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FIXERと藤田医科大学が共同開発、新設の事業会社から全国展開

医師の9割が効率化に手ごたえ 生成AIで「退院時サマリー」作成支援

2025年05月29日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 FIXERは、2025年5月27日、生成AIを用いた「退院時サマリー」の作成支援システムを、愛知県の藤田医科大学を運営する藤田学園と共同で開発したことを発表した。電子カルテから退院時サマリーの下書きを生成するシステムであり、既に、藤田医科大学病院の31診療科で運用開始されている。

 退院時サマリーとは、患者が退院する際、他の医療機関などで治療・ケアが継続できるよう、診断情報や治療経過、看護記録などをまとめた文書のこと。退院前に主治医が作成するが、煩雑な作業が多い上、短時間で作成する必要があり、医師の時間外業務増加の一因となっているという。加えて、作成者によって取捨選択する情報が異なり、網羅性に差があることも課題だった。

 今回開発されたシステムは、電子カルテに表示されたボタンをクリックするだけで、必要なデータを抽出。生成AIが、わずか数秒で退院時サマリーの下書きを生成する。下書きは自由に修正でき、そこからワンクリックで、電子カルテに取り込まれる仕組みだ。多言語への翻訳にも対応する。これまで1件あたり10~15分かかっていたサマリー作成作業が、数回のクリックで完結でき、加えて、サマリーの質の向上や均てん化にも期待できる。

 同システムは、2025年2月より藤田医科大学病院の6診療科で先行運用をスタート。1か月後には、入院機能を有する31診療科に運用を拡大している。生成AIによるサマリー作成支援が、大学病院全体で本格的活用されるのは全国初だという。

 実際にシステムを利用した医師170名を対象としたアンケート調査では、92%が「時間短縮、業務改善につながった」、81%が「満足」と回答。加えて、導入後3カ月の業務短縮時間は、累計で約1000時間に達している。

退院時サマリーの作成支援システム利用後のアンケート結果

 こうした成果で実用化の目途が経ったことから、FIXERと藤田学園の子会社であるフジタ・イノベーション・キャピタルが合同で、新事業会社「メディカルAIソリューションズ」を設立。2025年5月から本格始動している。

 新会社では、藤田学園が有する医療DXの知見と、FIXERが培ってきたクラウド開発および生成AIサービス「GaiXer(ガイザー)」の実績を生かし、同システムを全国へと展開していく。さらには、退院時サマリーに加えて「看護サマリー」や「診断書」など、他の文章作成への応用も進んでいるという。

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