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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第102回

“偽人間”のリスクと誘惑 共感するAIと、問われる人間らしさ

2025年04月14日 07時00分更新

文● 新清士

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AIはわざと自らのレベルを下げなければならない

SXSW 2024で講演するレイ・カーツワイル氏(The Singularity Is Nearer featuring Ray Kurzweil | SXSW 2024 より )

 今回のチューリングテストは、たった5分間の古典的なチューリングテストでしたが、今後、より難易度の高いテストが実施されていくことになるでしょう。「シンギュラリティ」の提唱者として知られるレイ・カーツワイル氏は1999年、2029年までに「AIがチューリングテストを突破する」と予想していました。今回のチューリングテストの突破をどう位置づけるのかを考える必要があります。

 昨年3月のSXSW 2024で講演した際には「2〜3年後には、チューリングテストを超えたと主張する人たちが出てくるだろう。GTP-4がパスしたと言われるように。それが繰り返され、最終的には、すべての人が受け入れることになるだろう」と語っています。

『シンギュラリティはより近く』(NHK出版)

 今後、より複雑で難易度の高いチューリングテストが試されていくことは間違いありませんが、2024年にカーツワイル氏が出版した『シンギュラリティはより近く: 人類がAIと融合するとき』では、チューリングテストを超える前段階で「言語により表現できるあらゆる認知テストにおいてAIは人間を上まわる」(Kindle版 P.119)と予測しています。

 具体的には、「成功するAIは自分が人間を超えているところを見せないようにする。回答者がトリビアな質問にすぐに答えたり、大きな数字が素数かどうかを瞬時に判断したり、100カ国語を流暢に話したりすれば、その回答者が人間でないことは火を見るよりもあきらか」(P.120)ということです。あまりに能力の高さを示してしまうと、逆にAIだとすぐにバレてしまうということです。そのため、「従来のチューリングテストに合格したければ、AIはみずからのレベルを下げなければならない」(P.120)と、人間に合わせてAIの方がわざと性能を下げて話すようになるとしているのです。

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