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「行政コストの削減」と「公共サービスの向上」を両立させるという難題

行政DXを超え、デジタルで市民の力を引き出す“地域社会DX”へ 兵庫県豊岡市の挑戦

2026年02月25日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 総務省が2020年度に示したガイドライン「自治体DX推進計画」が、2025年度末で一区切りを迎える。これまでのフェーズは自治体庁内業務の効率化を図る「行政DX」が中心だったが、今後、2026年度以降の新たなフェーズでは、地域課題や住民ニーズに寄り添い、公共サービスの住民との共創も図る「地域社会DX」への拡大が期待されている。

 兵庫県の北東部、但馬地域に位置する豊岡市でも、「行政コストの削減」と「公共サービスの向上」の両立を目指す行財政改革の中で、デジタルを活用した市民参加型のさまざまな取り組みを始めている。そうした取り組みのひとつとして、2025年2月からは、オンラインで公共施設の予約/料金支払/施開錠ができるシステムも導入した。

 今回は豊岡市を訪れ、豊岡市役所 DX・行財政改革推進課の出水翔太氏に、同市が進める市民参加型の地域社会DXや行政DXの方向性、具体的な取り組みの現状と課題を聞いた。

豊岡市役所 DX・行財政改革推進課の出水翔太氏。前職はシステムエンジニアとして6年間勤務し、2014年に出身地の豊岡市役所に入庁。当時の市役所は「まだ“電話と紙”が基本でした」と振り返る

人口減と高齢化の課題、「持続可能な」公共サービスを実現するには

 豊岡市は、2005年4月に1市5町が合併して出来た自治体だ。城崎温泉、出石(いずし)城下町、神鍋高原スキー場といった観光資源があるほか、米(コウノトリ育むお米)やズワイカニ(津居山がに)などの農林水産業、かばん製造業(豊岡鞄)などでも全国的に知られる。舞台芸術に携わる国内外のアーティストが滞在制作を行う「城崎国際アートセンター」もある。

 「さらに出石城下町には、映画『国宝』のロケ地になった近畿最古の芝居小屋『出石永楽館』もあります」(出水氏)

豊岡市はそれぞれに特徴的な1市5町が合併して出来た。日本のコウノトリの野生復帰を実現した地でもあり、市章もコウノトリをモチーフとしている

 豊岡市におけるDXは、2024~2028年度を取組期間とする「第5次豊岡市行財政改革大綱(以下、第5次大綱)」を指針に進められている。それ以前の取り組み(第4次大綱、2020~2023年度)は「行政コスト削減」が中心だったが、第5次大綱では「行政コスト削減」と同時に「公共サービスの向上」も実現し、「豊岡市で暮らしてよかったと市民が実感できるまち」にしていくことを目標に掲げている。

第5次大綱は「行政コスト削減」と「公共サービスの向上」を同時に目指す

 ただし、多くの地方自治体と同じように、豊岡市を取り巻く状況も楽観できるものではない。約7万7500人の人口は減少傾向にあり、一方で65歳以上の人口が占める高齢化率は34.3%と全国平均より高い(いずれの数値も令和2年国勢調査より)。第5次行大綱でも、少子高齢化と生産年齢人口の減少、社会保障費の増加や公共施設老朽化に伴う財政バランス悪化といった厳しい現状に触れており、行財政改革で目指す姿を、「限られた資本(リソース)」を活かしつつ「持続可能な状態で」公共サービスが提供されていることと定めている。

地域課題を「他人事から自分事へ」変え、市民自身も担い手の一人へ

 第5次大綱が目指す姿の実現に向けた具体的な方針は「5つの柱」にまとめられている。ここで期待されているのが「市民自身の力」、そして「デジタルの力」である。

第5次大綱で「めざす姿」と、具体的施策の「5つの柱」

 まず、市民自身が公共サービスの創造プロセスに参加し、その担い手にもなるという考え方について、出水氏は「他人事から自分事へ」という言葉を挙げたうえでこう説明する。

 「これまでは、『公』の部分はすべて市役所が考えて実行する、『私』の部分は自分たち(市民)で実行するとなって(明確に線引きされて)いました。しかし今後、人口減少が進んでいくに従って、市役所だけでは市民の需要が満たせない、すべてが実現できないところは出てきます。そこでここ(線引き)を見直し、あいまいにしていって、住民自身も世の中を担っていく仕組みづくりを目指しています」

持続可能な公共サービスを実現するため、市民自身(民)もその担い手となるモデルに変えていく

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