業務を変えるkintoneユーザー事例 第326回
「あの人しか分からない」を終わらせたあるシステム開発会社の試行錯誤
属人化の解消は多忙な“Aさん”を救うことから 切り札は「kintone×AI」を自然に使わせる仕組み
2026年08月21日 10時00分更新
入力粒度を均すための“自然にAIを使わせる”仕組み
この日報で過程が残されない問題に、栢野さんは、システム屋らしく3つのAI実装で解決を図った。
1つ目は、対話式の日報入力のサポート機能だ。ボタンひとつで起動し、質問に答えていくだけでAIが日報の草案を生成してくれる。2つ目は、保存された日報の内容からAIが検索ワードを生成し、連動する案件アプリに自動蓄積する機能だ。これは、そのままナレッジベースとして運用する狙いがあった。
3つ目は、案件完了時の報告書の草案を、日報から自動生成する機能だ。この3つの機能は、すべてkintoneとOpenAIのAPIで開発されている。
しかし、これらのAI機能はまったく使われなかった。例えば、入力サポート機能の使い方を上司に説明しても「そんなん使わなくても日報ぐらい書ける」と一蹴され、その後の上司の日報はいつもの結果だけのものだったという。
AIが使われない理由を見つけるために、栢野さんは、すべての日報データを見直した。その際、kintone標準のレコード一覧分析AIが役立ったという。
すると「人によって入力の粒度が異なる」ことが明確になった。状況が再現できるレベルで詳細に書く人がいる一方で、どうしても結果だけを記す人がいる。この粒度の差を均すために行き着いたのは、“サポート機能を使わせる”のではなく、“自然に使っている状況をつくる”ことだった。
具体的には、入力サポート機能を改良した。日報を保存しようとすると、いったん「止まる」。そのタイミングでAIが内容を判定し、状況が再現できる入力量であればそのまま保存。不足している場合はポップアップされる質問に答えることで保存できる。この仕組みで、組織全体で日報入力の粒度を均一化することに成功した。
“大きな改善”ではなく“手元の小さな改善”から
こうして、kintoneによる情報基盤が整備されたことで、どのような変化が起こったのか。栢野さんは、「“kintoneを中心”とした会話が増えました」と語る。
定例ミーティングではkintoneを参照しながら情報共有をするスタイルが定着した。そして、kintoneの案件やタスクの進捗を基に、共有や相談もしやすくなった。ナレッジベースとしても機能し始め、kintoneで過去事例を検索して、担当者に聞かなくても解決できるようになっている。
最後に栢野さんは、「属人化は構造的な問題でした。 創意工夫で手元のツールを駆使し、小さな改善を止めなかったことが成果につながりました。何も大きく改善を始める必要はありません。意外と最初の改善というのは、あなたのすぐそばにあるかもしれないです」と締めくくった。
セッション終了後には、サイボウズ松山オフィスの村上優さんとのアフタートークが繰り広げられた。
村上さん:壁にぶつかった中で、追加質問の判定AIを組み込んだところがすごいと思いましたが、開発のきっかけを教えてください。
栢野さん:基本的に社内がすごく静かなので、普段からよくAIと話しており、その流れでkintoneのAIに相談する中から生まれました。
村上さん:普段の業務からAIを活用されていると思いますが、実際にコードを書いてもらったりしているのですか。
栢野さん:書いてもらっていますが、もちろん上手く動かないこともあるので、プログラマーの視点でチェックする必要がありますね。
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事
-
第325回
デジタル
平均年齢60歳の現場を変えたZ世代女子 kintoneで電話・紙・入力をなくしたら、仕事が楽しくなった -
第324回
デジタル
暗黒の在庫管理を救ったチームの力は、専門システムとkintoneの共存で顧客向けサービスという新たな一歩を踏み出した -
第323回
デジタル
経営判断にAIの活用はもはや必須 日々の蓄積データから的確なデータを迅速に引き出すMCPの活用法 -
第322回
デジタル
東京タワー相当の紙を“完全撤廃” 点検業務をkintone化した“現場ファースト”な改善術 -
第321回
デジタル
街の制服屋さんだってまだまだ戦える kintone×ECで「地獄の繁忙期」の残業ゼロ、売上も倍に -
第320回
デジタル
「なんだ、できるじゃん」 1日でアプリを作るワークショップが変えた現場 -
第319回
デジタル
成功したはずのkintone運用が崩壊 みんなで育てるkintoneという答えを導き出した2日間 -
第318回
デジタル
紙の手続きが奪った「命の時間」 訪問看護ステーションがkintoneで実現した最短0日契約 -
第317回
デジタル
「新しいことは面倒だ」という保守的な社員の心をほぐし、社内DXを推進させたヒントはYouTubeにあった -
第316回
デジタル
「これもできないか」を聞き続けて膨らんだ450フィールド 迷宮化したkintoneを再設計した方法 - この連載の一覧へ








