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生成AI事例アワード ピッチコンテスト レポート3

60秒の安全診断で建設現場を変革したAI クリエイターとAIのタッグで創造する日本テレビの映像世界

2026年04月24日 10時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●MOVIEW 清水

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「Agentic AI Summit '26Spring」にて「第5回 生成AI事例アワード ピッチコンテスト」が開催された

 2026年3月19日、Google Cloud主催のイベント「Agentic AI Summit '26Spring」が開催された。生成AIは現在、チャットによる単純なやりとりやタスクの自動化を経て、自律的に思考し行動する「自律型AIエージェント」へと進化を遂げている。本イベントは、このエージェンティックAIがもたらすビジネス変革をテーマにしたもので、会場では多様なブース展示やピッチなどが行われ盛況を見せた。

 今回はその中から、第5回 生成AI事例アワード ピッチコンテストの様子を紹介。前編に続き、今回はラスト2社のプレゼンと、受賞結果をレポートする。

建設現場の写真を撮るだけで60秒、500社が使う安全支援AIアプリ

 5社目はEARTH BRAINの平田弘達氏。コマツ、ドコモ、ソニー、NRIの4社によるジョイントベンチャーで、建設業界のDXを推進するスタートアップだ。平田氏自身、もともとゼネコンで土木建設現場の最前線にいた経験を持つ。

株式会社EARTH BRAIN ソリューション商品開発 平田弘達氏

 建設業界で最も優先されることは「安全」。業界の人に聞けば、必ず同じ答えが返ってくるという。「安全」だ。労災死亡者数はいまだに年間200名を超え、全産業の約3割を占める。命の危険と隣り合わせの業界なのだ。ところが人材不足と働き方改革による労働時間削減が重なり、ベテラン人材の不在と若手の教育機会不足という二重の課題に直面している。

「経験豊富なベテランがおらず、若手は労働時間が減って教育機会が取れません。安全管理に必要な知見が得られず、今までと同じレベルの安全性を維持することすら困難になっているのです」(平田氏)

 この課題に対して開発されたのが安全支援アプリだ。使い方はシンプルで、現場で作業中の写真をアップロードするだけ。Geminiが画像を認識し、どんな作業が行われているか、現場がどういった状況かを把握した上で、RAGデータベース化された安全管理の知識や事故事例、安全関連法令を参照して適切な安全管理を提示する。レスポンスまでの所要時間は約60秒だ。

写真をアップロードすると安全対策を出力する

 提供開始から約1年半で500社以上に利用され、1年間で利用者数は10倍以上に伸びた。毎日200回以上、このアプリを通じてリスクの指摘が行なわれている。大手建設会社の西松建設では、毎朝のKY(危険予知)活動の中で安全支援アプリを活用。前日の現場写真からAIがリスクを洗い出し、サイネージに表示しながら現場監督と作業員が指差し確認をしているという。

「今こうして私が喋っているこの瞬間も、日本のどこかの現場で生成AIと安全管理者が一緒になって現場の安全を進めています。そういう世界がもうすでに実現しつつあるのです」(平田氏)

 将来的には動画解析や360度カメラへの対応、さらにコマツのグローバルネットワークを活かした各国の安全基準に準拠した海外展開も視野に入れているそうだ。

毎日200回利用され、すでに2万2000回以上のリスク診断を実施している

「TOKYO 巫女忍者」の成功から生まれたAI共創プラットフォーム

 最後に登壇したのは、日本テレビ放送網の古谷康佑氏。2024年入社で、AI秋元康の開発や動画生成AIを活用したコンテンツ制作など、技術とコンテンツの融合に取り組んできた人物だ。

日本テレビ放送網株式会社 DX推進局 データ戦略部 AIチーフクリエイター 古谷康佑氏

 今年1月に放送された地上波ドラマ「TOKYO 巫女忍者」は、実写と生成AIを高度に融合させているのが大きな特徴だ。大規模なセットを使わず、生成AIを活用し、実写撮影だけでは不可能な世界観を実現した。企画から放送まで半年未満というハイスピードなプロジェクトだった。

「この取り組みの最大の目的は、生成AIによる業務効率化ではありません。AIが出してきた予想外の映像に対して、プロの演出家が「そう来たか」と触発され、見たことのない作品が生まれるという、クリエイティビティの拡張が起こることを期待していました」(古谷氏)

 古谷氏は「AIチーフクリエイター」という肩書きで、制作チームの演出意図をAIチームやCGチームに橋渡しする役割を担った。テキストや画像から動画を生成する自社開発ツールを使い、ドラマのカットを1つ1つ作り上げていった。同じテキスト、同じ画像から大量に動画を生成するツールも自社で開発。AIクリエイターやAIエンジニア、演出陣が会議室に集まり、その場でAIカットを作り上げる高密度な環境を構築した。新人や学生アルバイトでもプロのクリエイティビティを即座に形にできる仕組みだったという。

生成AIをフル活用したドラマ制作に挑んだ

 この成功体験をスケールさせるために開発されたのが、AI共創プラットフォーム「AI Co-Creator」だ。独自のアルゴリズムで台本を深層まで読み解き、場所や場面、人物、衣装、キャラクターを理解して共通アセットとして管理する。シーンをまたいでも一貫性を維持しながら、物語の世界観を正しく保ち続けるのだ。

 さらに、生成された動画をAI自らが評価し、表情の不自然さやライティングの修正案を提示してくれる機能も備えている。Geminiがオーケストレーターとなり、複数のAIエージェントが技術系エージェントとして連携する構成だ。

「数週間かかっていた試行錯誤が、コーヒーを飲んでいる間のわずか1時間で完結する。この圧倒的なスピード感でアイデアの打席数を爆発的に増やすことが可能になりました」(古谷氏)

 制作の主体が「手」から「目」に変わる。たった1行のアイデアから動画の絵コンテが完成し、誰もが物語を形にできる世界を目指すという。

Geminiをオーケストレーターとした「AI Co-Creator」の構成

最優秀賞は日本テレビ、優秀賞にキリンビジネスシステムとレアゾン・ホールディングス

 全6社の発表を終え、審査の結果が発表された。優秀賞にはキリンビジネスシステムの枡野氏と、レアゾン・ホールディングスの佐藤氏・カンカネ氏の2社が選ばれた。

 そして最優秀賞に輝いたのは、日本テレビ放送網の古谷氏だ。トロフィーとともにGoogle Cloud Next Tokyo '26への特別招待とセッション登壇権、スイートルーム宿泊券が贈られた。

 審査員の漆原氏は「生成AIをここまでフルコミットして全部に使い切った素晴らしい事例です。プロの人がAIでガチにやるとここまでできるんだと肌で感じました」と評した。

 古谷氏は「ドラマが好きだった1ユーザーとして、AIを活用した新時代のメディアのドラマを作ることができました。メディアがテクノロジーの力でどんどん面白くなるように、日本テレビとしても頑張っていきたいです」と抱負を述べた。

最優秀賞を獲得したのは、日本テレビ放送網の古谷氏

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