のAppStoreでも現在も、これらのアプリはダウンロードできるようだ。
こうした秘匿性の高いチャットアプリの存在は、プライバシー保護の観点で意味があるが、犯罪に使われやすいとして政府が規制する動きもある。
実際に2021年3月には、中国やイランの政府がSignalの利用を停止したとの報道もあった。
Europolのプレスリリースは「犯罪ネットワークには、暗号化通信プラットフォームの強い需要がある」と指摘している。
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