人手不足や技術継承はさまざまな現場で共通する課題となっており、防災や消防設備点検をはじめ、設備管理など、人命に関わる分野にも大きな影を落としている。そうした課題に対し、利用者の声を出発点にIoTソリューションを開発してきたのがBit peepsだ。
「困りごとがあるから製品を作る」。今回は代表の如南友博氏に、人手不足や技術継承といった現場の課題に対し、現場で役立つソリューションをどう育ててきたのか、また、同社が見据える今後の展望などについてお話を伺った。
現場の課題に向き合い、人手不足という社会課題の解決に挑むBit peeps
「人が少なくなると、助けを得られなくなったり、技術を教えてもらえなくなったりして、そこで遅延が発生します。それを今のシステムを使って、人助けできればと考えています」と語る如南氏が代表を務めるBit peepsは、防災分野を起点としたIoTソリューションを手掛ける企業だ。災害対策を支援するシステムをはじめ、設備監視や消防設備点検支援など、現場業務を支えるさまざまなソリューションを展開している。
現在は防災という一つの分野にとどまらず、さまざまな現場で共通する「人手不足」や「技術継承」といった社会課題を、IoTやクラウドの力で解決することを目指している。現場では、熟練者の退職によるノウハウの喪失や、慢性的な人手不足によって設備管理や点検業務の負担が年々大きくなっている。こうした課題は防災だけに限らず、多くの業界に共通する。
そこでBit peepsは、防災分野で培ったIoTやクラウドの技術を基盤に、それぞれの現場が抱える課題を解決するソリューションを生み出してきた。そして、その開発の出発点となるのは、最新技術ではなく、現場で働く人たちの声だ。利用者が何に困り、どこに手間を感じ、何を改善したいのか。その声を丁寧に拾い上げながら製品へ反映していくことが、Bit peepsのものづくりの原点となっている。如南氏は「ユーザーの声から作るという感じですね?」という問いに対し「もちろん、もちろん」と即答する。
「困りごとがあるから製品を作る」Bit peepsでは、まず現場の課題を理解し、その解決策として製品を設計する。その姿勢は、創業以来変わっていないという。だからこそ同社の製品は、機能を並べることを目的とせず、現場で実際に使われることを前提に進化を続けてきた。
例えば、消防設備点検の現場では、火災報知器を動かす人と、受信機の前で確認する人が必要で、トランシーバーでやり取りしながら紙の点検票を持って設備を確認する。そして、事務所へ戻ってから報告書を作成するという運用が続いてきた。点検品質もベテランの経験や勘に依存する部分が少なくなく、人手不足が深刻化する中で点検報告率が上がることなく、技術継承も大きな課題になっている。
こうした課題は、机上で仕様書を書いているだけでは見えてこない。実際の現場で利用者と向き合うことで初めて、「本当に困っていること」が見えてくる。同社がこうした現場の声を反映し、顧客の要望に応え続けられる背景にあるのは、自社で一貫開発を行う体制だと如南氏は語る。
現場の声をすばやく形にする、一貫開発という強み
Bit peepsでは、開発者自身が現場へ足を運び、利用者の話を聞くことを重視している。そこで見えてきた課題を一つずつ解決していくことが、新たな製品や機能の開発につながってきた。しかし、現場の課題を見つけても、それを迅速に製品へ反映できなければ意味がない。同社が強みとするのは、そうした要望をスピーディーに形にできる開発体制だ。
一部だけを開発するのではなく、システム全体を自社で設計できるため、利用者から寄せられる細かな要望にも柔軟に対応できる。施設ごとに異なる運用方法や管理体制に合わせたカスタマイズも行いやすく、それがBit peepsの製品づくりの大きな強みとなっている。
また、製品ごとに独立して開発するのではなく、一人のプロダクトマネージャーが複数製品を横断して担当する体制も特徴だ。防災、設備管理、消防設備点検など異なる分野で培ったノウハウを製品間で共有できるため、新しいアイデアや改善点を横展開しやすいと如南氏は語る。現場の課題を理解する力と、それをすぐに形にできる開発力。その両方を兼ね備えていることが、Bit peepsの製品が幅広い現場で活用されている理由の一つだ。
現場の課題から生まれたBit peepsのソリューション
現場の課題を出発点に開発してきた成果は、Bit peepsのソリューションである「ボウサイコンパス」や「fdi(ファディー)」、「テンケンウォッチャ」、「防災訓練支援システム」などで取得している特許にも表れている。現場から生まれたアイデアを独自技術として磨き上げ、競争力のある製品へと育て、防災や設備管理、消防設備点検など幅広い分野で活用されている。
●災害対策支援システム「ボウサイコンパス」
防災分野で展開している「ボウサイコンパス」は、気象情報や火災情報の配信、複数拠点の監視、防災訓練支援などを備えた災害対策支援システムだ。火災発生場所をスマートフォンへ通知することで、担当者の迅速な初動対応を支援するほか、複数拠点を一元的に監視できるため、企業や施設の防災業務の効率化にも貢献している。
このシステムは当初、顧客ごとのスクラッチ開発としてスタートしたが、多くの現場の要望を取り込みながら進化を重ね、現在はブラウザ上から各種設定を行えるパッケージ型へ発展した。実際に大手物流企業でも導入されており、企業の災害対策を支える基盤として利用されている。
●IoT設備監視システム「fdi」
設備管理向けに提供しているIoT設備監視システム「fdi」は、設備や各種センサーの異常を検知し、スマートフォンへリアルタイムで通知する設備監視システム。現場の運用に合わせて通知先や通知条件を柔軟に設定できるため、担当者の負担を抑えながら設備異常を見逃さない監視体制を実現し、防犯や設備監視など幅広い用途に対応する。
fdiでは漏水や設備異常を検知して通知するだけでなく、現場から寄せられた「設備の異常をすぐに知りたい」「既存設備をそのまま活用したい」「時間帯や曜日、担当者ごとに通知先を切り替えたい」といった要望を取り入れながら機能を拡張してきた。建設現場の防犯や設備監視、大阪・関西万博の仮設設備監視など、多様な現場の課題に対応する中で、柔軟なセンサー連携や通知設定を実現している。
●消防設備点検支援システム「テンケンウォッチャ」
消防設備点検業務を支援する「テンケンウォッチャ」は、火災受信機の情報をスマートフォンへ通知し、点検作業の省人化とDXを実現するシステムだ。点検結果や写真はその場でスマートフォンやタブレットに記録でき、そのまま消防庁提出用の点検票や報告書を作成できるため、現場作業と事務作業を効率化し、少人数でもスムーズな点検業務を支援する。図面への書き込みや写真管理、複数人での情報共有にも対応している。
消防設備点検の現場では、人手不足や作業員の高齢化が大きな課題となっている。テンケンウォッチャは、現場から寄せられた「少人数で点検したい」「トランシーバーでのやり取りをなくしたい」「機械が苦手でも使えるようにしてほしい」といった要望を取り入れ、1人での点検を支援するシステムとして開発されている。
Bit peepsではこの他に、防災訓練支援システムを提供している。このシステムは、災害時を想定したインシデントを時間経過に合わせてリアルタイムで参加者へ配信し、災害対策本部や避難所での判断や意思決定を支援する。大学の災害トレーニングセンターでの訓練にも採用されており、自治体などへの展開も進められている。
これらのソリューションは対象とする分野は異なるものの、「現場の負担を減らし、人手不足や技術継承といった課題を解決する」という考え方が共通しており、同社では利用者の声を積み重ねながら、現場とともに進化を続けている。
現場を支えるIoTをともに育てる、SORACOMとのパートナーシップ
Bit peepsでは、IoTソリューションの通信基盤としてSORACOMのサービスを活用している。ボウサイコンパスやfdiをはじめとするIoTシステムでは、SORACOMのSIMを採用し、AWSと組み合わせたクラウド環境の構築も行っている。
如南氏とSORACOMとの付き合いは、Bit peepsの設立以前までさかのぼる。前職時代から交流があり、会社設立後もイベントなどを通じて関係を築いてきたという。SORACOMを利用し続ける理由について、如南氏はコスト面のメリットを挙げる一方、それ以上に「相談しやすさ」が大きいと語る。
IoTシステムでは、通信だけでなくクラウドやアプリケーションまで含めた設計が求められる。実際の開発では、技術的な相談や運用面での確認が必要になる場面も少なくない。その際、気軽に相談でき、必要な情報を得られる環境があることは、開発を進める上で大きな安心感につながっているという。「結構柔らかい会社じゃないですか。聞きたいこともすぐ聞ける」(如南氏)
また、Bit peepsはSORACOMパートナースペース(SPS)にも参加している。パートナー企業との情報交換や技術交流を通じて新たな知見を得られるだけでなく、案件によっては他社との連携にも発展するなど、SORACOMを中心としたコミュニティーも同社の開発を支える存在になっている。
「通信サービスを利用して終わりではなく、その先の相談相手がいる」。Bit peepsにとってSORACOMは、IoTシステムを構築するための通信インフラであると同時に、長年にわたって現場の課題解決を支えてきたパートナーでもある。
現場で本当に役立つ仕組みを目指す次なる挑戦
「今の商材を伸ばしていきたい」(如南氏)。Bit peepsが見据えているのは、新しい製品を次々と増やしていくことだけではない。人手不足や技術継承といった社会課題に対し、IoTや生成AIを活用して、現場の負担そのものを減らしていくことだ。同社が取り組む生成AIの活用も、その延長線上にある。
例えば、現在のボウサイコンパスではブラウザから各種設定を行えるが、将来的にはAIとの対話だけで設定が完了するような仕組みを目指している。如南氏は「AIを使うこと」が目的ではないと言い、設定作業そのものを簡単にし、専門知識がなくても現場で使いこなせるシステムにすることが狙いだと語る。
単にAIを取り入れるということではなく、設定画面の操作に慣れていない利用者でも、「こういう訓練をしたい」「この部署へ通知したい」と自然な言葉で伝えるだけでシステムが構築できるようになれば、運用のハードルは大きく下がる。現場では、システムを導入したくても、設定できる担当者が限られているケースは少なくない。だからこそBit peepsは、専門知識がなくても誰もが使える仕組みづくりを目指している。
現場で働く人の困りごとに耳を傾け、その課題を技術で解決するためにIoTや生成AIも活用しながら課題解決を目指していく。Bit peepsはこれからも「現場で本当に役立つ仕組み」を追求していく。
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