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10年間・10万人の接客知見からAIが見抜く“顧客のこだわり”、ただし実用化は「泥臭い世界」だった

あなたの「本当に住みたい部屋」はAIが知っている CHINTAIエージェント開発の舞台裏

2026年04月06日 11時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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最も苦労したのは「生成AIに“ルール違反の表現”をさせないこと」

 サービス開発の裏側や苦労話についてもじっくり聞いてみました。

 CHINTAIエージェントは2020年以降、ルールベースのチャットシステムを採用して完全自動化を実現していました。そして近年、生成AIの技術が実用レベルに達したことをきっかけに、システム基盤も含めた全面的なリニューアルを図りました。今回のAIバージョンは、開発決定から約半年でリリースしたそうです。

 小黒さんによると、新システムでは生成AIがほぼすべての役割を担っています。ユーザーとの日々のやり取りや意図の理解、個々人に合わせた物件の選定やおすすめコメントの生成、継続的な学習といった部分です。

 「これまでのシステムのフロントに生成AIを付け足したのではなく、生成AIを前提に据えて、すべて作り直しました」(小黒さん)

 新システムの開発で苦労した点はどこでしょうか? 小黒さんからは「いちばん苦労したのは、AIが生成する『おすすめコメント』の正確さや品質を担保することでした」という答えが返ってきました。

 生成AIが、しばしば誤回答(いわゆるハルシネーション)をしてしまう問題はよく知られています。ただしCHINTAIエージェントの場合は、誤回答を防ぐだけでなく、法律や業界で定められた不動産広告の表示(表現)ルールも守る必要がありました。これが大きなハードルになったそうです。

 「生成AIがコメントを書くと、たとえば『格安物件』や『地域ナンバー1』、『設備が機能的』といった表現を安易に使ってしまいがちです(※筆者注:各種規制により、こうした表現は原則禁止、あるいは客観的根拠を示す必要がある)。ほかにも生成AIは、南向きの物件だと憶測で『日当たりが良い』と書きがちなのですが、本当に日当たりが良いのかどうかは現地を確認しないと分かりません」(髙橋さん)

筆者に届いた南向き物件のおすすめコメントでも、ちゃんと「内見時にチェックしてみて」と書かれていました(傍線は筆者)

AI時代、ゼロクリック時代だからこそ「正しい情報」にこだわる

 CHINTAIは、50年前に情報誌「週刊賃貸住宅ニュース」からスタートした歴史を持ち、現在でも「正しい情報」を重視する社風は変わらないと、髙橋さんは説明します。そうした背景があるからこそ、CHINTAIエージェントでもAIのコメント品質にこだわっているわけです。

 「かと言って、AIにルールをガチガチに守らせようとすると、今度はユーザーが読みにくい、読みたいと思わないコメントになってしまいます。なので、コメントの品質や正確さは担保しつつ、読みやすい文章になるようチューニングしていく。ここはもうトライ&エラーを繰り返すしかないので、毎日毎日、何百回もテストを行いました。とても泥臭い世界ですね」(小黒さん)

 髙橋さんも「お客さまに嘘はつかない、でも役立つコメントにはしていこうと、本当に頑張った」と振り返ります。たとえば「最寄りのコンビニまで○○メートル」といった情報も、直線距離ではなく実際の道のりで正確に表現するよう、データやAIを工夫しているそうです。

 「AI検索が登場してゼロクリック(※筆者注:コンテンツページまで進まず、生成AIの要約情報だけを読んで完結すること)のニーズが高まっていますが、お部屋探しに関して言えば、やはり詳細情報まで見ないと分からないのが現状です。わたしたちは、AIを使って気軽に読めるコメントにまとめつつ、いいかげんな情報ではない、ちゃんと役立つ情報を提供していきたいと考えています」(髙橋さん)

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