
どの世代にも「流行語」があるものだが、若い世代の流行語は理解するのが難しい場合がある。「どうやって使うのか」と困惑することもしばしばだ。日常会話の中でふと耳にした単語が、辞書にも載っていない独特のニュアンスを帯びて飛び交うと、自分だけが時代のスピードから取り残されているような心細さすら覚える。
しかし、SNSで一気に広まり、数ヵ月で廃れていく流行語の向こうにある感情や空気感をたどることで、今の若い世代がどんな景色を見ているのかが、少しずつ輪郭を持って見えてくるかもしれない。
ギャル雑誌「egg」を運営するHJは、「egg流行語大賞2025」トップ10を発表している。2018年から始まり、今年で8年目となった毎年恒例のランキングだ。
姉妹誌「nuts」、次世代小学生ギャルメディア「KOGYARU」の専属モデルおよび読者モデルを対象にアンケートを実施。小学生から20代までのギャルコミュニティーでリアルに使われている言葉を、egg編集部独自の観点でランキング化したものだという。
このフレーズ自体はお笑いコンビ・マユリカの中谷さんのネタが元になっているが、流行のきっかけはTikTokだという
第1位の「おいらが行くしかねえな」は、お笑いコンビ・マユリカの中谷さんによる“一人ミュージカル”ネタが元になったフレーズ。独特の言い方と「駆けろ!」の歌がTikTokでバズり、eggモデルがよく使ったこともあって流行したという。
TikTokで「〇〇過ぎて、しぬぅ!!」というネットミームから流行したフレーズ「しぬ/爆死」(2位)、YouTuberの発言から広まったネットスラング「開示だな」(6位)など、ネット上の流行語から生まれた言葉も多い。
「開示」という言葉自体は知っていても、「若い世代がいつ使うのか?」ということに関しては知らない人も多いだろう
また、撮影終わりを意味する略語「さつおわ」(3位)、シール交換文化の復活から一気に広まったワード「レート高い」(7位)など、若い世代に特有のカルチャーから生まれたフレーズがランクインしているのも特徴的だ。
「レート高い」も、ビジネス用語の話ではない
企業や組織の多くがZ世代との接点を模索する中で、こうした流行語をチェックする行為は、単なる好奇心にとどまらない。自分が普段立っている文化圏とは異なる価値観や感性を知り、視野の偏りに気づくための行為でもある。
「おいらが行くしかねえな」「ゆるされへん」といった一見すると文脈の読みづらい言葉も、当事者にとっては“共通言語”として機能している。こうした語彙は意思決定の姿勢や感情表現のニュアンスと深く結びついており、若い世代がどのような場面で何を重視するのかを読み解くヒントになるかもしれない。
企業にとっても個人にとっても、こうした小さな観察を怠らないことが、環境変化の兆しをつかむうえで重要になっている。流行語は、そのための有効な入り口となるだろう。








