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レガシーシステムと生成AIが出会って、こんなにエモいイベントが生まれた

日本で一番レガシーシステムと対峙してきた5社がGitHub Copilotと出会うインパクト

2026年02月10日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 昨年末に開催され、YouTube番組として公開されている「GitHub Copilot Quest:Hack the Legacy」。GitHubが提供するAIコーディングアシスタント「GitHub Copilot」を活用し、Javaや.NETのレガシーアプリケーションを移行するハッカソンイベントだ。

 イベントに参加したのはNECソリューションイノベータ、NTTデータグループ、野村総合研究所、日立製作所、富士通というある意味、日本で一番レガシーシステムと対峙してきた5社。そんな企業の若手メンバーは、ともすれば日陰になりがちなレガシーマイグレーションで、どのようにGitHub Copilotを活用してきたのか。コメンテーターを務めたASCIIの大谷イビサがイベント全般をレポートするとともに、「レガシーマイグレーションにAIを活用する意義」について考えてみた。

2025年の崖を超えられなかった日本企業のレガシーシステム問題

 長らく日本企業の大きな課題だったレガシーシステム。企業のビジネスに寄与してきた基幹システムでありながら、企業のニーズやビジネスに合わせて増築・改築を重ねてきたため、運用が大きな負荷となってきた。2018年に経産省が日本企業への警告として発信した「2025年の崖」のレポートでは、DX未達の結果、12兆円の経済損失をもたらす「悪役」としてアピールされてきた。このレガシーシステムを最新のバージョン・環境に移行するのが、今回のテーマであるレガシーマイグレーションになる。

 しかし、イベントの冒頭に登壇した日本マイクロソフト Cloud & AI プラットフォーム統括本部 統括本部長 業務執行役員 藤井 仁志氏は、「レガシーシステムは、技術、人・組織、プロジェクト運営が絡み合う最難度の課題」と言い切る。利用している言語や環境が古すぎるため、中身がブラックボックス化しており、性能や信頼性を担保するのが難しいという技術的な困難さに加え、COBOLやPL/1など古い言語を扱えるエンジニアが高齢化し、育成も難しいという人材的な課題もある。プロジェクトとしても長期化しやすく、問題はどんどん先送りにされる。

日本マイクロソフト Cloud & AI プラットフォーム統括本部 統括本部長 業務執行役員 藤井 仁志氏

 2018年に警告されていた2025年の崖だが、実際に2025年になってもレガシーマイグレーションの課題は解決していない。昨年発表された経産省のレポートでは、今も74%の大企業がレガシーシステムを使い続けているという。この状況を藤井氏は「低位安定」と呼ぶ。日本ではシステムがITベンダーに依存しているため、チャレンジよりも低リスクで長期安定したビジネスを指向してしまう。経営者もコミットしないため、問題はどんどん先送りされている。

 こうした状況を打破し、2025年の崖を超えるのに有効なツールと考えられているのが、生成AIだ。従来、手作業・人海戦術でやっていたレガシーマイグレーションの作業だったが、生成AIを利用すれば、現時点でもプログラムの分析や関連図の作成、ドキュメントの生成・要約、コーディング、障害分析などが可能になる。

 一方で、進化途中の機能も多い。ミドルウェアの構築や文字コードやソースコードの変換はまだまだ高精度とは言えない領域だという。藤井氏は、「文字コードやソースコード変換は100%に近づけないとなかなか使えない。システム自体も大きいので、1%が何万行にも及んでしまう」と指摘しつつ、「ただ、技術は進化し、品質や生産性も確実に向上している」とアピール。生成AIの利活用でレガシーシステムの課題にチャレンジしてほしいと参加者にエールを送った。

GitHub Copilotでレガシーシステムをモダナイズ

 「GitHub Copilot Quest:Hack the Legacy」は文字通り、GitHub Copilotを用いてレガシーシステムをモダナイズしようというハッカソンイベントになる。当日の午前中にお題が発表され、チームごとに試行錯誤した後、夕方16時から各社の発表と講評が行なわれた。

 今回ハッカソンに参加したのは、NECソリューションイノベータ、NTTデータグループ、野村総合研究所、日立製作所、富士通の5社。顔ぶれを見ればわかるとおり、日本で一番レガシーシステムに対峙してきた5社と言えるかもしれない。とはいえ、参加メンバーの多くはレガシーシステムを知らない若手メンバー。そして、若者たちのチャレンジを長らくレガシーマイグレーションと戦ってきたベテランが講評する。この世代間ギャップもこのイベントの興味深いところだ。

GitHub Copilot Quest:Hack the Legacyのコメンテーターの面々

 モダナイズの対象は、Java EE(J2EE)と.NET Frameworkの2つ。前者は20年以上前にリリースされたJ2SE 5.0を用いた書店販売管理システム、後者は.NET Framework 4.8、ASP.NET MVCなどを用いたミュージックストアで、いずれかをGitHub Copilotで最新環境にモダナイズするのが今回の課題だった。汎用機やメインフレームで動くCOBOLやPL/1ほど古くはないが、15~20年前のレガシーシステムに違いない。

 16時から始まったプレゼンの模様は、記事やYouTubeをチェックしてもらうとして、ここではトータルでのプレゼンの感想をお伝えしたい(関連記事:レガシーアプリをGitHub Copilotでハックせよ! 若手SIerらがモダナイゼーションチャレンジ)。

・GitHub Copilotにどこまでお願いするか?

今回のハッカソンの大きな目的は、GitHub CopilotというAIコーディングツールが、レガシーマイグレーションをどこまで効率化できるかをエンジニア自らが体験することだ。その点、今回は若手メンバーの多いこともあり、実に意欲的にGitHub Copilotを活用していた印象だ。アプリ解析や改善案の提案、移行手順の策定などはもちろん、SQLの書き直し(NRI)、分担した作業のマージ(富士通)など、さまざまなタスクをGitHub Copilotに試してもらっていた。

面白かったのは、全員扱ったことのない.NETをあえて選択し、GitHub Copilotを使いながら理解を深めたNTTデータグループのチームだ。同チームは、GitHub Copilotをドライバー、人間がナビゲーターを務めるという役割分担で、環境構築から現行仕様の把握、設計書作成、新しい技術スタックの適用、イシュー作成、プルリク・コミット、レビューに至るまで、ほぼ全面的にGitHub Copilotを採用していた。.NET自体の理解不足やGitHub Copilotが生成したコードのレビューなどに課題はあったものの、未知の技術に対してAIコーディングツールが有効であることを証明したチャレンジだったと思う。

全員扱ったことのない.NETを選択したNTTデータグループのメンバーたち

・30日が4時間に 恐ろしいほどの時短を体感

ハッカソンにおける技術要素の更新で、GitHub Copilotはどれだけの効果を発揮できたのか? その時短効果を検証したのが、日立製作所のチームだ。同チームがGitHub Copilotでフェーズ分けを行なった結果、ビルドシステムの移行、Java 5から21へのアップグレード、ライブラリの更新とセキュリティの修正、Hibernateのバージョンアップ、StrutsからSpring MVC、Spring Bootと最新化まで全5フェーズ、30~43日かかることがわかったという。

しかし、今回のハッカソンでは、4フェーズの途中までではあるが、 午前中に始めてなんと255分(4時間15分)で実現した。驚異的な時短効果はもちろんだが、これをメーカーであるマイクロソフトではなく、ベンダーである日立製作所のメンバーが実現しているというのが、大きなインパクトであると感じられた。

日立製作所のチームが工程管理を実施したところ、なんと30日が4時間に短縮された

・顧客課題の想定にシステムインテグレーターの矜恃を見た

今回の課題はJavaと.NETの両案件とも、レガシーシステムのみが用意されており、顧客の設定情報は提供されていない。技術要素を更新するというテーマに則って考えれば、顧客の設定は不要と言えば不要だ。しかし、「顧客はなぜこのレガシーシステムをマイグレーションしたいのか?」を掘り下げたチームもあった。

Javaの書店システムのモダナイズを進めたNECソリューションイノベータのチームは、顧客の課題とニーズを「システムが書店ごとに設置されており、在庫やオペレーションが重複し、店舗数の増減に対応できないため、統合して効率化したい」と想定。クラウド化と統合を目標に据えた。また、モダナイズに関しても、アーキテクチャ・開発プロセスのモダナイズ、提供機能のモダナイズに分けた。日立製作所も同様の顧客設定を行なっていたが、短い時間でありながら、顧客課題をきちんと設定しているところにシステムインテグレーターとしての矜恃を見た。

短時間ながら顧客の課題とニーズに向き合ったNECソリューションイノベータチーム

・「初めまして」からハッカソンへ チームビルディングすごい

今回参加した5チームだが、プレゼンを聞いてみると、ほとんどのチームが実は初顔合わせだった。同じ社内とは言え、初めてのメンバーでその日の朝に集まり、成果物を作って、夕方に発表を行なうのである。考えてみてほしいが、けっこうすごいことだ。エンジニアとしてのバックグラウンドや共通認識があるからこそ、ハッカソンという未知のイベントでも楽しく、ワイワイできる。エンジニアならではの資質だと思う。

また、今回のハッカソンの目標を「チームで仲良くなる」「楽しくやる」に置いているところも多かった。「リモートワークメインなので、普段会わないメンバーと話しながらテーマに挑めたのは楽しかった」(NRI)、「昼休憩のときは作業を完全に止め、雑談することでメンバーの関係性を強化した」(NTTデータ)などのコメントもあった。YouTube配信はあるものの、順位が付けられるわけでもなく、とにかく与えられた課題に専念できるという貴重な機会をしっかり楽しむことができていたのではないか。

チームで楽しくやるというゴールを設定したNRIのチーム。ハッカソンをしっかり堪能している

・コードやドキュメントでAIの効果実感 課題はレビュー

各チームともコードやドキュメント生成などでAIの効果は十分実感したようだが、課題はレビューだ。「レビューは大変なので、品質をどのように担保していくのかはテーマ」(NECソリューションイノベータ)、「ただ動くものを作るだけではなく、アカウントで使える文字数や文字コードなどをきちんと移行できているのか、まだ人の目でやらないと難しいのかなと思った」(富士通)などの声が印象深かった。

なかでもNTTデータの「GitHub Copilotのコードレビューを利用してみたが、200~300行が削除された後に、3000行が追加されて、レビューまで行なわれると、もはや訳がわからない。これからはレビューではなく、テストで品質保証をしていく時代なのかなという示唆を得られてすごくよかった」というコメントは面白かった。今後の課題と展望を見据えた感想だと思った。

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