久しぶりに秋葉原で友人とランチした帰り、いつもの回遊コースで立ち寄った中古ショップ「イオシス」の店頭に、京セラのタフスマホ「TORQUE G04」のブラックモデルが5980円で並んでいた。2019年8月30日の発売から丸6年以上が経過した機種であり、今や“レガシー”と呼んでもよい世代だ。
だが、店頭で手にした瞬間、昨今の薄くシャープで冷たい手触りのスマホとは異なる、柔らかく持ちやすい感覚が新鮮だった。一時使っていたバルミューダフォンの「手になじむ不思議な感触」を思い出す。気がつけばサンプル横のタグを握りしめ、そのままレジへ直行していた。6年前のスマホが令和7年の今どこまで使えるかを体感してみたい。
OSの更新はAndroid 10で止まっている
バッテリーは2940mAhで小さいが、バランスとしては悪くない
TORQUE G04のOSはAndroid 10で打ち止めだ。セキュリティアップデートもすでに終了しており、長期利用には一定のリスクがともなう。アプリの一部はインストールできず、今後はさらに互換性が低下する可能性が高い。一方で、普段使いでSNSやブラウジング、ちょっとしたゲームを楽しむ分にはさほど不便さを感じなかった。筆者のようにYouTubeを一日中流すわけでもないだろうから、致命的な遅さに悩まされる場面は少ないはずだ
内蔵バッテリーは2940mAh。2025年の基準で見れば控えめな容量だが、200gの筐体に収まるバランスとしては悪くない。実測ではアンカー製充電器を使い、「シンプルバッテリーグラフ」で確認したところフル充電にかかった時間は約2時間5分。公式発表の約170分よりも健闘している。急速充電非対応ゆえ「朝の準備時間にサクッと50%充電」という使い方は難しいが、丸1日ヘビーに使わなければ十分に耐えられる。予備にモバイルバッテリーを持っておけば不安も解消されるだろう。
おなじみタフな筐体は懐かしさを感じさせる
SIMロックは解除済み ドコモ系SIMでも使える
手に持つと200gの実測値。筆者のメイン機であるGalaxy Z Fold 7(PITAKA製ケース装着済)と比較すると、たった40gの差しかない。数字以上に軽く感じるのは、外装が丸みを帯び、ソフトな持ち心地だからだろう。背面カバーを外してバッテリーを取り出し、その下にSIMカードを差し込む……この体験自体が懐かしく、思わず「スマホはこういう道具だった」と原点を思い出した。
本来はau専売モデルだが、試しに日本通信SIMを挿入してみると「コード900」と表示され、SIMロックは既に解除済み。すぐにLTEで通信できた。IIJmioのエントリーパック(初期費用無料キャンペーン利用)を申し込み中だが、暫定的にはこれでWAN環境を確保できた。6年前の端末でありながら、日常のネットワーク利用には十分対応できるのは正直驚きだ。
さらに特筆すべきは、おサイフケータイ機能の存在。FeliCaを搭載しており、交通系ICやキャッシュレス決済が普通に使える。加えてNFC対応ゆえ、マイナンバーカード認証なども可能。グローバル端末では省かれがちな機能が、この価格で揃っている点は今もって優秀だと言える。
IIJmioのSIMが届けば、本格的にTORQUE G04を“第二のスマホ”として活用する予定である。特に気に入ったのは、本体左側の「ダイレクトボタン」。ここにChatGPTアプリを割り当てることで、長押し一発でAIを呼び出す「2025年版AIスマホ」へと変貌を遂げた。発売当時の開発者は想像もしなかった未来の使い方だろう。
柔らかく手になじむTORQUE G04には温もりがあった
結論として……もしもの場合の保険を含めると総額で32万円近い出費となるGalaxy Z Fold 7に比べ、TORQUE G04の5980円は桁違いに安い。だが、“スマホという道具”として冷静に比べれば、50倍以上の価値がそこにあるとは到底思えない。
むしろ角ばってシャープさを競う現代スマホとは違い、柔らかく手になじむTORQUE G04には「握っていたい」と思わせる温もりがある。まるで、車のデザインが鋭さを追求して人の手触りから遠ざかっていくのと対照的に、このスマホは人の手のために作られた道具だと実感できるのだ。
5980円で得られたのは、性能やスペック以上に人と道具の関係性を再発見できた体験だった。最新機種だけがスマホの価値ではない……そう感じさせてくれるTORQUE G04は、レガシーであるがゆえに幸福感をもたらす特別な存在である。

今回の衝動買い
・京セラ/au「TORQUE G04」
・購入元 秋葉原・イオシス
・価格 5980円
T教授
日本IBMでThinkPadのブランド戦略や製品企画を担当。国立大芸術文化学部教授に転職するも1年で迷走。現在はパートタイマーで、熱中小学校 用務員。「他力創発」をエンジンとする「Thinking Power Project」の商品企画員であり、衝動買いの達人。

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