
「ほとんど紙は使わない」はわずか16.6%
電子帳簿保存法対応やインボイス制度などを背景に、企業の書類業務のデジタル化は加速している。一方で、紙やFAXを使用する現場も多く、ペーパーレス化の実態は部門や職種によって差が生じている。
クリエイティブバンクは、全国の会社員および経営者1061名を対象に「書類のデジタル化」と「AI-OCRのニーズ」に関するアンケート調査を実施し、その結果を10月1日に公表した。
調査によれば、職場での紙利用の実態としては、「郵送での請求書・契約書のやり取り」が48.1%と最多。「紙の申込書・申請書」(39.2%)、「FAXでの送受信」(35.8%)も多く挙げられた。一方で「ほとんど紙は使わない」と答えた割合は16.6%だった。
「どのような紙書類やFAXのやり取りがあるか」(クリエイティブバンクの調査より)
紙やFAXを使い続ける背景には、取引先や顧客がそれを求めるといった外部要因が大きく影響しているようだ。それでは、AI-OCRなど文字の自動読み取り&データ化システムの導入状況はどうなっているのだろうか。
経営企画部門では満足度が高いが
レイアウトのエラー、システム連携の難しさが課題に
前述の調査によると、AI-OCRなど文字を自動的に読み取りデータ化するシステムを「利用している」は全体の38.3%にとどまり、「利用していない」は46.2%となっている。
活用されている分野は、「契約書関連」が51.0%ともっとも多く、次いで「請求書関連」が39.2%と、法務・経理領域での活用が目立つ。一方、医療や物流関連の帳票では1割程度にとどまっている。
「AI-OCRなどの利用について」(クリエイティブバンクの調査より)
AI-OCRを利用している人の評価をみると、経営企画部門では「非常に満足している」と答えた割合が36.4%と高く、管理部門や物流・運営部門でも満足度は比較的高い。営業やマーケティング部門では「まあ満足している」が多く、導入効果に強い満足には至っていないようだ。
導入による効果としては、誤入力の減少や精度向上といった品質改善(48.8%)、処理スピードの向上による業務効率化(47.3%)が半数近くの回答者から挙げられた。「働き方改善」(34.7%)、「コスト削減」(33.7%)といった効果も一定数認識されている。
「AI-OCRを利用して、実感している効果」(クリエイティブバンクの調査より)
ただし、「コンプライアンス対応(電帳法やインボイス制度など)」への対応を導入の成果として実感する人は15%前後にとどまっており、制度対応に直結する効果は相対的に低いようだ。
一方で、AI-OCRの課題としてもっとも多く指摘されたのは「書式/レイアウトのエラー」(38.7%)であり、「システム連携が難しい」(31.8%)や「認識精度の不足」(28.8%)といった技術的課題も目立つ。
「AI-OCRを利用して感じる課題」(クリエイティブバンクの調査より)
導入していない理由としては、「必要な業務がない」(26.3%)、あるいはそもそも存在を知らなかった(24.7%)といった回答が多い。
「AI-OCRを導入していない理由」(クリエイティブバンクの調査より)
業務文書のデジタル化が進みつつも
その浸透には部門によって大きな差がある
AI-OCRの導入は一部の部門では高く評価されているものの、全体としては特定の業務領域にとどまり、書式対応やシステム連携、さらには社外との商習慣が普及の妨げとなっているようだ。
また、AI-OCRを「知らなかった」と答える人が一定数存在することは、今後の普及において認知拡大が課題であることを示唆している。
企業のペーパーレス化に向けては、幅広いフォーマットへの対応や、既存システムとの連携強化に加え、外部との調整も含めた運用支援も求められるだろう。








