AIエージェントを含む3つの新サービス、26億円の資金調達も発表
生成AIの検索でえこひいきはなぜ起こる? Helpfeelが企業のナレッジ整備を提言
2025年08月28日 10時30分更新
「ChatGPTで商品を検索すると、FAQサイトが整備されているブランドの方がリコメンドされる」。こう語るのは、企業向けの検索サービスを展開するHelpfeelの代表取締役 CEO洛西一周氏だ。2025年8月27日に開催された事業戦略説明会では、生成AIを前提に顧客の自己解決を促す企業サイトのあり方や、それを実現する同社のサービスについて説明が行なわれた。
新たに26億円を調達 「AIナレッジデータプラットフォーム」を本格展開へ
Helpfeelは2007年に創業者で現・代表取締役 CEO洛西一周氏がシリコンバレーで創業したNotaを前身とする。スクリーンショット共有サービスの「Gyazo」や社内Wikipediaのように利用できるナレッジツール「Cosense」に加え、2019年にナレッジ検索サービス「Helpfeel」を発表。2020年に日本法人を設立し、FAQやヘルプデスクなどの「自己解決チャネル」を構築し、企業の課題解決を支援しているという。
主力サービスのHelpfeelは特許技術の「意図予測検索」により、表現のゆれやあいまい検索に対応し、ユーザーが自己解決できる環境の構築を実現。カスタマーサポートや社内FAQなど、幅広い業界・業種の700サイト以上で利用されている。現在は生成AIからの利用に最適化された「AIナレッジデータプラットフォーム」を標榜しており、前年度比70%超えの高い成長率を記録している。
今回はグローバル・ブレインとSMBCベンチャーキャピタル、JPEGインベストメントを投資家とした第三者割当増資により、総額26億円の資金調達を実施したことも発表された。累計の調達額は59億円。開発体制の強化を進めていくという。
ChatGPTで調べると明らかにリコメンドされるブランドがやっていること
事業戦略発表会に登壇した洛西氏は冒頭、生成AIについておさらい。機械学習を中心とした第3次AIブームから切れ目なく生成AIによる第4次AIブームが訪れたことで、「IT業界のすべてのレイヤーで入れ替えが起こる」と指摘。「業務を補助する時代」から、「業務を代替する時代」へ、そして「PoCの時代」からいよいよ「成果を出す時代」へシフトしているとアピールした。
生成AIによる検索が当たり前となる時代を迎え、洛西氏が企業側の課題として指摘したのは、その情報ソースと言える企業サイトやFAQが整備されてないという現状だ。
LLMは回答を生成するために企業サイトとFAQを参照することが多い。そのため、企業は生成AIに収集される最新の正しい情報をFAQとして公開する必要があるという。実際、ChatGPTで環境に優しい化粧品を探した場合、HelpfeelでFAQサイトを構築したブランド(ここではLUSH JAPAN)の方が未導入のブランドに比べて明らかにリコメンドされるという。
しかし、ユーザーの知りたい回答コンテンツを提供している企業は少ない。これは「ドキュメント作成に時間がかかり、データ蓄積や統制の仕組みが難しい」「ドキュメントを読む解く専門家、素人を想定したドキュメントを書ける人がいない」「聞きたいことを言語化できず、情報が見つからない」「知識と情報をもって意思判断するためには経験や訓練が必要」などの課題があるという。
「答えるAI」から「解決するAI」へ 3つのサービスが顧客の自己解決を促進
今回新たに発表されたのは、AIエージェントの「Helpfeel Agent Mode」、問い合わせ管理を実現する「Helpfeel Support」、音声とメールの対応を分析する「Helpfeel Analystics」の3つのサービス。「AIナレッジデータプラットフォーム」の実現に向け、自己解決チャネルの体験を進化させ、顧客体験をさらに高めるために投入されたという。
1つ目のHelpfeel Agent Modeは対話型UIにより顧客の真のニーズにもどづいた回答を掲示するAIエージェント。自然な言葉で疑問や要望を入力すると、意図を汲み取り、複数ページを回遊することかなく、回答を提示。確かな根拠を持つ情報には「信頼できる回答」のアイコンを表示するという。また、対話の回答内に地図やフォーム、購買サイト、予約機能などを埋め込むことで、課題をワンストップで解決。顧客体験を「答えを見つける」段階から「課題を解決する」段階へと進化させることが可能になるという。提供開始は2025年10月の予定。
2つ目のHelpfeel Supportは、これまで有人対応が必要だったカスタマーサポート業務を自動化するAI。フォームに問い合わせが入ると、チケット化、内容の分類、担当者の振り分け、返信のドラフト作成までを一気通貫で行なう。オペレーターはAIが用意した内容を確認・送信するだけで初期対応を完了できる。対話履歴からFAQの改善点を抽出し、自己解決を促すコンテンツを作り、問い合わせ件数自体を減らすというサイクルを生み出すことも可能になるという。こちらは2025年10月にクローズドβ版が提供される。
3つ目のHelpfeel Analyticsはカスタマーサポートに寄せられる顧客の声(VoC)を分析する。膨大な問い合わせログをAIが自動的にグループ化(クラスタリング)し、既存のナレッジ記事と照合して改善ポイントを抽出している。たとえば、「既存の記事があるのに問い合わせ」が発生している場合は、「問い合わせ件数」や「閲覧数」などを掛け合わせて分析し、具体的な改善策を提示。記事がない場合は、類似ログを元にAIが記事のドラフトまで作成するという。本リリースは2025年12月を予定している。
発表会後半では、Helpfeelが成長している理由として、経営指標にダイレクトにインパクトを与える効果が出ている点が挙げられた。具体的な効果としては、顧客や車内の不要な問い合わせが削減したり、Web体験の改善によってデジタルネイティブ世代の取り込みに成功するといった事例が出ているとのこと。競合や内製からのリプレース率も約8割、解約率も1%未満にとどまり、売上高の増加やコスト削減といった効果を実感していることが大きいという。













