FPSで物陰に隠れた敵の位置を正確に認識したり
自動で敵を射撃する「DMAチート」が中国では広がっている
「FPSで、壁の向こうにいる見えないはずの敵が見え、照準まで自動的に合う」。PCゲームを台無しにする「DMAハードウェアチート(DMAチート)」が中国で問題視されている。
動画共有サイトのビリビリを見ると、VALORANTやカウンターストライクにおいて、物陰に隠れているプレイヤーを出てきた瞬間に、ゴルゴ13ばりに的確にショットする動画が複数確認できる。確かにこんなイカサマをされてはゲームバランスが崩れてしまう。テンセント(騰訊遊戯安全ACE)などによる「2025ゲーム安全白書」の関連報道でも、DMAチートを主要な脅威として取り上げている。
そして、このDMAチートを実現するための機器は淘宝(タオバオ)などのECサイトで普通に売られている。そんな中国での現状を見ていこう。
「DMAカード」を使ってメモリー内のデータを2台目のPCに転送
そこでゲームの内容を解析する
DMAチートは1台のハードウェアだけではなく、PCのメモリー情報を読む「DMAカード」、キーボードとマウスの入力をエミュレートするデバイス「KMBOX」、情報を表示する「Fuser」の3点セットに加え、2台目のPCと解析ソフトを要する。
DMAは「Direct Memory Access」の略で、LANカードやGPUなどの周辺機器が、CPUを介さずにメモリーにデータを転送するための仕組みで、DMA自体がチートを意味するわけではない。PCに詳しい人ならよくご存じのとおりに、メモリーはPCの作業エリアであり、ゲームの進行に必要なデータもメモリー上に置かれる。
DMAチートでは、外部機器からメモリーにアクセスして、そのデータを読み出し、2台目のPCに転送する。その2台目のPCではチートソフトで内容を解析。敵の位置などから照準の移動を計算し、KMBOXを通じて、キーボードやマウス操作をゲームPCに入力する。
また、2台目のPCが作った情報をゲーム映像に重ねてモニターに表示する役割を持つ装置がFuserだ。本来は見えない敵プレイヤーの位置を映像として示すことで、壁や建物といった遮蔽物の後ろに隠れる相手の動きが筒抜けとなる。つまり、FPSで敵の位置を分析するのも、照準の動かし方を計算するのも、2台目のPC上で動作するチートソフトだ。
ゲームのプログラムが動作するPCとは別のPCで解析するため
従来型の監視ではDMAチートによる不正を見つけにくい
多くのオンラインゲームは、ゲームが動作するPC内の不審なプログラムの存在やゲームの操作への介入を監視対象とし、対策を進めているのだが、DMAチートでは情報の取得や解析を、外部機器と別PCで実行していることから、ゲームが動作するPCの動きを監視する従来型のプログラムだけでは検知しにくく、不正が成立してしまっている。
DMAチートが発生しているのはFPSだけではない。探索やサバイバルを中心とするゲームでは、プレイヤーやアイテム、資源の位置を知ることが優位につながる。チート機器の販売側で対応をうたっているタイトルとしては、「Rust」「DayZ」「Dark and Darker」などがある。また、チート関連フォーラムでは「Age of Empires IV」で視界外の情報を隠す「戦場の霧」を、DMAチートで解除すると称する投稿があった。
一方で、カードゲームでは取得できないようだ。というのもDMAチートでアクセスできるのはあくまで自分のPCのメモリーだけであり、当然ながらオンラインのサーバーに対しては無理。相手の手札や山札をサーバーだけで管理し、そのデータをユーザーのPCへ送らない設計であれば問題は発生しにくい。
中国におけるゲームの不正なビジネスの規模は2000億円超
ビリビリを見ると、DMA3点セットの実機レビューや、周辺機器の選定や設定方法を解説する動画が存在する。また、DMAチートはネットカフェやeスポーツホテルにも問題をもたらしているという。
中国のゲームメディアのBB姫は昨年3月、客の不正使用による機器の利用禁止が店舗の営業に影響すると説明する一方、DMAチート専用VIPルームを設け、抖音(TikTok)で利用プランを販売するネットカフェがあるとする投稿を紹介した。個人で導入するのもどうかと思うが、ネットカフェの端末に入っているのはさらに驚きだ。一方で、検知不能というDMAチート関連機器の宣伝に疑問を投げかける「BANされないチート? DMAはあとどれくらい生き残れるのか」といった動画もある。
「2025ゲーム安全白書」の関連報道は、そうしたDMAチート機器の販売に加え、不正アカウント、代行サービスなど諸々含めて、ゲームの裏ビジネスの市場規模を、100億元超(2300億円超)と推定している。
DMAカード、KMBOX、Fuserはそれぞれ単体では違法性はない。たとえば、DMAカードの代表的な製品として、LambdaConcept「Screamer」シリーズがある。同社の公式資料では、PCI Express経由のDMA攻撃を検証するための機器と説明。セキュリティー研究向けに開発したとしている。
とは言え、PCのメモリーの内容を別のPCで簡単にのぞき見できる機器が普通に流通しているなら、セキュリティーが心配になる。実際にDMA機器による不正なメモリーアクセスが可能なことは、研究により実証されている。
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