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データセンター選びの新常識 ユーザーの課題に応える選択肢を探る 第1回

首都圏のデータセンター枯渇、電力コストの高騰、エンジニア不足 課題から考える最新データセンター選び

2026年02月27日 19時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 企業のサーバーを運用するためのデータセンター選びがますます難しくなっている。AIニーズの拡大で、データセンターの電力や用地の確保が難しくなり、高騰する電力コストへの対応も必要になってきた。また、データセンターで作業を行なうインフラエンジニアの不足も顕在化している。ここではユーザー企業の課題をトピックとして、最新のデータセンター選びを考えていく。

2027年度中に建設が見込まれる関西電力サイラスワンの京都府精華町のデータセンター

首都圏のデータセンター枯渇 関西圏は受け皿になるか?

 1つ目の課題は首都圏のデータセンター不足である。これはデータセンターを利用する一般企業や事業者に関わる問題だ。

 国内のデータセンターは長らく首都圏が中心であり、通信事業者の集まる東京の大手町、電力需要を満たす千葉県の印西地区、金融系のデータセンターが集積する武蔵野地区、ロジスティック拠点の多い湾岸地区などにデータセンターが集積されてきた。

 しかし、安定した地盤とネットワークインフラという条件を満たすデータセンター用地の選択肢は、首都圏ではすでに少なくなっている。高発熱なAIサーバーの需要増が電力不足に拍車をかけており、「データセンター銀座」と言われる印西地区は順番待ちの状態が続いている。

 そのため、多くのデータセンター事業者は「脱東京」を目指している。NTTデータグループが用地を取得した栃木市に加え、川崎市、宇都宮市などでもデータセンター建設の動きが見られる。ただ、人口密集地の首都圏では、住民による反対運動でデータセンター建設が進まないという状況も顕在化しており、継続的な建設は難しい状況にある。

NTTデータグループが用地を取得した栃木市のデータセンターのイメージ

 成長著しいのが関西圏だ。以前は大阪中心地・堂島周辺にデータセンターが集積していたが、近年は大阪府箕面市と茨木市にまたがる彩都地区、京都・大阪・奈良にまたがるけいはんな地区のほか、茨木、南港などに郊外型データセンターが次々と造られている。シャープ堺工場の跡地に構築されるKDDIのAIデータセンターも話題になった。今後はますます選択肢が増えてくるだろう。

 注意すべきは、現在増えている関西圏のデータセンターは、パブリッククラウドを展開するハイパースケーラー向けが多いという点だ。圧倒的な規模を要するハイパースケーラー向けデータセンターは、一般企業向けのリテール向けデータセンターと設計思想が大きく異なる。リテール向けデータセンターの選択肢は思いのほか増えていないため、事業者選びには注意が必要だ。

発熱するサーバーと高騰する電力コストをいかに抑えるか?

 2つ目の課題は電力コストの問題だ。最新のAIサーバーを利用したいユーザー企業は特に考慮すべきポイントと言える。

 2021年以降、電気料金は値上げが進み、2024年に国の助成金が終了したことで、さらに料金はアップしている。AIの需要増でサーバーの発熱量は上がる一方で、冷却のためにますます電力が必要になる。当然ながらデータセンターの利用にも価格が転嫁されるため、いかに電力を抑えるかは喫緊の課題だ。

 このため、省エネ化対応はデータセンター選びの大きなポイントになる。従来、データセンターの省エネ対応はSDGsにおけるカーボンニュートラルを実現するための施策という意味合いが強かったが、現在では高騰する電力代の削減という意味合いが大きい。ユーザー企業も積極的に検討すべき事項である。

 データセンターで消費する電力のうち、サーバー・ストレージをはじめとするIT機器、電源設備での消費は全体の約半分にとどまり、約4割は冷却のために用いられる。そのため、最新のデータセンターでは建屋自体の冷却の効率化や省エネ対応の冷却設備の採用が積極的に行なわれている。

 最近の注目はいわゆる液冷だ。液冷は空気の約3500倍に当たる熱伝導性を持つ液体を媒体にした冷却方式で、液体を循環させて直接IT機器の熱を除去するいわゆる「液冷」(DLC:Direct Liquid Cooling)と、IT機器自体を液体に浸す「液浸」がある。高発熱なAIサーバーの普及にともない、空冷はもはや限界にぶち当たっており、この数年で液冷はデータセンターに不可欠な技術となった。

 もともとデータセンターにおいては液体は御法度だったが、この1~2年でGPUベンダーのNVIDIAによる液冷認証を受けるデータセンターも増えている。また、液冷システムも従来は海外製品が多かったが、空調大手のパナソニックやダイキン工業など国内企業も製品開発に乗り出している。今後は国産製品を用いた液冷データセンターも生まれてくるかもしれない。

「NVIDIA GB200 NVL72」に対応した液冷認証を取得したMCデジタル・リアルティのNRT14データセンター

 さらに電力代に関しては、関西圏のデータセンターに地の利がある。燃料費調整額、寒冷地特有のコスト、個人向け・法人向けのプランの違いなど、さまざまな要因がからむため一概に言えないが、東日本に比べて原子力発電所の稼働数の多い関西、九州は電気代が相対的に安い。電力消費量の多いデータセンターにおいては、今後は「電力コストの地域差」がフォーカスされてくるに違いない。

インフラエンジニアがいない! リモートハンズを活用せよ

 3つ目の課題は、データセンターでの作業を担うインフラエンジニアの不足だ。こちらもデータセンターを運用する企業全般に関わるが、特に中堅・中小企業に意識してもらいたいポイントになる。

 経産省の調査によると、2018年時点で日本のIT人材は約22万人も不足しており、2030年には79万人が不足すると見込まれている。このうち3割が、サーバーやネットワーク、クラウドなどの構築や運営を担うインフラエンジニアとされており、AIエンジニアよりも少ないと言われている。

 インフラエンジニアが少ない理由の1つは、待遇面にある。ITを支える重要な作業でありながら、業務が動いていない時間に作業するため、残業や夜勤、休日出勤も多く、トラブルの際は緊急対応もある。リモートで作業が行なえることも多いが、ラッキングや機材交換など物理的な作業も少なからず発生する。少子高齢化の現在、こうした業務を前向きに行なえる人材は正直少ないだろう。

 抜本的な解決は、やはり給料UPや待遇面での改善になるが、業界ぐるみでの対応が必要になるので難しい。そのため、短期的にはデータセンターでの作業を代行してくれる「リモートハンズ」サービスの活用をオススメしたい。リモートハンズを利用すれば、自社でインフラエンジニアを雇わなくとも、専門性の高いエンジニアに作業を依頼できる。

 現在、多くのデータセンター事業者が提供しているリモートハンズサービスは、サーバーの再起動、故障対応、LEDの確認、ケーブルの抜き差し、機器のラッキングや除去など、現地に赴かなくともさまざまな作業を代行してくれる。サービスもメニュー化されており、料金も明瞭になっているため、利用しない手はない。
 

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