仮想通貨で資金を集めるICO(Initial Coin Offering)の規制のあり方を巡る議論が進んでいる。
会社を立ち上げたばかりのスタートアップ企業に対しても資金調達の道を開いたとして注目を集めるが、資金を集めたものの一向にプロジェクトが進まない「詐欺的」なICOも報告されている。
金融庁の研究会のメンバーとなっている有識者の間でも、新しい資金調達手段として評価する声がある一方で、リスクの高さに対する懸念の声も強い。
いずれにしても早ければ年内、遅くとも年度内には金融庁から一定の方向が示される見通しだ。
●ICOってなんだっけ
そもそもICOとはなにか。次々に新しい手法のICOが登場しているため、なかなか理解が追いつかないのが正直なところだ。
2018年11月1日に開かれた金融庁の研究会では、複数の有識者が「クラウドファンディングに似ている点が多い」と指摘した。たしかにクラウドファンディングと比較しながら考えると理解が早そうだ。クラウドファンディングやICOの種類をざっくり分類すると、以下の3種類になる。
寄付型:見返りはない
購入型:物品やサービスが提供される
投資型:事業の収益などを分配する
寄付型のクラウドファンディングは公益性のある活動をしているNGOなどが実施することが多い。たとえばシリアからの難民を支援するプロジェクトのため寄付を集めるといった形だ。寄付者に対する見返りは、あったとしても報告会への招待状が届いたり、報告書が郵送されてきたりするぐらいだ。
購入型は、新しい製品を開発するので開発費用を募集するといった形のクラウドファンディングだ。資金を提供した人にはいち早く完成した製品が届いたりする。投資型は、プロジェクトを実施した結果、収益が出たら、投資した人に分配されるといった仕組みだ。
●「8割が詐欺」とする調査も
ICOの特徴は、資金を提供した人にトークンが付与され、トークンが譲渡でき、トークンそのものの価値が変動する点だ。この点が、クラウドファンディングと大きく異なる。
たとえばプロジェクトの進ちょく状況で、期待が高まればトークンの価値は上がり、期待が下がれば価値は下落する。
ICOの実施主体はプロジェクトの構想、メンバー、技術力などを説明するホワイトペーパーを公表し、投資をする人はホワイトペーパーでプロジェクトの将来性などを判断する。
これまでに実施されたICOで最高額を集めたのは、分散型アプリケーションを構築するためのプラットフォームを開発するプロジェクト「EOS」で、約42億ドル(約4750億円、11月1日午後時点、1ドル=113.10円で計算)を集めている。
ICOでトークンを購入する人のほとんどはトークンの値上がりを期待しているとされる。取引所での取引が開始されたトークンは売却できるため、購入者は値上がりを待って売却する。ICOプロジェクトが多額の資金調達に成功している要因も、購入者の値上がりに対する期待にある。
一方、アメリカを拠点にICOに関するアドバイザリー業務を行なっているサティス・グループ(Satis Group)は、2017年に実施されたICOの81%が「はじめから約束を実現するつもりがない」詐欺(Scam)だったとする調査結果を発表している。取引所での取引に至ったICOは8%にとどまっていると指摘している。
この連載の記事
- 第25回 仮想通貨ブロックチェーン10大ニュース2018
- 第24回 日本の仮想通貨取引所 規制強化で淘汰進む
- 第23回 ビットコイン急落 本当の理由は
- 第22回 仮想通貨「通貨」と呼ぶのやめる? 世界で議論に
- 第21回 もし出会い系にブロックチェーンが使われたら
- 第19回 仮想通貨の自主規制 多難な船出
- 第18回 ブロックチェーン貿易業界で注目のワケ
- 第17回 仮想通貨盗難急増 日本が6割超 対策追いつかず
- 第16回 ビットフライヤー社長辞任で変わること 変わらないこと
- この連載の一覧へ