NANDメモリーメーカー各社の3D NANDメモリーの生産が安定期に入り供給量が増加し、NANDメモリーの価格が下がってきている。これによって、SSDの価格は、昨年末の緩やかな上昇傾向から一転、値下がり傾向となり全体的に低価格化が進んでいる。さらに、格安SSDと呼ばれる安価なSSDも急増中だ。
格安SSDは、今となっては枯れた技術ともいえる「Serial ATA」のSSDばかりだが、最安クラスの製品は250GBクラスのモデルが6000円前後、500GBクラスのモデルが1万円前後、1TBクラスのモデルが2万2000円前後で購入できる。
この価格なら、OS起動のシステム用としてだけでなく、データ保存用として活用するという方法もアリだろう。そこで、240~256GB、480~512GB、960GB~1TBの3ジャンルから、1GB単価の安い格安SSD、計8製品を集めその性能をチェックした。また、合わせて最新の人気M.2 NVMe SSD、2製品の性能もチェックしたので購入時の参考にしてほしい。
格安SSDと普通のSSD、なにが違う?
急増している格安SSDだが、そもそも“普通”のSSDと大きな違いはない。格安SSDだからといって特別な構造をしているわけではないし、性能も“普通”のSSDと比較しても大きな違いはない。ではなにが違うのかというと、一番大きいのは価格に関連する部分につきる。格安SSDは、さまざまな工夫を凝らしてコストダウンを図り、低価格を実現しているのだ。
例えば、格安SSDでは、大手メーカーが用意しているような自社SSD専用のツールやデータ移行ツールなどの類いは、基本的に用意されていない。これらのツールを用意するには当然コストがかかるが、これを省くだけでもコストダウンを図れる。
製造コストを削減する方法もいくつかある。その代表的な方法が、部品コストの引き下げだ。特にSSDの中核部品であるNANDメモリー、コントローラー、DRAM(外部メモリー)のコストを下げることによる効果は大きい。
SSDで利用されるコントローラーは、通常、ハイエンド向けとエントリー向けの2種類がある。ハイエンド向けコントローラーはDRAM搭載を前提としており、4チャンネルまたは8チャンネルのNANDメモリーの接続用インターフェースを搭載していることが多く、2TBや4TBなどの大容量モデルを設計できる。
一方で、エントリー向けのコントローラーは、ハイエンド向けでは必須だったDRAMを不要としたり、NANDメモリーの接続用インターフェースの数を削減したりすることでコストダウンが図られている。
このような廉価版のコントローラーは、設計可能なSSDの最大記録容量がハイエンド向けコントローラーよりも少なくなるなどの違いはあるが、コントローラーのコストとDRAMのコストの両方を削減でき、より安価なSSDを製造できる。実際に格安SSDと呼ばれるSSDの多くは、DRAMレス設計のコントローラーを採用している。
コストダウンの方法はまだある。それは、コントローラーメーカーの用意している「リファレンス・デザイン」の活用だ。リファレンス・デザインとは、製品の設計図のことで、リファレンスのファームウェアも提供されている。
リファレンス・デザインのメリットは、ストレージの設計をしたことがないメーカーでも短期間でSSDを開発できるだけでなく、開発コストも削減できることにある。
特にSerial ATA SSDのように登場からすでに10年が経過し、技術的にもこなれている製品の場合、長年の開発によってファームウェアの完成度も高くなっている。
ファームウェア開発には、本来、人手がかかるだけでなく、技術力も必要になるが、リファレンス・デザインを活用すれば、それもコストダウンできる。
近年、Serial ATAの格安SSDが急増している背景には、リファレンス・デザインの質の向上によって、SSD事業への参入障壁が下がっているという側面は否定できない。そして、格安SSDを製造しているメーカーが、リファレンス・デザインを積極的に活用していることは間違いない。
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