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どのような取引なのか

「売って借り直す」──企業による“不動産のリースバック”とは?

2025年11月11日 12時00分更新

文● 貝塚/TECH.ASCII.jp

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売って、借り直す。その意味は?

 企業の資金調達や固定費削減の手段として注目される「セールアンドリースバック」。

 聞き馴染みがない人もいるかもしれないが、大手企業でも活用される戦略的な手法だ。

 セールアンドリースバックとは、その名の通り「売って(セール)、借り直す(リースバック)」取引を指す。つまり企業が所有する不動産を一旦売却し、その後同じ場所を賃貸契約で使用し続ける仕組みだ。

 売却によって資金を手元に残しつつ、事業拠点やオフィス環境を維持できるのが特徴。主な活用目的としては、固定費削減や設備投資の原資確保、事業再構築のための資金調達が挙げられる。

どのような局面で使われるのか

 メリットは明確。売却によって資金がすぐに現金化されるため、投資や債務返済などに充てられる。またオフィスや工場の立地や従業員の環境を変えずに済むため、事業への影響を最小限に抑えられる点もこの手法の特徴だ。

 一方で、売却後は賃料を支払う必要があり、実行にあたっては、長期的なコストや契約条件の慎重な精査が重要だ。また資産の帳簿価値が減ることによる財務上の影響も考慮する必要がある。

 リースバックは、特に資金需要が高まる局面や、事業再編・再構築の場面で有効な手法になり得る。成長分野への投資や研究開発、設備更新の資金を比較的短期間で確保できるため、銀行借入のように審査や手続きに時間を要することなく、必要な資金を迅速に必要な分野へ振り向けられる点が、この手法の大きな強みだ。

 実際の事例として、日産自動車は横浜本社ビルをセールアンドリースバックで運営継続する計画を発表している。同社は20年間のリースバック契約を結び、従業員や事業運営への影響を最小限に抑えつつ、調達した資金を設備刷新や成長加速に活用する方針だ。日産の例は、戦略的な資金の確保と持続的な経営を両立させることを意図した、リースバックの典型例と言える。

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