IBMより先にパソコンを発売した“半導体からAIまで”のエンジニアリング企業
「日本の知名度が課題」 Appleと同年創業、いまは22万人が働くインド・HCLTechの実力
2025年04月28日 09時00分更新
有名企業の製品開発やITインフラ構築などをグローバルな拠点網で支援
現在のHCLTechは、大きく3つのビジネス領域を持っている。IT/ビジネスサービス、エンジニアリング/R&Dサービス、ソフトウェア(HCLSoftware事業)だ。
売上のおよそ7割(98億ドル)を占めるIT/ビジネスサービス事業は、エンタープライズ顧客におけるDXを加速させ、ビジネスモデルの迅速な変革を大規模にサポートする役割を担う。
具体的には、ITコンサルティングからクラウド基盤構築、アプリケーション開発/モダナイゼーション、ITオペレーション、データ/アナリティクス/AI活用支援など幅広い。インドを中心に、グローバルに220拠点以上のデリバリーセンター(サービス提供拠点)を設けて展開している。
エンジニアリング/R&Dサービス事業(売上の約2割)は、製造業顧客やサービス事業の顧客に対して、新製品開発(設計から製品リリースまでを一貫サポート)、デジタルサービス開発などを提供し、迅速な市場展開をサポートする。半導体やハードウェアの設計/エンジニアリングから、ソフトウェア、クラウドサービスまでを幅広くカバーし、AIやIoT、AR/VR/XR、ロボティクスなどの先進的なテクノロジーも扱う。
当然だが、このビジネスでは高い情報の機密性が求められる。そのため、顧客ごとに専任チームが編成され、関係者しか立ち入れない顧客ごとの専用オフィスエリアで業務が行われる。ある日本企業向けのオフィスを見学させてもらったが、オフィス内にはその企業の社内標語ポスターなどが貼られ、まるでその企業のインド支社を訪れたかのような印象を受けた。
「HCLSoftware」ブランドで展開するソフトウェア事業(売上の約1割)は、Notes/Dominoのようなグループウェアから、データ/アナリティクス、デジタル体験管理、サイバーセキュリティ、DevOps/ITオペレーション、業界特化型アプリケーションなどをラインアップしている。ソフトウェア事業は利益率が高いため、近年積極的に注力している分野だという。
ITサービスやエンジニアリングの顧客事例も紹介した。たとえば、欧州の大手家電メーカーでは、ハードウェアから組み込みソフトウェアまでのエンジニアリング(設計開発)をHCLTechが担っているほか、30以上ある工場における製造工程のモダナイゼーションを実施。データレイクを構築して、MES(製造実行システム)の効率化を実現したという。
そのほか、モバイルデバイス、EVバッテリー、印刷機、医薬品、化粧品など幅広い製造業(メーカー)、さらには金融、テレコムなど非製造業のエンタープライズ顧客に対して、製品エンジニアリングから製造効率化、デジタル販売チャネルの構築など、エンドトゥエンドでサービスを提供している。後述するオリンパスもその一社だが、多くの有名企業の製品開発やサービス開発、デジタル変革の裏側を、HCLTechが支えている実態がある。
日本市場のビジネスを2倍に成長させる“3つのA”戦略を推進
それでは、日本市場におけるビジネスの実態や戦略はどうか。
日本でのビジネス展開は1998年から始まり、すでに28年目を迎えたという。HCLTech Japan社長の中山氏によると、国内の顧客企業は約3000社あり、中には「25年、26年という長いお付き合いのお客様」もいるという。そうした日本企業のデジタル変革を、日本国内の従業員およそ750名(うち650名がエンジニア)と、インドなど海外拠点の従業員およそ3000名がサポートしている。
HCLTech Japanでは、日本市場でのビジネス目標として「2028年に売上1000億円を実現し、日本市場でナンバー1のインドIT企業になること」を掲げている。日本法人単体での売上は公表されていないが、1000億円という数字は現在の2倍程度に当たるようだ。
中山氏は「非常に高い目標であり、自分自身にも若干プレッシャー」だとしながら、日本のIT投資額は大きく、“トリプルA(3つのA)”戦略で飛躍的な成長を目指すと語った。新規顧客獲得や既存顧客との取引領域拡大によるオーガニックな成長=「Adjacencies」、日本市場でのパートナーシップ拡大を通じた成長=「Alliances」、そして企業買収や合弁事業を通じた成長=「Acquisitions」の3つだ。
「グローバル全体から見た日本の位置づけは、まだまだ小さい。ただし、フランス、ドイツ、日本など、アメリカや英語圏ではない先進国にフォーカスを当てる、それを(成長に向けた)戦略のひとつとしている」(中山氏)















