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Dolby Cinemaをはじめとした5形態で本日公開!

『ガルパン』最終章 第5話は、Dolby Cinemaで何を目指したのか――岩浪美和×庄司光裕が語る映像と音の進化

2026年10月09日 19時00分更新

文● ASCII

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引き算で音は絞り、聞かせる音を明確に

 最終章第4話に続いて、Dolby Atmosの音響を手がけることになった岩浪氏は、『ガールズ&パンツァー 最終章』第5話の音響について以下のように語った。

岩浪 「音響面では今回、大変金属音が多い作品なのですが、音のインフレを起こさないように『どの音を聞かせるのか、どの音を入れるのか』という引き算の作業が必要でした。効果の小山さんが頑張ってくれました。そのカットで見せるものは何なのかという狙いを定めて、いらないものは捨て、必要なものを際立たせる」

 このカットの狙いは何か、どこを観て欲しいかという情報を音で補完していく作業となる。

岩浪 「これがDolby Atmosの環境ではより明確に出るし、音自体の分離もいいので。演出の狙いがより明確に出て、物語に入って行きやすく、イマーシブな体験につながる。そんな音作りができていると思います」

 最終章の第4話では、音が空間を自由自在に動き回るような「疾走感」が一つの方向性で、複雑な戦車の位置関係の動きが音によって明確になり、映像の把握を助けるという役割も担っていた。第5話では、(その詳細は書けないものの)限られた空間の中で戦車同士の複雑な動きが交錯するバトルが展開される。この「狭い空間」を音でどう表現するかが重要になった。

 それには細かな調整がもちろん必要になる。それでも「大変だけど、これは僕がやりたかったことなので」と岩浪氏は話す。

 岩浪氏は2012年(国内では2013年)の映画『ゼロ・グラビティ』を観てDolby Atmosの音響に衝撃を受け、日本がハリウッドに10年遅れていると実感。「自分もこのフォーマットで作りたい」という意欲を燃やした。これは「レーシングドライバーならF1に乗りたいと思うのと同じで、エンジニアであれば、当然最高のフォーマットで音響を作りたいと思う」からだという。

 しかし、その夢はすぐには叶わなかった。

 その後、『ガールズ&パンツァー 劇場版』は、立川シネマシティの「極上爆音上映」などが大きな話題になり、映画館に「音を聞きに行く」という動きも生まれた。岩浪氏は日本各地の映画館に音響調整のため足を運び、Atmosの呼び水ともなるイオンシネマ幕張でのリアルタイムアップミックスの9.1ch上映なども実現した。

 ガルパン最終章は封切り時に5.1ch、数週間遅れて7.1chの上映を実施。その後、岩浪氏は日本初のDolby Atmos制作の作品となった『BLAME!』と並行して、Dolby Atmos版のガルパンの制作に携わった。

 こういった活動の積み重ねが実を結ぶ形で、13年の悲願が叶った。『ガールズ&パンツァー 最終章』第5話は封切り時から多様なラージフォーマットでの上映ができるようになった。これには「万感の思い」があるとする。

 ちなみに、ガルパンではDolby Cinema用のDolby Atmos音源は劇場のためだけに制作されたもので、配信などで使用する音源は別に制作しているという。つまり、この音を楽しめるのは劇場上映時のみということだ。

 劇場で流すことを前提に考えたダイナミックレンジの広い音響は、映像やアクションとともにこの作品の大きな魅力となっている。

 最近ではハリウッド映画でも、一部作家性の強い監督の作品を除いては、ダイナミックレンジを広く取りすぎない音響になっているものが増えている。これは映画の重心が配信に移ってきているからだ。

 ガルパンの場合は、劇場用とは別に配信対応のフォーマットを作っているが、これは逆に言えば、映画館でなければ体験できない音があるということでもある。

 ただし、Dolby Cinemaのスクリーンは数が限られており、Dolby Cinemaで制作される作品も増加傾向にある。Dolby Cinema作品の再上映はほぼ行われず、それどころか、早い段階で上映枠自体が絞り込まれるという現状もある。つまり、Dolby Cinemaらしいプレミアムな体験を得る機会は限られているということになる。それはガルパンでも例外ではない。公開したらすぐ劇場に足を運んで、なるべく多くの体験をするのが重要だろう。

絶対に劇場で観たい作品

 ガルパンは2015年11月公開の劇場版以降、映像やストーリーの楽しさだけでなく、「映画館ならではの音を聞く楽しみ」を作品の魅力として前面に押し出してきたシリーズでもある。劇場が持つ可能性を感じさせ、異なる形態で何度も作品を観る楽しみや、劇場の違いによって変化する「音の体験」を知る機会を提供してきた。

 今では、立川シネマシティの爆音上映、極音上映のような、特別な音響システムを導入した劇場の存在が広く認知されているが、「映画館で作品を楽しみ、音の違いも楽しむ魅力」を世に広める原動力となったのはこのシリーズだ。音を聞くために劇場に足を運び、特色ある劇場の違いを楽しむためにリピートするという新しい文化を育んできた。

 こうした経緯があるからこそ、最終章の第5話がDolby Cinemaを含む様々なラージフォーマットで最初から展開されることには特別な意味を感じている。

 ティーチインの中では庄司氏から、Dolby Visionによって使える色が圧倒的に増えることは、カラリストの立場から見て非常に魅力的であるというコメントも出た。演出としての色をよりクリエイティブに使っていける可能性があるという。

 また、岩浪氏は2001年宇宙の旅が70mmのフィルムとデジタル音響で作られ、いまだに最新のフォーマットに対応している例を挙げながら、その時代その時代のハイスペックなフォーマットで作ることによるアーカイブとしての価値についても言及した。ガルパンは音の三次元情報を持っているため、例えばVRのようなものをやろうとした場合でも、姿勢に合わせて音が付いてくる。

 最高の技術的なフォーマットで作っていくことは将来を見据える上でも大切であると話していた。

 このようにマニア心をくすぐる要素が満載の『ガールズ&パンツァー 最終章』第5話。とはいえ、そんなことを知らなくても、エンターテインメント作品としてのクオリティは本当に素晴らしいと思えるものだ。ガルパンをよく知っている人はもちろんだが、誰が見ても、初めて見る人にとっても素晴らしい体験が約束されているのは確実だろう。

 その魅力は、Dolby Cinemaをはじめとした高水準な劇場で絶対に味わうべきだ。Dolby Cinema版と通常版の違いなども含めて、何度も劇場に脚を運んで作品を噛み締めたい。

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