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「AIエージェントは一人の人間のように考え、扱うべき」その理由とは

「生成AIの登場は“大きな贈り物”だった」 Box CTOが語るAIエージェント戦略

2025年04月08日 09時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

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「人間がやりたくない作業」をAIエージェントに代行させる事例

――そんな将来も楽しみにしつつ、現時点ではどんなAIエージェントが実現しているのか、企業での事例を教えていただけますか。

クス氏:ある金融機関のお客様ですが、顧客情報をまとめた書類が何百万ファイルもあります。そして監査のために、顧客のカテゴリーごとにそのファイルを分類しなければならない、ということになりました。

 当初は、人間が書類に1枚ずつ目を通し、その内容を理解して、フォームに入力を行う――といった作業が検討されました。しかし、何百万ファイルもあるわけです。そこで、Box AIのエージェントにそのタスクを代行してもらうことにしました。AIエージェントが書類を調べ、分類のためのメタデータを抽出して、フォーム入力を行いました。

 もうひとつ、これも金融業界のお客様ですが、ローンの与信作業にAIエージェントを採用している事例もあります。

 お金を貸し付けてもよいかどうかを判断するために、ローンの申請者にはたくさんの書類を提出してもらいます。ただし、大量の書類の記入内容が正しいか、電話料や電気代の領収書までチェックして与信が問題ないかを判断するまでには、何時間も、何日間もかかっていました。

 これをBox AIのAIエージェントに依頼すると、ほんの20秒もあれば書類のチェックが完了します。ローン審査の時間が大幅に節約できて、借り手にとってもサービスが向上しますし、何よりも人間の担当者が一番やりたくない書類チェックの作業を任せられます。

 そのほかにも、たとえばさまざまな業界の企業法務部門で、契約内容や法的義務の理解をAIエージェントが支援するような取り組みも行っています。AIエージェントは業界を問わず拡大していくでしょう。

――「自分たちももっとAIについて学びたい、自社の業務に組み込みたい」という方も多いと思いますが、どんなアドバイスがありますか。

クス氏:お客様からそうしたアドバイスをよく求められます。わたしがいつも言うのは「一番いいのはとにかく使ってみる、トライしてみること」です。

 AIを学ぶのは、初対面の人と話をするのと似ています。まずは積極的に話しかけてみて、どんな答えが返ってくるのかを知る、そこからさらに問いかけをする――といった具合に、会話を通じて学んでいくのがよいでしょう。これは、自分でやってみないかぎり、誰かに教わるのは難しいことだと思います。

 ちなみに、Boxの開発チームもAIの専門家ばかりというわけではありません。現在のAIは非常に新しい技術であり、長年の経験者というのはまずいませんから。われわれはそれよりも、何か新しいことにトライするのが好きな人、好奇心を持っている人を積極的に採用しています。

 AI技術は急速に進化しています。だからこそ「変化し続けられる人」が一番必要だと考えています。

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