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32台のAuracastスピーカーをスマホやPCで一括コントロール、Cear Connect

2026年03月30日 06時00分更新

文● ASCII

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 シーイヤーは3月26日に「Cear Technology Conference 2026」を開催し、新開発した「Cear Connect」を中心に、シーイヤーの中長期成長戦略や新たな音響技術を紹介した。

 CTCは同社がこれまで取り組んできた音響技術と、その進化の方向性を共有するため2023年から実施している技術カンファレンス。3回目の開催となるCTC 2026では、音の先」をコンセプトに掲げ、急速に変化する市場環境の中で、Cearの音響技術がどのような新しい価値と選択肢を生み出していくのかが示された。

ソフトウェアに強みを縁の下の力持ち的な企業

 シーイヤーは、Bluetoothのブロードバンド配信技術であるAuracastに対応したワイヤレススピーカー「Cear pavé(パヴェ)」を世界で初めて開発。クラウドファンディングなどで注目を浴びたメーカーだ。

Cear pavé

 企業としては共栄エンジニアリングの事業部が独立するかたちで2018年に設立。業界の黒子的な存在として、強みのある音響ソフトウェア技術を活かして、オーディオ機器メーカーと協業しながら、縁の下の力持ち的な役割を果たしてきた存在でもある。

Cear pavéには、Cear Fieldというスピーカーの外に広がる音場や音楽信号が含む情報(ボーカルとバックバンドなど)を分離し、声だけをよく聞かせるといった機能が搭載されている。写真は3台のCear pavéを活用し、音の指向性をコントロールするデモ。波面合成で手前には音が鳴るが、後方の音は打ち消され、まったく音が聞こえない。

 クアルコムとの関係も深く、2021年には国内では初めてSnapdragon Soundのテクニカルサポートを開始。クアルコムのBluetooth SoCの扱いにも長けたメーカーとなっている。こうした背景もあり、CTC 2026では、Bluetooth SIGやクアルコムからのビデオレターが寄せられた。

Auracastを用いたB2Bソリューションを拡大

 Cear pavéは手のひらサイズと言ってもいいほど小型の筐体(9.5mm角)でありながら、立体的で広がりのある音場を得られる点が特徴だ。その一方で、クラウドファンディングの取り組みや各メディアでの露出などを通じて、各所からの引き合いが増え、コンシューマ向けとは異なる新たな可能性に気づくことができたという。

 それが空間と音が一体化した環境を作るB2B分野への応用だ。

 商業/公共施設やイベント会場など、設置できる機器やスペースの制約のある空間に複数のCear pavéを設置して、空間全体に広がる音を実現したい。あるいは、ワイヤレス接続という強みを活かし、元々音響機材を設置することを想定していなかった環境に複雑な配線なしに、自由なレイアウトでスピーカーを設置する「後のせ」の音響システムとして使いたいという引き合いが多くあったという。

 イベントでは、多くの導入事例が紹介された。例えば、さっぽろ雪まつり2026では、屋外ステージに合わせて18台のCear pavéを設置し、Auracastによる音響を提供、マイナス温度の環境下でも1日中音を出すことができたそうだ。

 Cear pavéはフランス語で敷石という意味を持つ。つまり、1台で立体的な音響が得られるコンパクトスピーカーである一方で、数十台をスタッキングして、同時に音を鳴らすことも可能な製品となっている。

 つまり、多数のスピーカーを設置し、それらを調整して同時に鳴らしたいといった用途でも活躍する製品なのである。Auracastは、1台の送信機から電波の届く範囲であれば、事実上無制限に音楽信号を配信できる規格であり、複雑な配線工事がなしで、好きな場所にスピーカーを設置できるというのもメリットだ。

複雑のスピーカーを一括で制御するCear Connect

 こうしたB2B分野での応用を想定して、複数のスピーカーを集約して制御するための技術として開発されたのがCear Connectだ。現状では、Auracast対応の送信機である「Cear Core」と、B2B向けにカスタマイズしたCear pavéを組み合わせた使用を想定。将来的には、シーイヤー以外のメーカーが開発した機器との連携も視野に入れている。

 多数のスピーカーを設置した環境で、スピーカーのグルーピングやグループ別に適切な設定情報を、1台のスマホやPCから簡潔に配布できる点がポイントとなっている。

 仕組みとしてはCoreから配信するAuracastのデータの中に、シーイヤーが定義した制御情報を埋め込んで送信。対応機器が音楽データとともに、この情報を受け取った際には、再生設定にリアルタイムで反映されるというものだ。

 制御情報は音量など再生時のパラメータに加えて、音場制御、ビットレート、遅延、EQ設定などが含まれている。単一の情報を配布するだけでなくグループ化したスピーカーに異なる設定を配布することも可能だ。

 技術的な特徴としてはアプリケーション層とトランスポート層の中間に位置し、USB HID(有線)、Bluetooth LEのGeneric Attribute Profile(GATT)やPeriodic Advertisement(PA)、Auracastなど異なる通信規格で繋がった機器を統一したAPIで制御できるという点もある。

32台のCear pavéを遅延なく操作

 会場では32台のCear pavéを3つのグループに分けて、リアルタイム制御するデモが披露された。このデモで使用されたのはステレオ音源だったが、中央はボーカルが強く、左右は広がりのあるバックバンドの音を再生するなど、会場規模に合った音場も提供されていた。

 PC側で音量や、再生の切り替えなどを行った際は、即時に反応するレスポンスの良さも印象的だった。

 現状では、送信側、受信側のそれぞれがCear Connectに対応している必要があるが、既存のパッシブスピーカーをこのシステムに取り入れれるためのアンプ「Cear Connect Amp」の開発も進められている。

 また、実際の導入ではスピーカーの配置計画が重要になるが、クアルコムの次世代プラットフォーム「Dragonwing(Q-8750 / Q-7790、最大77 TOPS)」などと連携した「Physical AI」の導入も視野に入れている。

 これは会場の様子やリスナーとの距離をカメラでとらえ、その状況にあった処理をするというもの。カメラによる人物検出(Vision AI)と、自社開発の入力系IP「CearMicrophone」による指向性集音・ビームフォーミング(Audio AI)などを組み合わせ、各スピーカーの配置に合わせた適切な音量や音場の提供、来場者の数や人とスピーカーとの距離などに合わせた適切な音響の提供など、「見て・聴いて・理解する」エッジAIシステムを構築する構想となっている。

 この応用が進めば、特定方向の音声をクリアに取り込んでの文字起こしや、ロボティクス、セキュリティ、介護支援、工場モニタリングといった幅広い領域への広がりが期待できる。

Cear Connectのロードマップと今後の展開

 このようにCear Connectは、通常であればハードルの高い音響設備の導入を後付けで簡単に管理できるソリューションだが、同社は社会実装に向けて明確なロードマップを敷いている。

 まず、2026年4月には、自社製品に組み込むだけでエコシステムに参加できる「Cear Connect対応OEMモジュール」の量産試作(PP)出荷を開始。デバイスメーカーや建築会社などの先行パートナーへの提供を始める予定だ。これは、Cear pavéの基板にCear Connect対応のソフトウェアスタックを実装し、モジュール化したもので、これを自社製品に組み込めば、前述したCear Connectの機能を持つ製品を簡単に開発可能だ。

 提供の対象となるのは、Cear Connectエコシステムへの参加を希望するデバイスメーカー、施設、建築会社、コンテンツ/XR事業者、金融・投資家などの先行パートナーとのこと。

 続く2026年後半には、Cear CoreとCear Connectを統合したソリューションの市場投入や、Physical AI連携製品の展開を計画している。

 さらに2027年以降は、グローバル展開を本格化させるほか、施設向けのサブスクリプションモデルの提供、前述のDragonwing™連携の製品化を見据えている。

 シーイヤーでは、音と視覚、あるいは音と体験が連動した施設の提供など、音が関係する空間オーディオ市場が、2031年には約1164億ドル(約17兆円規模、CAGR 9.9%)に成長するとみている。

 同社はパートナーに対して、試作モジュールの提供に加えて、Cear Connectプロトコルの技術仕様書、SDK、ファームウェアアップデートなどを提供。指向性集音技術の「CearMicrophone」や聴覚最適化技術の「Awesound」といった関連IPとの組み合わせた、音響ソリューションを展開するためのサポートに加え、個別の共同開発・共同展開やPoC(実環境での価値検証)の支援を実施する計画だ。

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