Build 2025で発表されていたWSLのソースコードが公開
Windows Subsystem for Linux(WSL)のソースコードが公開された。これまで、WSLを実行するのに必要なソフトウェア、特にWin32側のものは公開されていなかった。
5月20日(現地時間)に米国で開催されたBuild 2025イベントで、WSLをオープンソース化することが発表された。その後、2日ほどしてソースコードがGitHubで公開されている。もともとWSL用ディストリビューション開発などの情報を提供していたリポジトリである。
ちなみに以前から、以下の2つに関しては、ソースコードが公開されていた。
●WSL2用Linuxカーネル(https://github.com/microsoft/WSL2-Linux-Kernel)
●Linux GUIアプリケーションを動作させるためのシステムディストリビューションWSLg(https://github.com/microsoft/wslg)
今回公開されたWSLのソースコードは、リポジトリのトップレベルにある「src」ディレクトリ以下にある(https://github.com/microsoft/WSL/tree/master/src)。また、ローカライズされた日本語のメッセージは「localization/ja-JP/Resources.resw」(https://github.com/microsoft/WSL/blob/master/localization/strings/ja-JP/Resources.resw)にある。
実際にソースコードを見るには
とは言え、ソースコードのどこから手をつけたらいいのかわからない方も少なくないだろう。そこで筆者はwsl.exeのソースコードから見ていくことにした。
wsl.exeには、ディストリビューションのインストールや管理、wslの設定、セッションの管理に加えて、Win32側シェル(PowerShellやcmd.exe)とパイプラインで接続してbashコマンドを実行させる機能もある。なので、wsl.exeを調べることがWSLソースコード理解の出発点になると考えた。
wsl.exeのソースコードは、WSLリポジトリの「src/windows/common/wslclient.cpp」(https://github.com/microsoft/WSL/blob/master/src/windows/common/WslClient.cpp)である。
以下の表は、WslClient.cppが参照する定数、呼び出している関数やクラスなどが入ったファイルの一覧である。なお、利用するエディタなどの機能により、外部ファイルで定義された関数やクラスなどの定義ファイルを開くことも可能だ。
論理的には、src\windows\wsl\main.cppが、wsl.exeを生成するためのコードなのだが、ここでは、前述のWslClient.cppにある「wsl::windows::common::WslClient::Main」(ソースコード末尾にある)を呼び出しているだけである。このため、中身を見るのであれば、このMain関数から取りかかる方がいいだろう。
Main関数は、WslClient.cppファイルの末尾、1839行から始まる。引数としてコマンドラインを受け取り初期化する。冒頭で環境変数「WSL_UTF8」が1ならば、文字エンコードとしてUTF-8を使う。「WSL_UTF8」が1以外なら、UTF-16(WindowsでいうUnicodeエンコード)を使う。これは、公式のドキュメントにはない機能である。ただ、UFT-16のときBOMが付かない。
初期化のあと1892行から「WSL側でコマンド実行(bash)」「WSLの環境設定(wslconfig)」「システムディストリビューションの起動(wslg)」「それ以外のwsl.exeの機能」の4つに分岐する。
WSLが登場したときには、ディストリビューションを起動するbash.exe、WSLの設定を行うwslconfig.exeという2つのプログラムがあった。これらの機能はwsl.exeに取り込まれ、2つのプログラムは非推奨となった(プログラム自体は存在している)。また、WSLgは追加された機能である。こうした背景から3つの機能とwsl.exe本来の機能の4つに内部が分かれていると推測される。

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