6年目のテーマは“創る運用、遺す運用”
今年も「Cloud Operator Days Tokyo」開催 IT運用者が生成AI時代を生き残るには?
2025年07月14日 14時05分更新
昨年のアワード受賞者に聞く、その後の反響や進捗は?
ここからは、CODT 2024で「輝け! クラウドオペレーターアワード」を受賞した3名から、受賞セッションのおさらいとその後の反響や進捗が語られた。
まず、登壇したのは、満場一致で「最優秀オペレーター賞」に選出された、日鉄ソリューションズの田村大樹氏だ。顧客である金融機関のシステムにおける、「OSのスケジューラーで発生するレイテンシ(遅延)を観測する」セッションで受賞している。
田村氏は、「ミリ秒単位の厳しいレイテンシ目標がある中で、アプリケーションでは限界があり、Linuxカーネルの中(ソースコード)を見る必要があった。ツールを動かせば終わり、という穏やかな話ではなかった」と振り返る。観測のために、Linuxカーネル内で動的かつ軽量にプログラムを動かせる「eBPF」をベースとした計測ツールを改良したという。
試行錯誤の上、負荷試験でもアプリに影響がないことを確認して、本番環境で計測ツールを実行。「カーネルに手を加えるということでかなり緊張したが、意外とあっけなく終わった。一方、一部は仮説通りであったが、きれいな相関関係が見えるほどでもなく、得られたデータの分析方法を確立していくのが今後の課題」(田村氏)
受賞後の反響としては、社内での田村氏のプレゼンスが向上したこと、同じタイミングでリリースした新サービスの露出にも寄与したことが挙げられた。
審査員特別賞(挑戦編)を受賞したのは、ダイキン工業の角田潤也氏による、「AWS上のシステムが社内ルールに準拠しているかを自動チェックする仕組みを作り上げた」セッションだ。
取り組みのきっかけは、クラウド活用の急増によって、既存のセキュリティ基準との間にギャップが生じ、抽象度が高すぎて若手の担当者が理解しづらくなっていたことだという。角田氏所属のR&D部門と本社の有識者によって、より詳細で“腹落ち”ができ、AWSネイティブな新基準を作成した。
新基準の作成により、チェックリストの質は上がったが、手動チェックに時間を要するため、「リリース前にしかレビューされない」という新たな課題も生まれた。そこで、「CloudFormation Guard」のポリシーをカスタマイズし、インフラ周りの設定が社内基準を満たしているか自動チェックする仕組みを作り上げたという。
受賞後には、開発者が自動チェックを利用するためのダッシュボードを作成。さらに、ハンズオンや社内コミュニティなどで、粘り強く利用を促しているという。実際に、IPアドレス制限ミスによるインシデントを防ぐという成果も得られている。角田氏は、「CODTで受賞したことで、社内の注目度も高まった」と語った。
審査員特別賞(変革編)を受賞したのは、ジェーシービー(JCB)の平松淳也氏による、「2桁を超えるクレジット関連サービスが稼働する、GKEのアップグレードプロセス最適化」についてのセッションだ。
同社がGoogle Cloud上に展開するGKEベースのプラットフォームでは、事業規模の拡大に伴い、アップグレード時の調整や作業量の負担が課題になっていた。それに対して、「GKEのリリースサイクルにあわせたこまめなアップグレード」「Cloud Workflowsなどを活用した実作業の自動化」「責任範囲の明確化によるチーム間の調整コストの削減」といった対応策で最適化を図った。
受賞後も継続して運用中であり、GKEの利用規模はさらに拡大したものの、基本工数を大幅削減した状態を維持している。生成AIとエージェントで、アップデート前後の本質的変更を抽出・要約する機能も開発した。平松氏は、「この機能を含めて、JCBではCODT 2025で2つのセッションを披露する。ぜひ聴講してほしい」と呼びかけた。













