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リクルートMS、キャリア入社者のオンボーディングの課題や先進事例を解説

“キャリア人材=即戦力”は幻想 活躍の鍵は「1年以上の支援」と「正確な情報提示」

2026年03月16日 11時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 近年、様々な企業で「キャリア採用」を拡大する動きが加速している。大手企業も例外ではなく、新卒よりも採用数が多いケースも増えているほどだ。一方で、課題となっているのが、キャリア入社者が組織の一員として円滑に馴染めるよう、いかに支援していくかである。

 リクルートマネジメントソリューションズ(リクルートMS)は、2026年2月19日、キャリア入社者のオンボーディング(立ち上がり支援)をテーマとした説明会を開催。最近では「キャリア入社者の組織適応の水準が低下している」という調査結果を紹介すると共に、“少なくとも1年~2年”オンボーディングを続ける重要性を提言した。

 リクルートマネジメントソリューションズのシニアコンサルタントである馬越かおる氏は、「キャリア入社者は“採用さえすれば即戦力”というのは幻想。仕事で成果を上げるには、新卒ならば自然に身に着ける『(組織の)独自文化』や『暗黙のルール』、『社内人脈』の把握が必要であり、フォロー施策は不可欠」と語った。

リクルートマネジメントソリューションズ 技術開発統括部 コンサルティング部 シニアコンサルタント 馬越かおる氏

キャリア入社者が企業に馴染めなくなっている背景は?

 説明会の前半では、リクルートマネジメントソリューションズの主任研究員である内藤淳氏から、調査結果を交えて、組織適応やオンボーディングの実態について解説された。

リクルートマネジメントソリューションズ 技術開発統括部 研究本部 主任研究員 内藤淳氏

 同社では、2023年と2025年に、キャリア入社者に対する調査を実施した。具体的には、従業員500名以上の企業に中途入社した1年~3年目の正社員を対象とした調査だ(調査対象者数は2023年が865名、2025年が1109名)。

 2つの調査を比較することで明らかとなったのが、キャリア入社者の「組織適応の水準が低下している」現状だ。

 具体的には、この2年間で「組織適応の6つの要素(ワーク・エンゲイジメント / 組織へのコミットメント / 会社適応の程度 / 職務遂行への自信 / 認められている実感 / 成長実感)」の内、組織へのコミットメントを除く5つの要素が低下。特に「入社から2年目まで」にかけて、適応水準の落ち込みが顕著だ。

年次別のキャリア入社者の組織適応水準の調査比較(2023年と2025年)

 2023年から2025年という短い期間で、キャリア入社者を取り巻く環境にどのような変化が起きたのか。

 中途採用の人材確保に関する別調査をみると、2021年から継続して市場が悪化しており、2022年以降では未充足の状態が続いている。内藤氏は、「この中途採用市場の需給のひっ迫が、キャリア入社者の“質の変化”に影響している」と語り、これこそが組織適応が低下している背景だという。

 実際に2つの調査を比較すると、専門領域で即戦力になることを期待された「専門性重視型」入社者の比率が減少しており(59%から44%)、「キャリア入社者の専門性の保有レベルが下がっている」(内藤氏)という。

「ポテンシャル重視型」と比べて「専門性重視型」の比率が減少

 キャリア入社者の質の変化は、別の調査結果にも表れている。キャリア入社者が、「最初の成功体験」を得た時期について、2023年では「3か月未満」が最も多かったのに対し、2025年は「半年~9か月」が最も多く、“組織適応の契機”となる成功体験を得られるタイミングが遅くなっていた。

 また、勤続・離職の意向をみてみると、2年間で「離職も考えたい」という回答がやや減少(29%から23%)する中で、「他部署に異動したい」との回答が倍増(15%から30%)している。

 この「異動したい」回答者には、職務遂行への自信が低い傾向が見られる。「異動したいという人は、成果を出すことに苦労している。専門性レベルの低下やミスマッチの増加によって、担当業務で上手くいかないことが増えている」(内藤氏)

勤続・離職に関する意向

組織適応の鍵は“オンボーディングの期間”と“リアリスティック・ジョブ・プレビュー”

 それでは、組織適応の水準を上げていくにはどうしたらよいか。ポイントは「オンボーディングの期間」と「入社前に正確な情報を伝えること」だという。

 2025年の調査で「入社後に苦労したこと」を尋ねると、「自分の役割・担当業務の理解」「仕事上の手続きなどの理解」「配属部署の役割・業務の理解」が上位となった。加えて、苦労をした時期は、入社3か月未満では、「業界・商品知識の取得」「システム・IT環境への適応」に対する苦労が多いが、半年以降となると上位に挙がった自身や配属部署、社内ルールへの理解に苦しむようになる。

 「入社後半年が経つと、ひとつ上の役職で本格的に仕事を動かし始める。ここで本当の意味で役割や手続きなどの壁に突き当り、人脈のなさも相まって苦労する」と内藤氏。この入社後「半年~1年」の時期は、周囲からは「もう馴染んだだろう」とフォローも手薄になり、実は最も仕事・組織への適応に苦労する時期だという。「キャリア入社者が壁にぶつかる時期は、通常思われているよりも先にあるため、少なくとも1年はオンボーディング施策を続ける必要がある」(内藤氏)

キャリア入社者が入社後に「苦労したこと」

 もうひとつの鍵となるのが、否定的な要素も含めて、入社前に正確で現実的な情報提示を行う「リアリスティック・ジョブ・プレビュー(RJP)」だ。2025年の調査では、このRJPが十分なレベルで行われていたのはわずか15%で、「悪い点の説明がなかった」という回答も3割を超えていた(36%)。そして、RJPがしっかりと行われるほど、組織適応の水準が高まる傾向があった。

RJPと適応水準の関係

 さらに、「想定していた職務内容と違いはなかった」と回答したのは31%で、7割近くが入社後に何らかの不一致を感じている状況だ。こちらもRJPと同様に、事前の想定と現実のギャップが少ないほど、組織適応の水準は高くなる。内藤氏は、「できるだけ正確な情報を伝えて、入社後の仕事とのギャップを減らすことが、組織適応を促進する上で非常に重要」と強調した。

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