CGはロジカル、AIは直感的な技術
――逆にAIでは難しかったことはありますか?
Ultra-noob:代表的なところではやはり手ですね。AIが描くとどうしても壊れてしまって、指の数が多かったりして、人が直さないとどうしようもなく、最後の最後まで課題でした。
飯塚:あと中割ができなかったと思っています。アニメを作る上でAIに期待されているのが原画と原画の間の動きを描いてくれることがよく挙げられますが、今回はテレビアニメとして流せるレベルまで至らず採用しませんでした。一応出てくることは出てくるのですが、どこか破綻していたり、人が描いたものに比べるとはるかに劣ることが多かったです。機械的な動きならいいのですが、AIには時間の連続性のような概念がないため、変な動きになったりします。
――今後技術が進めばという感じでしょうか
飯塚:そうですね。CGはロジカルな技術ですが、AIは直感的な技術で、ここからここまでの直線も引けません。構造物が苦手と先ほど言いましたが、AIは計算して描画しているわけではなく、学習した中から描画しているだけなので、直線が生成されるときにロジカルな理屈ではないわけです。
――背景など、少しカメラの角度を変えると崩れるということが起こりますね
飯塚:そうなんです。CGでは絶対に崩れないのですが、AIは直感技術なので、ここにこれがあるということを理解しないで描画します。学習したデータから、ここにこういうものがあるっぽいという形で描画します。人体の構造も理解していないので、たとえば指を描くのに、ここに何かあるということで爪を描いたりするのですが、とんでもない位置だったりします。今まで学んできたものから察するにこんな感じだろうという描き方をしてきます。
――作品中では最後に登場する橋のあたりから絵に違和感があります
飯塚:それは実は意図的に、演出としてやっています。その橋のあたりまではしっかりとレタッチしているのですが、そこからクライマックスにかけて、なんか変だなと無意識に感じるようにしました。AIの特性を利用した演出です。
――その橋のシーンの少し前の川の流れは?
飯塚:あれはある意味AIの限界です(笑)
小澤:やはり水の表現が厳しい。
Ultra-noob:しかし同じ水でも、蛇口から出る水は意外にきれいな動画ができて驚きました。やってみたらなぜかいい動画が出てきてシンプルにできてしまいました。
飯塚:アニメ制作に入る前は何ができるかわからなかったのでいろいろと実験したときにわかっていたことがありました。うまくいった蛇口の水は、そのときにストックしておいて、使えるものを監督に取り入れてもらいました。
Ultra-noob:AIはやってみないとわからないところがあります。このようなカットを作りたいと言われてもやってみないとわからず、できますと言い切れないのがモヤモヤします。何回も試してみるといいものが出てくることがあるのでなんとか担保していたのですが、やってみないとわからないというのはデメリットでした。















