クリエイターはAIとどう向き合っていくべきなのか?
――今後増えていくと思われるAIの活用ですが、クリエイターとしてはどう向き合うのがいいと思いますか?
小澤:アニメでは手描きは手描きで残る気がしています。逆にCGのセルルックアニメは消えていき、そこにAIが入るのではないかと考えています。セルルックで最後にレンダリングすると、1枚作るのに何時間も掛かったりします。それを数百枚回すとなるとワークステーションレベルで10台組むとして全部で数千万円掛かります。それでいて修正は作画し直したりと時間が掛かります。その点AIなら短い時間で設備投資も少なくてすみます。
飯塚:クリエイターにとっては、手で塗っていたものがグラフィックソフトのバケツツールになり、そこにAIでさらにいろいろとできるようになるというだけでしかないと思います。AIはツールであり、楽観的に捉えれば、便利ツールがさらにたくさん出てきて、創作しやすくなると思います。
小澤:CGをやっている人も同様で、AIに手をつけ始めている人が多い。今はAIという流れがあるので、そこに乗らないと淘汰されてしまう。CGもツールの進化に伴ってツールを乗り換えてきたわけですが、それをできない人たちは違う分野に進むしかない。そして今はAIが既存ソフトウェアに組み込まれていく段階で、今後は使わざるを得なくなっていきます。
飯塚:CG系のスタジオではAIを取り入れていくことが多くなっていくと思います。ただ、作画やアニメの現場を中心に、反発があったり、生理的に無理という意見があったりするのは事実で、かつ当然な反応なので、アニメスタジオでの導入はまだまだ時間が掛かると思います。
――これまでは絵を描くことができなかった人もクリエイターになれるようになりますか?
飯塚:生成AIを触っている人は、自分で絵が描けないけど絵が出てくるからうれしいという動機の人が多いように感じます。でも、絵は描けないけど、作品作りに参加したいという人には、その架け橋のツールになる可能性はあると思います。
Ultra-noob:僕はAIに任せっきりで出したものをそのまま完成として公開してしまう流れはあまり好ましくないと思っています。本作は、元素材を加工してAIに入れ、描き出された絵の変な部分を人が描き換えたり、さらにもう一度AIに入れるという感じで、人が手を加えてAIに入れることでクオリティーの高い作品を目指して作っています。そのように、例えば自分が描いてきたイラストをアニメにするとか、さらに上へ高めていくとか、AIをツールとして使って、クオリティーを上げていくという視点でAIを使ってほしいなと思っています。
――最後にこれを読んで『ツインズひなひま』を観てみようと思った方にメッセージをお願いします。
飯塚:1話完結でサクっと観られるアニメで、見終わった後の満足度が高い作品だと思うので、気軽な気持ちで見てもらえると嬉しいです。僕ら現場としてはこのアニメがよくなるように1年近く、ひたすら時間を使ってきました。気軽な気持ちで観ていただいて、もしその中で「ウォッ」と思ってもらえるカットがあったらうれしいですね。
小澤:撮影では、AIで描いたもの、手描きで作画したもの、それらをなじませる部分がたいへんだったので、ぜひそういう部分を観てほしいです。
Ultra-noob:手描きアニメやCGアニメの良さというのは違いますよね。そのようにAIアニメという、違うベクトルの作品として、いままでになかった、新しい分野の作品として観ていただけるとうれしいです。
飯塚:すでに観ていただいた方には、メタ的にいろいろと挑戦したことが多い作品なので、そのカットやそれぞれの映像がどうやって作られたのかというメタ的な視点で改めてもう一度観てもらえるとおもしろいと思います。
Ultra-noob:AI画像生成のやりかたはいろいろな方がネットで公開されていますが、意外に知られていないテクニックもたくさんあります。僕らは日々の研究でそういった隠れた使い方をいろいろ発見し、本作にはそれが随所に隠されています。僕は研究者になったつもりで楽しみながらお仕事をさせていただきました。みなさんにもイラストを生成するという目的だけでなく、AIを使う楽しさを感じてもらえるといいですね。
――ありがとうございました。
AIは日進月歩の勢いで進化を続けている。『ツインズひなひま』が放送された後にも新製品が登場したり、新機能が追加されるなど、最先端であった技術があっという間に旧世代となっている。そしてクリエイティブの分野においては、それらを取り入れていかざるを得ない時代になっていくのは明らかだ。
このAIを取り入れることで、コンピューターにできることはコンピューターにさせ、その分、人の手が必要なタスクに時間を増やす。そうすることで、過酷と言われるアニメ制作の現場が少しでもよくなっていき、観る側はさらにクオリティーの高い作品を観ることができるようになる。技術の進化がアニメを作る側、観る側双方にいい影響を与えてくれることを願っている。
『ツインズひなひま』は各配信サイトで配信中。この記事を読んで興味を持った方はぜひ一度観ていただきたい。作品の詳細は「2025春アニメ大特集」にて紹介しているので参照していただきたい。
©KaKa Creation/ツインズひなひまプロジェクト















