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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第59回

東映アニメーション 平山理志プロデューサーインタビュー

『劇場版総集編 ガールズバンドクライ』平山理志Pが語る TVアニメ終了後もファンを純増させた仕掛け

2025年10月21日 15時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●ASCII/村山剛史

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「楽しいという気持ちを友達に伝えることでクチコミの輪が広がっていき、作品をより多くの方に楽しんでいただける。そのプラスの循環が働くのかなと思っています」(平山氏)

「聖地づくり」はライブと同じくらい重要
リアルな場が「友達」を作る

―― 「あの席に座りたい」というのは、実際にある場所だからできることですよね。川崎を舞台にしたとき、そこまでの聖地人気は想定されていましたか?

平山 盛り上がりは予想以上でしたが、僕たちは「聖地づくり」も最初から、ライブと聖地は両輪というレベルで全力でやっています。

―― ライブと同じレベルでですか!

平山 はい。聖地を作ることによって、まずお客様が行くことで、登場人物がここで暮らしているのだと実感できます。そして、同じ空間にいられることで作品をより好きになってくださいます。その結果、お客様も現地の方も、僕らもうれしい。誰も損をしないし、すごく良い循環になっています。

 「お客様が行けるリアルの場」をライブと聖地の両方に設定したのは、お客様が作品に愛着を持ってくださるだけではなくて、友達が作れるからなのです。

―― 友達、ですか。

平山 現地に行って楽しかったら、「ここ楽しかったよ!」とSNSやブログに投稿したり、友達を連れてきてくれたりします。そして友達と一緒に行くことで、その友達も作品を知って好きになってくれたり。

 ライブでもイベントでも、行った先で知り合いができて友達になって、その友達に会うために次のライブや聖地にまた行く、という感じで友達の輪がどんどん広がっていきます。

 ファンの方の投稿を見てると、ライブやイベントの後には、「みんなで飲み会行きました!」という写真がドバーッと上がってくるのです。

―― 現地で友達ができるんですね。

平山 友達ってやっぱりすごく大事だなと。社会人になると友達を作るのが難しくなりますが、ライブや聖地巡礼に行くと「この作品が好き」という共通項があるので、友達を作るハードルがちょっと低くなると言いますか。その人の属性とか一切無視して、「この作品が好き」だけでつながりますよね。

 「友達になってうれしい」とかSNSとかブログに書かれていると、「ああ、皆様のお役に立ててよかった、楽しく日々を過ごせる場ができているのかな」と思いますね。

―― もしかしたら、友達と楽しむことで結果的に作品への「クチコミ」が増えていく、という状況が発生している?

平山 そうですね。リアルな場で盛り上がるという楽しみ方は、いずれ「友達」の存在と結びつくのかなと。日々の生活がより楽しくなりますし、そこから『ガルクラ』にもつながってもらえれば。

『ガルクラ』公式Xアカウントのフォロワー数は2025年10月現在、約23.1万フォロワー。TVアニメ放送時の倍以上に増えている

「クチコミ」というブーストは
いつでも入れる環境があってこそ効いてくる

―― 『ガルクラ』では、映像、楽曲やドラマCD、各種グッズなどがありつつ、実際に行けるライブや聖地といったリアルの場もあることで、友達ができてクチコミの輪も大きく広がった、と。それは最終的にフォロワー20万人超えという結果にもつながっていそうです。

平山 結局、クチコミが強いのだなと思いました。SNSでの評判もありますが、見知らぬ人からのオススメよりも、友達からの「面白かったよ」という言葉のほうが響くじゃないですか。それが一番のクチコミだと思います。

―― クチコミってそんなに大事だったのですね。

平山 そう思います。『国宝』が大ヒットしているのも、『侍タイムスリッパー』が大ヒットしたのも作品が優れているのは大前提としてそのうえで、クチコミの力が大きいと思います。

 集まったファンの方々に楽しんでいただいて、「面白かった」と友達に伝えたい、広めたいという気持ちになってくださる。そこからクチコミがぶわっと広がると、たとえオリジナル作品であっても、だんだんお客様に見てもらえるようになるのかなと。そこまでが大変なのですけれども。

 クチコミにつなげるためには、友達から勧められたときに、その場ですぐに見ていただけるように、コンテンツのラインナップを揃えて、その人が好きなものを選べるようにする、そうした環境作りが大事だと思います。

―― なるほど! リアルの場を作るのも、間口を広くすることも、全部クチコミにつながっているのですね!

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