第20回 SORACOM対応 特選デバイス&ソリューションカタログ

置くだけでつながるIoTで回線やネットワークに依存しない通信基盤を提供するディジ インターナショナル

インタビュー 大谷イビサ 編集●MOVIEW 清水

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 IoTは単にデバイスをつなぐだけでなく、どこでも使え、長く安定して動くといった実用性が求められるようになっている。通信環境や電源の制約を前提とした現場では、ネットワークとデバイスを一体で設計する発想が必要だ。そうした中で、通信と組み込みの両面からIoTを支えてきたのがディジ インターナショナルだ。

 今回はディジ インターナショナル フィールドアプリケーションエンジニアである湯澤貴哉氏に、同社がどのようにIoT導入のハードルを下げ、現場で使える形に落とし込んできたのか、お話を伺った。

ディジ インターナショナル フィールドアプリケーションエンジニア 湯澤貴哉氏

無線通信×組み込みで40年。IoT以前から続く技術の蓄積

 200社を超えるパートナーと3万5000社以上の顧客を持ち、世界各地に拠点を構えてグローバルに展開するDigi Internationalは、1985年に北米・ミネソタ州で創業し40年の歴史を持つ。ディジ インターナショナルはその日本法人として2001年に設立された企業で、IoTという言葉が登場する以前から、デバイスをネットワークにつなぐことに取り組んできた。

 「無線通信と組み込みに特化して、40年にわたって技術を積み上げてきた」という湯澤氏は、通信プロトコルの進化や新技術の登場に合わせてデータ通信の最適化に取り組んできたと語る。その長年の技術蓄積を軸に、IoTシステムの根幹を支える領域を一貫してカバーしてきた。モジュールからゲートウェイ、ルーターを自社で設計・開発を行うことで、用途に応じた柔軟な構成を実現できる体制を整えている。

 グローバルでの利用を前提とした製品設計も強みの一つで、各国の無線認証取得済み製品を提供することで、購入後すぐに通信が可能で、海外展開を見据える企業に大きなメリットだ。また、自社での製品開発に加え、代理店やサービスパートナーを含めたエコシステムを構築しているのも特徴で、単なるハードウェアメーカーにとどまらない事業モデルとなっている。

 ディジ インターナショナルが提供する製品は、ネットワーク接続や認証、セキュリティといった通信機器本来の機能が作り込まれており、ユーザーはアプリケーション開発に専念する設計となっている。セルラーモジュール単体で通信とデータ処理を完結できる構成や、制御機能を内蔵する仕組みにより、ユーザーは開発工数の削減とシステム全体のシンプル化を実現。IoT導入に伴う複雑さを吸収し、ユーザーは本来注力すべき領域に集中できる。

通信を内包したモジュールからゲートウェイまで、IoT基盤を支える製品群

 IoTが社会インフラとして広がる中で、通信はシステムの根幹を支える存在へと変化している。ディジ インターナショナルの製品群は、IoTシステムにおける通信基盤を構成する要素を広くカバーしている。組み込みモジュールからゲートウェイ、ルーターまでをラインアップし、用途に応じて柔軟に組み合わせられる。「過酷な環境でも安定して稼働するデバイスを提供することが、我々のミッションです」と語る湯澤氏は過酷な環境でも安定して稼働する、信頼性の高いデバイスの継続的な提供を重視していると話す。

 その中心となるのはセルラー通信に対応した組み込みモジュール。SIMソケットを備え、単体で通信機能を持つこのモジュールは、LTEのカテゴリー1およびカテゴリー4に対応し、さらにBluetooth機能も搭載。ローカルでのセンサー接続やビーコン受信、機器認証といった用途にも対応できる。加えて、2G・3Gへのフォールバックにも対応しており、地域ごとの通信環境に左右されにくい。

 このモジュールはmicroPythonスクリプトによる制御機能を内蔵しており、外部にマイコンを追加することなく、デジタル入力やアナログ入力から取得したデータをその場で処理し、クラウドや指定のサーバーへ送信することができる。結果として、部品点数の削減とシステムの簡素化を実現し、開発効率の向上につながっている。クラウド連携についても、MQTTを用いた接続のためのサンプルコードが提供されており、導入をスムーズに進められる。

セルラー通信に対応した組み込みモジュール(右上)とLTE-M、LTE カテゴリー1(下左右)。左はゲートウェイ

 低消費電力に対応したLTE-Mデバイスは通信頻度を抑えることで消費電力を低減し、長期間バッテリー駆動で運用でき、電源やネットワーク環境が整っていない場所での利用にも適している。

低消費電力に対応したLTE-Mデバイス(左)と、LTE カテゴリー1/4対応のデバイス(右)

 ゲートウェイ製品はWi-SUNに対応し、ボーダールーターとして機能し、異なる通信プロトコルをつなぐことができる。配下にはWi-SUNデバイスのほか、2.4GHz帯や900MHz帯の無線モジュールなどを接続できるほか、セルラー、Wi-Fi、Bluetooth、LAN、USB、microSDといった多様なインターフェースを備えており、必要な機能に応じて構成を選択できる柔軟性がある。

ゲートウェイは様々なインターフェイスを備えている

 ディジ インターナショナル製品の信頼性を支える、保守・サポート体制も充実している。製品によっては3年保証を提供するほか、日本国内だけでなく海外の開発チームとも連携した技術サポートを受けられる体制が整備され、顧客の課題には、サンプルプログラムの提供や具体的な解決策の提案など、実運用までを見据えた支援を行っている。「技術サポートは日本だけでなく海外チームも含めて非常にレスポンスが良い」(湯澤氏)

 遠隔からデバイスを管理できるクラウドサービスも提供しており、ユーザーはネットワーク経由で機器の状態確認や設定変更、OTAによるファームウェアの更新が行え、運用負荷の軽減と保守効率の向上を図ることができ、長期間にわたり多数のデバイスを管理するIoT用途をサポートしている。

山間部でも置くだけでクラウドに接続できるIoT

 ディジ インターナショナルの製品は、通信インフラの制約を受けやすい現場や、リアルタイムでのデータ活用が求められる領域で活用されている。その象徴的な事例は、スポーツ分野とインフラ監視分野でのユースケースだ。

 スポーツ分野では、競技用の時間計測システムに同社のモジュールが採用されている。スタートや通過タイミングといった計測データを取得し、そのままクラウドへ送信。クラウド側で集計、分析されたデータは、トレーナーやマネージャーが確認できる形で可視化される。特に山間部などのトレーニング環境では固定回線の整備が難しいケースも多く、場所の移動や持ち運びを柔軟にできるモジュール形状でのセルラー通信によるデータ送信が現実的な手段となっている。

 社会インフラ領域での活用では、河川や山間部に設置されたセンサーからのデータを収集し、災害予知や保全に活用する取り組みを行っている。携帯回線が届く範囲であればどのような場所でもデータ送信が可能なため、ネットワーク構築が難しい場所でも監視システムを構築でき、設置するだけで運用を開始できるのも特徴の一つだ。「山の中でもデータをクラウドに上げて管理できる仕組みに使われている」(湯澤氏)

 これらの事例の共通点は、場所や環境に縛られずにデータを収集、活用できること。「電源もネットワークもない場所に置くだけで使えるのが強みです」と湯澤氏は語ったように、固定回線や電源に依存しない通信基盤を提供することで、IoTの適用が難しかった現場でも活用できる。

役割分担で実現するソラコムとの協業

 通信機能を持つデバイスをグローバルに提供してきたディジ インターナショナルにとって、通信回線やクラウド連携を担うプラットフォームとの連携は不可欠だ。ソラコムとは、セルラー通信を活用したIoTソリューションによって関係が深まり、両社の強みを活かした明確な役割分担がなされている。同社がモジュールやゲートウェイといったハードウェアを提供し、ソラコムが通信回線やプラットフォームを担うことで、ユーザーはデバイスから通信とサービス開発を一体的に検討できる。

 ソラコムの特徴であるグローバル対応の通信サービスもディジ インターナショナル製品と親和性が高い。複数キャリアとのローミングに対応した仕組みにより、国内外を問わず同一の構成で利用できる。

ソラコムのサービスと親和性の高いハードウェア

 ソラコムとの協業によって、柔軟に小規模な回線から利用でき、PoCや試験導入といった段階からスムーズに活用、そのまま本格運用へとスケールさせられる。こうした段階的な導入プロセスは、新規サービスの立ち上げにおける導入のしやすさとしてユーザーのメリットとなる。

 また、ディジ インターナショナルとソラコムの協業は、アプリケーションやクラウド活用を含めた全体設計において、必要に応じてパートナーと連携することで、ユーザーの課題に対する具体的な解決策を提示できるのも効果の一つだ。ハードウェアと通信プラットフォームという異なる領域を補完し合い、デバイスからサービスまでをつなぐ一体的な価値提供を実現するパートナーとなっている。

インフラ領域とeSIMで広がる、IoT活用の次のステージ

 ディジ インターナショナルでは今後の広がりが期待される分野として、電力・水道・ガスといったインフラにおける検針や監視の自動化を挙げている。Wi-SUNを使った無線ネットワークを活用した検針の仕組みが進展する中で、異なる通信方式をつなぐ役割を持つデバイスの需要も高まっている。こうした領域において、異なるネットワークをつなぐゲートウェイの役割は今後さらに重要になると見られる。

 通信技術の進化への対応では湯澤氏は「eSIMによって遠隔で通信を制御できるようになる点は、今後大きな価値になる」とeSIMの活用を重要視していると語った。物理的なSIM交換を必要とせず、遠隔で通信設定を変更できるため、現場に設置されたデバイスの運用効率を高められる。湯澤氏はセルラー機能を持つ製品のeSIM化を進めることで、より柔軟で拡張性の高いIoT環境への対応を考えているとコメントした。

eSIM化で接続運用の柔軟性をさらに高めると語る湯澤氏

 現在のIoT市場には多くのプレイヤーが参入しており、競争環境は一段と激しさを増している。大手通信キャリアをはじめ、さまざまな企業がIoT事業を強化する中での差別化は、どのような用途で使われ、どのような価値を生むのかといった、特定の用途やサービスが結びつくことで初めて普及が進むと考えており、ディジ インターナショナルはIoT基盤を通信とデバイスの両面からシステム全体を支える企業として今後も存在感を高めていく。

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