フラグシップスマホの国内調達率は制裁開始時点で56%
現在はすでに90%台 制裁開始以前から取り組みは進めていた
さてファーウェイのハードウェア国産化の話に戻る。同社のMate 60シリーズやPura 70シリーズなどの主力スマートフォンや話題の新PCの国内での部品調達率は90%台とのこと。
前述のMate 40の後、制裁後にリリースされたMate 40Eでは、ディスプレーはサムスン製からBOE(京東方)製に、ほかにもSoCやイメージセンサー、バッテリーセンサーなどに変更が加わったとされるが、それでも56%だったという数字があるので、現在に至るまでに中国国内でのサプライチェーン構築が確実に進んだと言える。
また、Mate 40Eの段階でも56%もあったわけで、制裁開始時点ですでに国産化を相応に進めてきたとも言える。きっかけとなったのはファーウェイに先立つ、米国によるZTEへの制裁措置。このことでファーウェイは中国国内でのサプライチェーン構築を強く意識するようになる。
2018年後半以降、中国メーカーのサプライヤー認証資格の条件緩和やサプライチェーンの選定強化、購買力向上、調達チームによる潜在的なサプライヤー発掘などを進めていた。2019年4月には投資会社の哈勃科技投資を設立し、投資や株式保有を通じた半導体などの中国のサプライヤーへの財務支援で、生産規模の拡大、生産能力と品質の向上を支援していった。また2019年にはファーウェイは中国最大の半導体パッケージング・テスト企業である長電科技の工場に100人を超える技術者を派遣するなど、技術協力も進めた。
その結果2014年時点では、中国国内での部品調達率は11.9%だったのが2018年には23.6%に。2022年のMate 50シリーズは72%、Mate 60シリーズは90%にまで上昇する。Mateシリーズはハイエンド製品なので日本や韓国、米国からの移行が必要だったが、一方でミドルやエントリー製品については制裁前から中国のサプライヤーから部品が供給されていたこともあり、米国の制裁は効いておらず、制裁前後で影響はなかったという。
OSもAndroidを脱却 5年で新プラットフォームを作った
中国国内ではiOSを抜いて、「第2のモバイルOS」に
Androidの代替となるHarmonyOSに関しては、2019年5月のファーウェイのエンティティリスト入り後、同年8月にHarmonyOS 1.0を発表。2021年6月にHarmonyOS 2.0へのアップデートが開始された。
当時の中国テックメディアの論調は、発表前は「そんなに早く新OSは出てこないだろう」という感じで、随分驚いていたという記憶がある。その後、2023年8月発表、2024年10月リリースのHarmonyOS NEXTはAndroidベースではなくなった。制裁前から同社はOSの研究開発をしていたとは言え、制裁から5年弱でアプリを揃え、Androidを切り離したわけだ。今中国ではHarmonyOSはファーウェイ人気を受け、シェアでiOSを超え、“第2のモバイルOS”となっている。
制裁開始から6年、ファーウェイを警戒させたZTEへの規制は2016年なので9年が経過した。この間にソフトウェアとサプライチェーンを国内にシフトさせ、外国に依存しない情報端末を作りあげたのである。

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