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渡辺由美子の「誰がためにアニメは生まれる」 第59回

東映アニメーション 平山理志プロデューサーインタビュー

『劇場版総集編 ガールズバンドクライ』平山理志Pが語る TVアニメ終了後もファンを純増させた仕掛け

2025年10月21日 15時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●ASCII/村山剛史

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音楽アニメには映画が向いている

―― その「完全新作映画」についてですが、TVシリーズ第2期ではなく「映画」にした理由は?

平山 映画ならではのメリットとしては、音響にこだわることができたり、尺が短い分やりたいことが絞られるため、結果的に濃密な映像体験を提供できます。それに『ガルクラ』はライブシーンが多いので、「映画館でのイベント的な映像」にも向いているのではと考えました。

まずは「パシフィコ横浜」を目指した理由

―― キャストも務めたバンド「トゲナシトゲアリ」のライブも大人気になり、ついに武道館まで行きました。

平山 最初は武道館なんてとても想像もつきませんでした……。「CGの」「オリジナル」アニメという、業界の通説では当たらない要素のほうが多く、ゼロどころかマイナスからのスタートでしたので。

 そのなかで僕が個人的に指標としたのがキャパ4000人の「パシフィコ横浜」。なぜなら、このクラスに行けなかったらビジネスとしてそもそも厳しいからです。でも、もしそこまでたどり着けたら次のステージも見えてくるのではと。

 なによりキャストを兼任するバンド「トゲナシトゲアリ」のみなさんは人生を賭けてくださっています。我々はそれに対してお返しをしなければいけませんから。結果、パシフィコ横浜から武道館につながり本当に良かったです。

 活動をお休みされていた、すばる役の美怜さん、智役の凪都さんもアフレコに復帰して、シングルCDのドラマパート(10th Single「ダレモ」5月28日発売、11th Single「薄采ディスプレイ」9月24日発売)で、すばると智が主役の回を元気に演じてくださっています。こちらもお客様の反響が大きいですね。

同名バンドがCVも務める異例の体制で話題を呼んだ「トゲナシトゲアリ」。2025年9月には待望の武道館ライブを成功させた

間口は広く、敷居は低く
継続することでファンも増えていく

―― 不思議だったのが、Xのフォロワー数です。TVアニメ最終回時に10万人だったのが、現在(2025年10月)は20万人以上になっています。新作アニメがない状態で、どうして10万人以上も増えたと思いますか?

平山 まずは第一に、TVアニメをたくさんのお客様が評価してくださり、その評価を聞いたたくさんの方々が後追いでTVアニメを見てくださり新しくファンになってくれた、ということが大きいです。

 そのうえでライブや新曲、CDドラマ、グッズなどをリリースすることで、お客様に色々な形で作品を楽しんでいただける環境を継続的に提供できたからかなと。たくさんの「間口」を用意しておくことも大事だと思っています。

―― 「継続」とたくさんの「間口」ですか。

平山 はい。お客様が何を好きになって、いつ入ってきても大丈夫なようにベースとなるTVアニメを全方位で配信することと並行してライブのほか、音楽配信やドラマCD、グッズなど間口を広く取りました。「全部深く」も歓迎ですし、「新規で後から」でも大丈夫、というつくりになっています。

 継続して良かったなと思ったのは、今年リリースした新曲「ダレモ」では、各音楽配信サイトの再生数がTVアニメ放送時の再生数より多かったことです! これはTVアニメ以降もアニメやトゲナシトゲアリのファンが増え続けているという証なので。

―― 後追いができるからこそ、新規ファンが増えるということですね。

平山 はい。そしてアニメや楽曲などが揃っていると、友達にも勧めやすいですよね。Xのフォロワー数や配信の再生数も、お客様からの「クチコミ」で広がっていったようなので、やはり環境づくりが大事なのだと思います。

聖地で「あの席に座りたい!」
川崎に海外ファンまで来てくれた

―― 『ガルクラ』の舞台、川崎市の聖地巡礼の状況を教えてください。以前のインタビューでは、川崎に決めた理由の1つとして「羽田空港に近い」という点を挙げられていましたが。

平山 羽田空港に近いという効果は十分あったと思います。日本全国に加えて、海外からの方々も多く、川崎市役所の方から「海外からもこんなにお客様が来てくれるとは思っていなかった。すごくうれしい」とうかがいました。これまでは観光といえば東京か横浜で、川崎は素通りという状況もあったようで。

 僕が以前プロデュースした『ラブライブ!サンシャイン!!』でも、作品舞台の静岡県沼津市に、静岡空港から海外からのお客様が多数お越しになって沼津市の方が驚かれるということが起きたのですけれど、今『ガルクラ』でも川崎で同様の現象が起きていて、地元の方が喜んでくださっているのがすごくうれしいです。

―― 人気の聖地はありますか?

平山 「吉野家 川崎西口店」さんや「島村楽器 ラゾーナ川崎店」さんからお客様が増えたお話をうかがっています。「矢向湯」さんからは、「イギリスからお風呂に入りに来てくださった」と喜びのメールをいただきました。

 それから居酒屋の「登利亭」さんでは、作中で仁菜たちが座っていた席が人気で「あそこの席空いてますか?」と指定席みたいに電話で問い合わせが来て土日は予約でいっぱいになることがよくあるそうです。「丸福珈琲店 川崎アゼリア店」さんもお客さんが「あの席に座りたい」というリクエストが多いとか。

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