「NDD認定制度」が正式運用開始、民間主導でインターネットを安全な場所に
ダークパターンで消費者・事業者が損をしない世界へ “誠実なWebサイト”認定制度が始動
2025年10月16日 11時00分更新
消費者を意図的に誤認・誘導させる不適切なWebサイトデザインを指す「ダークパターン」。その被害を民間主導で減らすべく、ダークパターンを用いない“誠実なWebサイト”を認定する「NDD(Non-Deceptive Design)認定制度」が遂に始動した。
同制度の運用はインターネットイニシアティブ(IIJ)を主幹とするダークパターン対策協会が担い、2025年10月15日より受付を開始している。審査対象となるのは、「クッキーバナー」「購入前最終確認画面」「組織的対策」の3領域だ。
ダークパターン対策協会の代表理事である小川晋平氏は、「子供や高齢者などがダークパターンによって被害を受け、誠実なWebサイトが同手法を駆使するサイトに負けてしまう事態が続いている。正直者がバカをみるような社会であってはならない」と強調する。
NDD認定制度の申し込みの流れ・料金・認定マークの仕様
NDD認定制度とは、ダークパターンを用いていない誠実なWebサイトであるかどうかを、第三者が客観的かつ中立的に審査し、基準を満たしたサイトに改ざん防止機能を備えた「認定マーク」を付与する制度である。
審査では、以下の3段階で厳しくチェックされる。
第1段階は「事業者による自己審査」だ。同協会が策定した「ダークパターン対策ガイドライン」に沿ったチェックシートを基に、企業自らがWebサイトを点検する。チェックシートは、2025年7月に無料公開済み。認定制度の審査項目に合わせた「審査対象編」と、審査対象以外にも推奨項目を広げた「推奨編」の2種類が用意されている。
第2段階は「認定審査機関による一次審査」だ。認定申し込み時には、記入済みのチェックシート(審査対象編)を送付する必要がある。このチェックシートに基づき、認定審査機関が、自己審査通りにWebサイトが実装されているかを確認する。
認定審査機関は、全国の適格消費者団体のうち、研修・試験に合格した認定審査員を2名以上擁する団体が担う。現時点では3団体が登録済み、1団体が手続き中だ。2025年11月に予定されている、第2回の研修・試験では、全国の地方銀行や一般企業からも認定審査員を広く募集する。
最後が「ダークパターン対策協会による最終審査」だ。同協会の企業審査局が行う審査に合格すると、晴れて認定マークが付与される。
なお、一次審査・最終審査で疑義があった場合は、是正措置が求められ、20営業日以内に是正すれば合格となる。不合格の場合にも、再審査料を支払えば何度でも申請が可能だ。
認定の有効期限は1年間で、年次での更新が必要となる。認定取得から10か月を過ぎたら更新の審査が受けられ、つど更新審査料が発生する。
審査費用は、対象とする認定範囲や、大企業か中小企業(資本金1億円以下の企業)かで異なる。申し込みは、クッキーバナーはスクリプト単位、購入前最終確認画面はドメイン単位となり、4つ以上の申し込みは割引を考慮した別途見積りとなる。
【審査費用一覧】
■クッキーバナー(1万ページ未満のWebサイト)
初回更新料:17万1000円(大企業) / 5万7000円(中小企業)
再審査料:10万8000円(大企業) / 3万6000円(中小企業)
更新審査料:14万4000円(大企業) / 4万8000円(中小企業)
■クッキーバナー(1万ページ以上のWebサイト)
初回更新料:24万3000円(大企業) / 8万1000円(中小企業)
再審査料:16万2000円(大企業) / 5万4000円(中小企業)
更新審査料:21万6000円(大企業) / 7万2000円(中小企業)
■購入前最終確認画面
初回更新料:15万3000円(大企業) / 5万1000円(中小企業)
再審査料:9万円(大企業) / 3万円(中小企業)
更新審査料:10万8000円(大企業) / 3万6000円(中小企業)
■組織的対策
初回更新料:9万円(大企業) / 3万円(中小企業)
再審査料:5万4000円(大企業) / 1万8000円(中小企業)
更新審査料:7万2000円(大企業) / 2万4000円(中小企業)
■NDD認定審査:申し込みページ
https://www.ndda.net/ndd-accreditation-application/
例えば中小企業が、「クッキーバナー(1万ページ未満)」「購入前最終確認画面」「組織的対策」を申し込む場合には、初回審査料は13万8000円(5万7000円+5万1000円+3万円)となる。なお、審査の合格後には、登録料が発生する(大企業で3万6000円、中小企業で1万2000円)。
審査の合格後には、協会から「NDD認定マーク」について案内される。認定マークは、3種類の認定範囲を示すアイコンとの組み合わせで、Webサイト上の該当箇所に表示が可能だ。認定マークは、初年度はブロンズ、2年目はシルバー、3年目以降はゴールドと、保有する時間が多いほど色が変わる。
また、Webサイト上の認定マークをクリックすると、認定番号・認定範囲・ダークパターンの疑義がある際の窓口といった詳細情報がポップアップされるか、該当情報ページに遷移する。これらの情報は協会側サーバーから呼び出され、認定マークが改ざんしにくい仕様となっている。
NDD認定マークの掲載がサイトデザインを害する懸念がある場合は、マークの表示なしでテキストリンクで情報ページに遷移させることも可能だ。認定マーク(アイコンなしバージョン)やテキストリンクは、Webサイトのトップページやフッターに表示することもできる。
ダークパターンを収集・分析する「消費者ホットライン」の進捗
また、ダークパターン対策協会では、2025年7月15日より、消費者が悪質と感じたダークパターンの情報を集める「ダークパターン・ホットライン」の運用も開始している。集められた情報は、同協会が分析し、3か月に一度、統計情報を公開して注意喚起を促す。明らかな法令違反に関しては行政機関へ通報し、新手法などはガイドラインに反映していく。
運用開始後、3か月時点では、60件超の情報が寄せられているという。通報の傾向として、約30%が、解約やキャンセル方法が分かりにくかったり、明記されていない「解約しづらい設計」。約20%が、価格や条件が見つけにくかったり、商品がカートに自動追加されるといった「購入前最終確認画面での誘導」となっている。第1回統計レポートは、11月中旬に公開予定だ。

















