宇宙ではむしろ頑丈になる「木」
住友林業は京都大学と共同で、2020年より木材の宇宙空間での利用を目指した研究をスタートさせた。2024年には、世界初の木造人工衛星が地球周回軌道に投入されている。
木に「燃えるもの」「弱いもの」というイメージを持つ人も多いかもしれない。だが、木は宇宙空間において、むしろ強くなる。なぜかというと、宇宙空間には、空気も、水もなく、微生物も存在しないため、木の「変形する」「燃える」「腐る」というデメリットが排除されるからである。
人工衛星に木材を使うメリットは、これだけにとどまらない。
国際ルールでは、宇宙空間で役目を終えた小型の人工衛星は、スペースデブリ化を防ぐするため、大気圏に再突入させ、燃焼させることになっている。
だが多くの人工衛星は金属性であり、燃焼の際に「アルミナ粒子」と呼ばれる微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性が指摘されてきた。木材は大気圏再突入で“燃え尽きる”ため、環境負荷を低減できる可能性があるというのだ。
さらに、木材は電磁波や磁気波を透過するため、通常の衛星では外に据え付けるアンテナなどを内部に設置できる。これは衛星の構造を簡素化することにつながる。
意外にも“宇宙向き”な素材、木。
「木」と向き合いすぎた人たちの日常
「職業病」という言葉がある。住友林業社員の「職業病」はユニークだ。
住友林業の社員は、木材を見ると樹種や塗装を確認し、無垢か突板(表面に薄く削いだ木材を接着したもの)かまでを気にし、無意識に触ったり、軽く叩いて音を確かめたりすることが少なくないのだという。
本物か偽物か、迷えば凹凸を指でなぞって確認する。中にはルーペを持ち歩き、印刷のドットを探して真贋を判断する人もいる。
山を歩く際には樹木の根を踏まぬよう配慮し、大きな木を見れば、樹齢や炭素固定量を推測する。さらにはスギやヒノキ、マツの分布から地形や地質を読み取る。「尾根マツ谷スギ中ヒノキ」といって、マツは尾根に、スギは谷に、ヒノキは中腹に植わっている(植えるのに適している)らしい。
人間は「木」と一緒に生きている
江戸時代の鉱山から、現代のオフィスに至るまで。そして医療から宇宙に至るまで。長い時間の中で、広い分野の中で、私たちは木に関わっている。いや、木は私たちに関わってくれている。
周辺を見渡してみよう。必ず「木でできた何か」「木に関係する何か」が見つかるはずだ。木と人間の旅はまだまだ続くようである。









