政府が、マイナンバーを本格活用する動きを加速させている。
2020年6月11日付のNHKの報道によれば、高市早苗総務相が9日、政府から給付金などを受け取る口座をマイナンバーとセットで登録することを義務付ける考えを示した。高市氏は、来年の通常国会に関連する法案の提出を目指すという。
1人あたり10万円を配る特別定額給付金は12日現在、東京都内に住む筆者の口座には届いておらず、事務を担う区市町村の現場では大変な作業が続いている。
行政の負担を軽減し、必要な給付を速やかに届けるには何らかの対策を講じる必要がある。
しかし、ここは少し立ち止まって考えたい。税金などを支払う機会は多いが、政府からお金を受ける機会はそんなに多いのか。
●いまのところマイナンバー制度の評価はさんざん
政府は、マイナンバー制度を活用して、国民に速やかに給付金を届けようと考えた。
特別定額給付金のオンライン申請システムでは、マイナンバーや銀行口座などの情報を入力すれば、簡単に手続きが完了するはずだった。
しかしマイナンバーカードの暗証番号がわからない人が続出し、役所の窓口に長い列ができた。
4日付の朝日新聞の地方版に掲載された記事によると、岡山県総社市の片岡聡一市長は、オンライン申請のシステムを「使い物にならない」と切り捨て、市民に対して郵送で申請するよう呼びかけたという。
国から大量の事務作業が降ってきたうえ、窓口に長蛇の列ができたら、現場を率いる市長が怒るのも理解できる。
日テレNEWS24によれば、給付金のコールセンターに電話がつながらないと福岡市西区役所の窓口で暴れた男が10日、公務執行妨害の疑いで福岡県警に逮捕された。
●任意の口座ひも付け法案はすでに提出された
6月第2週に入って、マイナンバーをめぐる政府・与党の動きが一気に加速した。
8日には、自民、公明両党と日本維新の会が、預貯金口座の情報とマイナンバーをセットで管理する法案を国会に提出している。
衆議院が公開している法案の中身をみると、本人が希望すれば、預貯金口座など、次のような個人情報を登録しておくことができる。
● 氏名
● 生年月日
● 住所
● マイナンバー
● 電話番号
● メールアドレス
● 預貯金口座
情報の登録には、10万円の給付のオンライン申請の窓口にもなっているマイナポータルが想定されているようだ。
この法案のポイントはやはり、任意の登録である点だろう。
ただ、東京都知事選の告示を18日に控え、通常国会は17日に閉会とされる見通しだ。このため、この法案の成立は先送りされる可能性が高い。
●マイナンバーと口座のひも付け義務化検討
高市総務相が、マイナンバーといっしょに口座を登録する制度を義務化する考えを表明したのは、自公両党などが任意のひも付け法案を提出した翌日のことだ。
与党側は「任意」だが、政府は「義務化」とハードルを上げた。これらの動きは、つながっていると考えていいだろう。
複数の報道を総合すると、現時点で検討されている制度は、1人につき1口座をマイナンバーといっしょに登録することを義務づける内容だ。
この制度は、当然ながら利点も不安な点もある。
●政府が個人を管理しやすくなる
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