アイコムは6月30日、海外の電子商取引(EC)サイト上で流通する同社製無線通信機器の模倣品に対し、2024年度に4500件以上の出品を排除したと発表した。同社は、模倣品が利用者の安全を脅かす重大な問題を引き起こす可能性があるとして、引き続き対策を強化していく方針だ。
爆発事故の引き金にも、ECサイトに蔓延する危険な模倣品
同社が模倣品対策を強化する背景には、2024年9月にレバノンで発生した爆発事案がある。この事件では、同社の模倣品が使用されていたとみられており、これを契機に消費者の安全確保を最優先課題と位置づけ、外部の協力会社と連携して世界中のECサイトの監視と取り締まりを本格化させた。
特に模倣品の流通が顕著なアジア市場のECサイトを重点対象として対策を実施した結果、2024年度(2024年4月~2025年3月)だけで4500件を超える模倣品の出品を特定し、サイト上から排除することに成功した。ECサイトは出品者の特定が難しく、専門知識のない消費者でも直接購入できるため、対策の優先度を最も高く設定したという。しかし、今回排除できたのは氷山の一角に過ぎず、市場にはさらに多くの模倣品が流通していると同社はみている。
模倣品は、企業の経済的利益を損なうだけでなく、ユーザーにとっても深刻なリスクを伴う。同社が確認しているだけでも、バッテリーの持続時間が異常に短い、通話品質が悪い、衝撃に弱い、部品が早期に劣化するといった品質上の問題がある。当然ながら、これらの模倣品は同社の正規アフターサービスの対象外となるため、修理やメンテナンスは受けられない。
最も懸念されるのは安全性だ。模倣品は、厳格な品質管理や製造工程を経ておらず、どのような危険が潜んでいるか分からない。同社は、消費者の安全を最優先に考え、トランシーバーを購入する際は、必ず正規販売店を利用するよう強く呼びかけている。
アイコムは今後も、模倣品の流通を根絶するため、継続的な監視と排除措置を講じていく構えだ。あわせて、流通ルートや消費者に向けて、模倣品の危険性と正規品を選ぶことの重要性について、情報発信と啓発活動を続けていくとしている。













