文書の改ざんを検知するタイムスタンプを圧倒的な速度と1枚5円の料金で実現
日本最速の1000文書/秒のタイムスタンプを実現する「Trustee」 生成AIのデータ改ざんに対応
2025年08月26日 16時00分更新
2025年8月26日、ウイングアーク1stは1秒で1000文書のタイムスタンプ付与を実現するデジタルトラストサービス「Trustee(トラスティ)」の提供を開始した。電子文書の偽造と改ざんを防ぎ、帳票の信頼性を担保するという。
1秒で1000文書のタイムスタンプ付与を実現
デジタルトラストサービスとは、電子取引に対して信頼と確証を高める電子サービスの総称。「電子署名」が一番知られているが、電子文書の時刻データを付与する「タイムスタンプ」、組織の正当性を確認できる「eシール」、その他、IoTデバイスの正当性証明、Webサイトの認証、送受信データの確認などもデジタルトラストサービスに含まれる。グローバルでは、2024年に975億ドルの市場規模となっているが、2032年には2292億ドルに拡大する見込みとなっている。
今回ウイングアーク1stから発表された「Trusteeタイムスタンプ」は、デジタルトラストサービス「Trustee」の第一弾で、偽造や改ざんを防ぐためのタイムスタンプをPDFに付与するクラウドサービスになる。8月8日には総務省の認定も取得。同社の帳票サービス「SVF」「invoiceAgent」と連携して利用できるほか、Trustee単体でも提供されるという。
最大の特徴は、日本最速を謳う超高速な処理速度。並列処理への最適化、楕円曲線暗号の採用に加え、サーバー内での時刻管理技術を工夫することで、1000文書/秒という超高速なタイムスタンプ付与処理を実現した。自社開発したPDFの解析エンジンの処理速度も含めて、PDF生成からタイムスタンプ付与まで一貫した高速な処理が可能になる。
また、東日本・西日本のデータセンターにシステムを冗長化することで、高い可用性を実現。低コストも意識しており、他社では1スタンプ7~10円あたりなのに対し、Trusteeでは1スタンプあたり5円を実現。帳票の出力・配信・保管・受領の全体を最適化したデジタル帳票基盤の構築を実現する。
タイムスタンプ処理の速度限界が改ざんを許容
企業での文書のデジタル化と電子帳簿保存法の施行にともない、タイムスタンプのニーズは高まっている。しかし、今まではタイムスタンプのないいわゆる「無防備PDF」に受領側でタイムスタンプを付与するのが一般的だった。しかし、原理的には改ざんしてから保存することも可能。本来はPDF作成時にタイムスタンプと署名が付与され、送り手からセキュアな状態でデータが流通させるのが理想だ。
なぜ改ざんのリスクを許容するビジネス構造になっているのか? ウイングアーク1st 取締役 執行役員CTO 島澤甲氏は、「日本に存在するタイムスタンプのサービスには速度的に限界があり、リアルタイムにタイムスタンプを押すことが不可能だったから」と語る。
通常のサービスは30秒に1回や1秒に回というサービスが一般的で、同社の調べでも処理速度の遅さがユーザー側の課題として多かった。「100万枚の文書にタイムスタンプを押すと、2秒に1回付与するサービスだと1ヶ月くらいかかる」と島澤氏は語る。そして、高速なタイムスタンプサービスがなかったため、署名の付与期限が最長2ヶ月と7日間に延長されるという電帳法の要件緩和につながってしまった。こうしたデジタル文書における理不尽な状況を打破するのが、1000文書/秒という処理が可能なTrusteeになる。
生成AIによって容易になった文書の改ざんに対応
とはいえ、「Trusteeは電帳法のために作ったわけではない」(島澤氏)という。より大きな背景には、生成AIによってデータの改ざんが容易になってきたセキュリティ要件の変化がある。たとえば、CaludeのようなAIサービスであれば、レシートの金額改ざんは不正な処理とみなされ、処理が行なえない。しかし、島澤氏が「ダークAI」と呼ぶ制御なしのAIでは、数値の改ざんが容易にできてしまう。「生成AIの登場により、改ざんの難易度が下がった。より簡単に不正が行なわれてしまう」と島澤氏は指摘する。
実際、同社の調べでは、企業間取引で扱う電子文書に関して、23.6%が「重要書類のAIによる改善に気づけない可能性があること」を懸念しているという。また、3割以上が「取引先から文書が本物かどうか疑われた」という経験があり、8割以上が「無防備PDFを問題視している」という。
こうした生成AIの不正利用で増える改ざんのリスクを防ぎ、企業で利用するにあたって十分すぎる処理速度と低廉なコストを実現した今回のTrustee。帳票のデジタル化をリードしてきたウイングアーク1stとして、安全な帳票を実現するサービスとして、自社サービスのみならず、他社サービスやユーザーシステムへの組み込みも積極的に推進していくとのこと。島澤氏は、「日本の企業はデジタルトラストへの対応が必要。日本のデジタルトラストを支えるのは私たちの使命」と語る。














