主要先進国と比較して低い水準で推移している日本の“労働生産性”。日本生産性本部は、2024年の「日本の時間あたり労働生産性」は60.1ドルで、OECD(経済協力開発機構)加盟38か国中28位だったと公表した。前年の26位から順位を落とす結果であり、人手不足を背景に就業者が増加したものの、それに見合うほど経済が拡大しなかったことが要因である。
公益財団法人である日本生産性本部は、2025年12月25日、2025年度で4回目となる「生産性シンポジウム」を開催。今回のテーマは「労働生産性の国際比較」だ。2025年12月下旬に公表された最新データを基に日本の生産性における課題と、それを克服するための“人材投資”の重要性について語られた。
コロナ禍を経て生産性は回復するも、賃上げが伴っていない日本
労働生産性は、就業1時間あたり、もしくは就業者1人あたりの付加価値として計算される。そして、その付加価値の国際比較では、GDP(為替の影響を取り除くために購買力平価でドル換算)が用いられる。
日本生産性本部が2025年12月22日に公表した、2024年の日本の時間あたり労働生産性は60.1ドルで、OECD加盟38か国中“28位”。また、一人あたり労働生産性は9万8344ドルで、OECD加盟38か国中“29位”となった。ともに主要先進国(G7)の中で最も低い順位である。
特に、日本の時間あたり労働生産性は、長らく19位から21位を推移してきた。それが、コロナ禍を挟む2018年から2020年にかけて28位に急落し、2023年に26位と回復していくかと思われたのが、2024年にまた28位に戻ったという現状だ。
生産性研究センターの上席研究員である木内康裕氏は、実質ベースの労働生産性上昇率が-0.6%(OECDで33位)と、4年ぶりにマイナスとなったことが順位に影響したと分析。「人手不足を背景に就業者を増やしたが、それに見合った分だけ経済が拡大しなかった」とその要因を語る。
また、日本を含むOECDの33か国は、2024年の実質労働生産性(時間あたり)が「コロナ禍前(2019年)」の水準を上回った。日本の上昇率は、OECD中22位ではあるが、主要先進国では米国に次いでいる。しかし、コロナ禍前と比べて実質「平均年収」は回復しておらず、変化量で日本を下回る主要先進国はイタリアのみだ。
「つまり、生産性は上がっているが、年収は他国ほど上がっていない。主要先進国は『生産性と同じだけ賃金が上がるわけではない』と言われるが、特に日本は顕著」(木内氏)
さらに、日本の主幹産業である製造業の一人あたり労働生産性をみると8万411ドルで、OECD35か国中20位である。全体と比べると高い順位ではあるが、「2000年にはOECD諸国でトップだった」と木内氏。ただし、製造業における国際比較はデータの関係上、為替レート換算(1ドル147.74円)であるため、円安の影響も受けている。
直近の製造業を含め、なぜ日本の生産性は低迷を続けているのか。木内氏は、マクロレベルの要因として、「イノベーションが起きなくなったこと」「新規開業や海外からの直接投資が少ないこと」「無形資産投資が少ないこと」などを挙げる。さらに、企業の視点では、「業務プロセスの非効率さ」や「デジタル人材不足」なども指摘される。木内氏は「様々な要因が複合的に組み合わさった根深い問題」だと強調する。
生産性向上の鍵となるのは、「デジタル技術の活用」だ。特に、デジタル化により付加価値を高め、製品やサービスの価格を上げていくことが重要だという。「これまで、企業が製品やサービスを改善しても価格に反映できず、生産性向上の重石となっていた。昨今は価格転嫁が普及しており、物価が上昇しつつも納得してもらえる状況にある」と木内氏。
ただ、デジタル化を推進する人材の採用・育成はハードルが高い。その解決策のひとつが、「デジタル化に必要な技術やツールを、容易かつ低価格で利用できるサービスを利用すること」(木内氏)だという。
サービスの例として挙げられたのが、日本生産性本部の「第5回 サービス大賞」で総務大臣賞を受賞したIoTプラットフォーム「SORACOM」だ。同基盤は、IoTシステムの開発・運用に必要なアプリケーションやネットワーク、デバイスをレゴブロックのように組み合わせて導入でき、「利用しやすさを追求していること」が表彰の決め手となっている。
木内氏は、「こうしたコンセプトのサービスであれば中小企業でもデジタル化のハードルが下がり、人手不足の解消や付加価値の拡大につながりやすい」と語った。














