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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第70回

日本の「ハンコレス化」緊急事態宣言きっかけに進むか

2020年04月13日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、ハンコをめぐる議論が再燃している。

 緊急事態宣言下で政府は、企業に対して在宅勤務を促しているが、多くの企業で役職者は、さまざまな書類にハンコをつくため出社を続けているという。

 日経新聞は4月2日付で『ハンコ押すため出社…契約書類、在宅勤務の壁』と報じている。さらに、4月9日付の朝日新聞も『テレワークなのに…「命のリスク冒してハンコもらいに」』との記事を掲載した。

 日本の企業文化では、いまもハンコが重要な役割を担っている。とくに契約書や見積書など、企業の支出や収入に関わる文書は、決定権を持つ役職者がハンコをつく。

 テレワークだからといってハンコを自宅に持ち帰るわけにもいかず、上司の印鑑が必要な人や、印鑑をつく立場にある人は、出社せざるを得ない実情があるようだ。

 そんな中で政府が4月6日、「新型コロナウイルス感染症対策テックチーム」を立ち上げた。

 感染症対策で人のスマートフォンの位置情報などを活用することが、テックチーム設置のおもな目的だが、「官庁のIT対応能力の強化」も含まれる。

 中央省庁の職員の感染も相次いで報告されているが、ハンコ文化が根強い役所の文化も変化するのだろうか。

●リモートはつらい

 リモート勤務している人たちが、出勤を迫られる事情はハンコ以外もあるようだ。

 東京都内の団体に勤務する30代の女性は、緊急事態宣言後に職場に出勤した。

 組織としてはリモートワークを勧めているが、日々の活動で生じた支払いを整理するため、職場に保管されている領収書を確認する必要がある。多くの職場で、こうした書類は持ち出しが禁じられているようだ。

 領収書をスキャンして、パソコンにデータとして保存をする。結局、その作業に数日を費やした。

 この事例からわかるように、一連の作業の流れが普段からデジタル化されていなければ、急に在宅勤務を始めようにも、その準備にはけっこうな労力がかかる。

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