なんとなく、印象に残ったauのCM
空が見えれば、どこでもつながる。
そんな言葉とともに始まる、auのTV CM「つながる歌・スターリンク」篇は、心に残る映像と音楽で話題を呼んでいる。
スペースXが開発した最新鋭かつ低軌道のStarlink衛星とスマートフォンを直接接続して通信するサービス「au Starlink Direct」に対応するスマートフォンを手にした有村架純さんが出演するこのCM。
雄大な山々を背景に佇むその映像からは、見通しのいい高原の空気感が伝わってくるようだ。
……と思ったら、実はこのCM、“山で撮影していない”らしい。どういうことか。調べてみると「バーチャルプロダクション」という新鋭の撮影手法を採用しているようなのだ。
今回は、その制作の舞台裏を探るべく、KDDI コミュニケーションデザイン部の中村亮太氏と、クリエイティブディレクターとしてCM制作にかかわった篠原誠氏に話を聞いた。
ロケに行かずして、ロケに匹敵するクオリティー
ふだん何気なく見ている十数秒〜数十秒のCM。テレビで放映される時間は一瞬でも、その制作には多大な労力がかかっている。
自然をバックに取りたければ、ロケーションハンティング(場所探し)、不動産の所有者や自治体への撮影許可取り、出演者やスタッフのスケジュール調整。
脚本、撮影、編集、チェックバック、再編集……制作者が、浮かんだアイデアを思った通りに表現するためには、“テレビのこちら側”からは見えない幾つもの壁がある。
こうした撮影の課題を乗り越える手段として、近年注目を集めているのが「バーチャルプロダクション」だ。
バーチャルプロダクションとは、言葉の通り、スタジオ内に仮想的に背景を再現して撮影を進める手法だ。具体的には、巨大で高精細なLEDスクリーンに映し出された映像を背景に、スタジオで撮影を行う。
LEDスクリーンに映す映像さえ用意できればスタジオ内で撮影が完結できることから、時間や場所の都合で難しかった表現も実現しやすくなる。
バーチャルプロダクションのメリットについて、篠原氏はこう語る。
「これまでは、諦めざるを得なかったアイデアも、今回のようなバーチャルプロダクションなら実現できます。たとえば、自然光の中でも最も美しいとされる『マジックアワー(薄明の時間帯)』を狙うには、現地での天候とタイミングに左右されてしまいます。うまく遭遇できたとしても、何回撮れるかわからない。でも、バーチャルであれば何度でも撮り直しが可能です。
さらに、背景と人物を合成して映像を作ると、特有の“合成感”が出てしまいますが、バーチャルプロダクションではそれもありません。スタジオの照明も、LEDに移す映像の持っている光の情報から計算して当てているため、画の完成度が非常に高く、自然です」










