エリアLOVEWalker総編集長・玉置泰紀のアート散歩 第36回

いよいよ10月7日、京都駅東南部に新たな“芸術の名所”が誕生 チームラボ・国内最大のミュージアムがオープン

文●玉置泰紀(一般社団法人メタ観光推進機構理事)

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作品の中で筆者。
チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - Fire》© チームラボ。
ベネチアンガラス製のランプは、人がいないときは暗いままだが、人が近づくと目の前のランプが光り、その光が近くのランプに一筆書きのようにつながり、伝播して戻ってくる

 京都市が進める京都駅東南部エリアプロジェクトの一環として、京都市南区に常設アートミュージアム「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」が、10月7日にオープンすることが決定した。

 「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」は、延べ面積およそ1万平方mの空間で、国内では最大のチームラボのミュージアムになる。公式ウェブサイトでチケットの販売も開始され、オープンに先んじて8月5日、日本未発表作品を含む7作品をプレス向けに公開した。今回見られる作品は一部で、開業時にはさらに多くの作品が体験できる。

 これまでに、チームラボの多くの作品、ミュージアムに触れてきた筆者も、さっそく京都駅の南側を少し歩いたところにある新ミュージアムに駆けつけた。

チームラボ《The Eternal Universe of Words》© チームラボ。
2021年の4月25日から5月31日まで、新型コロナによる緊急事態宣言中に無観客開催した「祈り」展のためにつくった作品。無限のごとく広がる空間に永遠に書が書かれ続け、書のそれぞれの位置からその字の音が響き、それらが連なった朗唱が響き続ける

チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》© チームラボ。チームラボの工藤岳氏による説明

 内覧会では、チームラボの工藤岳氏に案内してもらった。工藤氏はチームラボ代表の猪子寿之氏と大学時代から親交があり、大道芸人としてタイやネパール、シリアなどを巡った後、スウェーデンでゲーム雑誌の会社で編集に携わり、2010年に日本に帰国し、猪子氏に誘われてチームラボに参画した人物。

 京都は、チームラボの面々も昔から大好きな街で、今回、京都でミュージアムをオープンすることに大きく感動しているという。余談ながら、予備校と大学で6年間、京都に通い、今も、京都市埋蔵文化財研究所の理事など、京都に関わる活動を続けている筆者にとっても特別な街だ。

 「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」は、京都市が進める京都駅東南部エリアプロジェクトの一環。プロジェクトを担う「京都駅東南部エリアプロジェクト有限責任事業組合」は、アートコレクティブ チームラボが代表となり、京都・大阪を基盤とする複数の企業とともに、京都駅東南部エリアにおける市有地に、「新たな価値を生み出す創造・発信拠点」となる施設の設置・運営を進めている。

 その京都駅東南部エリアは、京都の玄関口である京都駅の東南部に位置する。京都駅に近接し、京都芸大が移転する京都駅東部エリアに隣接する立地特性から、世界を視野に入れた新たな文化行政、文化交流を推進していくうえで、重要な地域となっている。

 京都市の資料によると、こうした立地を踏まえて、このエリアのまちづくりに「文化芸術」という新たな視点を取り入れることにより、「若者」を中心とした新たな人の流れを生み出し、このエリアの課題でもある人口減少や高齢化の進展に歯止めを掛けるとともに、このエリアと京都駅周辺地域の活性化の動きが連動することで、京都全体の活性化につなげていくことを考えているという。

 そのために、地域住民や地域団体はもちろん、NPO、企業、芸術家などと京都市が協働して、「文化芸術」と「若者」を基軸とした活性化を目的としているのだが、「チームラボ バイオヴォルテックス 京都」は、その大きな一歩となるミュージアムだ。

 チームラボがいよいよ、常設のミュージアムを開業することは大きな意味を持つ。

京都市長・松井孝治氏のメッセージ 

「本年10月、京都駅東南部エリアに常設アートミュージアム『チームラボバイオヴォルテックス京』が開業することを心から嬉しく思います。

 チームラボの皆様は、国内外問わずアートの概念を覆すような新たな感動体験を創造してこられました。

 今世界では終わりの見えない戦争が相次ぎ、孤立や分断が広がっています。そんな時代だからこそ、テクノロジーとアート、作品と鑑賞者など、あらゆる境界を乗り越えてきたチームラボの作品は、多くの人々の心を揺さぶることでしょう。

 今回のミュージアムの開業をきっかけに、長年多文化共生の取組を重ねてきた東南部エリアの歴史的な文脈に新たな風を吹き込み、京都の更なる活性化にも大きく寄与するものと期待しています。

 京都市といたしましても、本ミュージアムの開業をきっかけに、文化芸術によるまちづくりを一層進めると共に、日本中、世界中の人々から、住みたい、働きたい、活躍したいと思われ、選ばれるまちとなるよう、様々なチャレンジを重ねてまいります」

 今回、実際に体験出来た作品は以下の通り。

【Morphing Continuum】

チームラボ《Morphing Continuum》© チームラボ

 無数の銀の球が特異な環境によって、思わぬ形を作っていく。プレスシートでは「ひとつひとつの構成要素は時間的空間的に離れていても、それらに秩序構造が生まれると、構成要素が時空間を超越し、ひとつの存在が現れる。そして、表層的に形状や大きさが大きく変化したり、全ての構成要素の入れ替えがあったとしても、ひとつの存在は維持される。この時空間的存在は、全体の一部であり、全体から生まれ、全体に還元されていく。時空的存在群による生命的宇宙」と語る。

 リアルな球の群れの中に入って、実際に当たったり、球を持ったりする中、“存在”が立ち現れる様子は面白い。

【Massless Amorphous Sculpture】

チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》© チームラボ

 一見、雲のようであるが、作品の中に入ると全く違う印象を持つことになる。

 プレスシートでは「この空間には、物質は、ごく普通の石鹸と水と空気しか存在していない。泡は石鹸の泡である。浮遊する巨大な彫刻は、泡の海から生まれ、質量の概念を超越し、地面に沈むこともなく、天井まで上がりきることもなく、空間の中ほどを漂う。この浮遊する彫刻の存在の輪郭は曖昧で、千切れて小さくなったり、くっついて大きくなったりする。人がこの彫刻に身体ごと入り込んでも存在は維持され、人々によって壊されても、自ら修復する。しかし、塊は、自ら修復できる範囲を超えて破壊された時、修復が追いつかず崩れていく。そして、人々が押したり、横にのけようとしても、この彫刻を動かすことができないし、人々が風をあおげば、彫刻は散り散りになってしまう。人間の物理的な行為では、この彫刻を動かすことすらできない」とある。

 これらの作品は「環境現象」という新しいコンセプトからなる。渦のような現象を作品として表現する試み。例えば、海の中で渦は存在として認識できるものの、渦そのものは海水と同じ塩水でできており、明確な境界線がないにもかかわらず、私たちはそれを「渦」として捉えられる。

 たとえ渦が消えても、海底の形状や島の位置といった環境によって何度でも現れる。このような「環境が現象を生み、その現象が存在を形作る」という考えを基に、作品を通じて認知や世界の見え方を変える実験を行っているのだ。

チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》© チームラボ

チームラボ《Massless Amorphous Sculpture》© チームラボ

【Untitled】

 この作品は、空間内で花が誕生し、育ち、死滅していく様子をリアルタイムで無限に繰り返すもので、季節に応じて異なる花が現れる。オープン時には秋の花が見られる。

 これは「庭」と同じように、訪れる時期によって異なる体験が得られるという点で、自然のサイクルを反映した作品だ。空間のデザインも、銀箔のような素材が使われていることで、花がまるで自ら輝いているように見える。この輝きは、視覚的に花を際立たせ、観客に強い印象を与える。

チームラボ《Untitled》© チームラボ

チームラボ《Untitled》© チームラボ

チームラボ《Untitled》© チームラボ

チームラボ《Untitled》© チームラボ

【鳥道】

チームラボ《鳥道》© チームラボ

 プレスシートには「数十万の鳥の群れの動きは、美しく神秘的で、まるで一つの巨大な存在のように見える。つまり、ひとつひとつが時間的空間的に離れていても、それらに秩序がある時、構成要素が時空間を超越したひとつの存在として認識されるのだろう。そして、表層的に形状や大きさが大きく変化したり、構成要素の入れ替えがあったとしても、ひとつの存在は維持され、同じ存在だと認識される。この時空間的存在は、物体的存在とは違った、新たな存在の可能性を開く。その時空間的存在を描く」とある。

 実際に、これらの圧倒的作品に接して、展示室に座ったり寝転んだりして、強烈な表現に身を浸すと、不思議な世界に誘われるようだ。

【呼応するランプの森:One Stroke - a Year in the Mountains】

チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - a Year in the Mountains》© チームラボ

 プレスシートによると「お台場のチームラボボーダレスに2018年から2022年まで展示されていた《呼応するランプの森》が京都には展示されます。ランダムに見える空間上のランプの配置は、どのランプから始めても、常に最も近いランプへと線を引き続けていくことで、一筆書き(unicursal)のように全てのランプを一度ずつ通る一本のつながった光の軌跡となるよう、数学的に導き出されたものです」と言う。

 チームラボボーダレスでも何度か体験した作品だが、京都で、その世界を体験すると、また、新たな感動を覚える。

チームラボ《呼応するランプの森:One Stroke - a Year in the Mountains》© チームラボ

ミュージアム概要

●ミュージアム名 
 チームラボ バイオヴォルテックス 京都
 https://www.teamlab.art/jp/e/kyoto/
 #teamLabKyoto #チームラボ京都
●住所 
 京都市南区東九条東岩本町21-5
 https://maps.app.goo.gl/LTueGUNBZbGpXvGf6
●開館日
 2025年10月7日(火) 〜 常設
●開館時間
 9時〜21時
 ※最終入館は、19時30分
 ※開館時間が変更になる場合もある。公式ウェブサイトで要確認
●休館日
 10月21日(火)
 11月4日(火)
 11月18日(火)
 12月2日(火)
 12月16日(火)
 ※休館日が変更になる場合もある。公式ウェブサイトで要確認
●チケット価格
 大人(18歳以上):3800円〜
 中学生・高校生(13〜17歳):2800円
 子ども(4〜12歳):1800円
 3歳以下:無料
 障がい者割引:大人価格の半額
 フレキシブルパス(時間指定なし): 1万2000円
 ※事前日時指定予約制。
 ※大人と障がい者割引については変動価格制を導入し、日によって金額が異なる。日別の価格を確認の上、日時指定チケットを買い求めること
 ※現地での購入の場合、上記価格に+200円となる
●チケット購入
 https://www.teamlab.art/jp/e/kyoto/
●ティザー動画
 https://youtu.be/kK4awH9jL_Q

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