今回は番外編。妊娠を機になる病気で、4ヵ月入院していました
ASCII読者の皆さん、こんにちは!そしてご無沙汰しております。
正能茉優です。
今回は「お仕事悩み、一緒に考えます。」の番外編として、私の近況報告をさせてください。
夏の終わりから先日まで、4ヵ月ほど入院していました。
ざっくり言うと、「妊娠を機に吐き気・嘔吐などの体調不良になり、病名や対処法がなかなか特定できないまま呼吸不全にまで陥ったものの、死産したら呼吸状態も改善して、パタリと吐き気・嘔吐もなくなった」という出来事です。
今は退院し快方に向かっていますが、一時は生命が危ない状態にもなり、人生観・仕事観が変わる経験でした。
渦中のタイミングでは、似た症状・状況の人の情報が少なくもっと知りたかったこと、さらに友人や知人に報告すると「妊娠を機に、呼吸不全?ICU?」という反応をいただくばかりだったことを踏まえ、当事者やその周りの方々に、情報が届いたらという思いで、この連載にまとめてみることにしました。
この連載では、
- 今回あったこと
- 変わった人生観・仕事観
- 仕事における、死産・流産した人への向き合い方について考えたこと
を、全4回に分けて、お伝えさせていただければと思います。
必要とする方に、情報が届きますように。
まず時系列で、ざっくり振り返ります
私が渦中にいた時には、長い文章を読むのもしんどかったので、今似た状況にいる方向けに、まずは週数で起きたことを振り返ります。
9月9日(5週3日):頭痛・吐き気・嘔吐の症状で病院Aに。妊娠していること、「重症妊娠悪阻」の可能性がわかる
9月10日(5週4日):通院での点滴を開始。口からの飲み食いが一切できなくなる
9月23日(7週3日):重症妊娠悪阻が悪化。病院Bに転院し入院
11月15日(15週0日):エコーで胎盤の異常を指摘され、血液検査で腫瘍マーカーを確認。「絨毛がん」の可能性が高いと言われ、絨毛がんを扱える病院に転院することに
11月18日(15週3日):病院Cに転院。腫瘍マーカーの値は絨毛がん相当で、何らか胎盤の異常がありそうという指摘。子が自発呼吸できる週数を待って、早く産み、その後母体の治療を行うという大方針を決める
12月11日(18週5日):呼吸不全になり、ICUに
12月13日(19週0日):死産、異常のあった胎盤組織を摘出する手術。嘔吐・吐き気などの不調が一気に回復。「部分胞状奇胎」であったことが確定
12月23日(死産後10日):異常のあった胎盤組織を摘出する2回目の手術
その後現在(死産後3ヵ月): 退院し体調は回復。現在も、絨毛がんになる可能性が否定できないため、月に2回通院し、絨毛がんになっていないかなどの予後を確認
ここからは詳細に、振り返っていきたいと思います。
ある日突然飲み食いできなくなり、それが4ヵ月続きました
ことが始まったのは、遡ること2024年の9月。出掛けていたスーパーで、家族に「顔色悪いよ?」と言われたのが始まりでした。
言われてみれば、うっすら頭痛と気持ち悪さがあるような……?
その場ではソフトクリームを食べ復活したものの、翌朝からあまりの気持ち悪さに起き上がれなくなり、飲み食いができなくなり、嘔吐が始まりました。
その日は1日5回の嘔吐だったのが、翌日には10回、さらにその翌日には17回と徐々に回数が増していき、嘔吐が始まって4日目には手に常にビニール袋を持って1日中吐き続けるという状況に。
吐き気・嘔吐・頭痛・めまいで、ただただベッドに寝転がり、スマホすら触れなかったことを覚えています。
起き上がるのも立ち上がるのも困難な状況の中、めまいが少し落ち着いたタイミングを見計らって近くの病院に駆け込み、諸々検査してわかったのは、妊娠していること、そして「重症妊娠悪阻(おそ)」という症状になっているということでした。
重症妊娠悪阻とは、つわりが重症化して、極端な体重減少・脱水などの症状を起こすもの。
私の場合、尿検査でのケトン体の値から極度の脱水状態であることがわかったので、入院を勧められましたが、通院で点滴をして水分と栄養を補う生活が始まりました。
というのも、当時は第一子が1歳になったばかり。
授乳中だったため、子の生命維持には私の身体が必要だったこと(ミルクをほぼ飲ませたことがなく、子は哺乳瓶から液体が飲めない状況でした)、私自身も乳腺炎という高熱が出る症状になることを避けたかったこと(母乳を定期的にあげないと乳腺が詰まって、40度を超える高熱が出るという体質でした)、ある日突然親の都合で母乳を奪うことに抵抗があったことなどなどが重なる状況でした。
そこで、毎朝病院に行って、1日かけて4本ほど点滴をし、夕方には家に帰るという生活を1週間ほど続けてみることに。
ところが症状は重くなる一方で、ある日医師から、「このままじゃ死んじゃうよ。母乳がなんだと言っている場合じゃない。死んだら子どもに会えなくなるよ」と言われ、転院して入院することを決めました。
「重症妊娠悪阻(じゅうしょうにんしんおそ)」で入院することに
この時期は、飲み食いはもちろん、目も開けられず、明るい部屋にいるのもままならなかったので、部屋を真っ暗にして、小さな小さな音で「ちびまる子ちゃん」や「ドラえもん」など、声で登場人物がなんとなくわかるアニメの音を聞いて、時間をやり過ごしていました。
お手洗いに立つこともできなかったため管を入れてもらい、入浴もできなかったため、少し体調のいい日に体を拭いてもらっていました。
気持ち悪さと止まらない嘔吐、寒さと頭痛があまりにしんどく、「ワープしたい」「消えたい」「でも、死にたくはない」と本気で願っていたのを覚えています。
なお、水分不足だったせいか、涙は全く出ませんでした。(苦笑)
重症妊娠悪阻のしんどいところは、できることがほぼなく終わりが来るのを待つしかできないこと、ただしその終わりがいつになるかわからないことです。
水分・栄養を補給する点滴以外にはできることがないので、医師と看護師には「時期が来れば落ち着くから。つわりが落ち着く妊娠12週には落ち着く人が多いんだけどね」と言われ、その日が来るのを今か今かと願って、毎朝妊娠の週日数をカウントしながら、それでも毎日「消えたい」「ワープしたい」「投げ出したい」と泣き言を思って、過ごしていました。
つわりの時期が終わっても続く、1日30回の嘔吐
それから2ヵ月が過ぎ、一般的につわりが終わる妊娠週数になっても、一向に症状が落ち着かず、それどころか嘔吐の回数は増えていくばかり。
「一般的には、そろそろ落ち着く頃なんですけどね」と医師・看護師も言うものの、産むまでつわりが続く人もいるので、「どこかでは落ち着くだろう。最悪出産すれば落ち着くだろう」というのが、医師から聞いていた私の今後の見立てでした。
とはいえ毎日何十回も吐いて、目も開けられずにいる身としては、この状況が1秒でも早く落ち着くことを願わずにはいられず。いや正直なところ、そんな緩やかな気持ちではなくて、「助けて。このままじゃおかしくなる」と本気で思っていました。
hCGの値が、106に。がんの可能性!?
そんなある日、妊婦検診でエコー検査をすると、その日担当していた医師から「胎盤の様子がおかしい」という指摘があり、血液検査をすると、hCGという腫瘍マーカーの値が異常に高いことが判明しました。
医師からはその場で「『絨毛がん』という希少がんの可能性が高いです。珍しい病気で、うちでは診れないので、今日か明日転院してください。絨毛がんは抗がん剤が効きやすいので5年生存率は9割を超えますが、半年でステージ4まで行く進行の早いがんなので、時間が勝負です」と言われ、転院することとなりました。
なおその時の自分の気持ちは、「体調不良の原因がわかってよかった」「検査結果のhCGの値、桁数が多すぎて、枠からはみ出ているな」「医師も看護師も『いちじゅうひゃくせん……』って数えながら話すってことは本当に珍しい値なんだろう」「家のローン、団信でチャラになるのかな」「抗がん剤効くのはありがたいけど、今とどっちが気持ち悪いのかな」「というか、生存率9割ってことは1割は死ぬのかな? まあ誰だって今日死ぬかもしれないし、一旦気にしないでおこう」という感じでした。(笑)
なお、そんな私の隣で、夫はティッシュ1箱がなくなる号泣を見せており、私はそれを見て「まだ生きてるよ?」と妙に冷静になってしまったのもある気がします。(苦笑)
その日は金曜日だったので、結局月曜日の朝一に東京の病院に転院することになり、そこから詳しい検査をすることになりました。
筆者紹介──正能茉優
ハピキラFACTORY 代表取締役
パーソルキャリア「タグものさし構想」事業責任者
1991年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部 卒業。
大学在学中に始めたハピキラFACTORYの代表取締役を務める傍ら、2014年博報堂に入社。会社員としてはその後ソニーを経て、現在はパーソルキャリアにて、HR領域における新規事業の事業責任者を務める。ベンチャー社長・会社員として事業を生み出す傍ら2018年度より現在に至るまで、内閣官房「まち・ひと・しごと創生会議」「デジタル田園都市国家構想実現会議」などの内閣の最年少委員を歴任し、上場企業を含む数社の社外取締役としても、地域や若者といったテーマの事業に携わる。
また、それらの現場で接した「組織における感情」に強い興味を持ち、事業の傍ら、慶應義塾大学大学院にて「組織における感情や涙が、組織に与える影響」について研究。専門は経営学で、2023年慶應義塾大学院 修士課程修了。

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