UCC上島珈琲は3月19日、UCC「ドリップポッド」10周年新商品・新戦略発表会を開催した。2015年3月19日に「DP1」を発表して以来、ちょうど10年の節目だ。
エスプレッソ文化とドリップ文化の違い
レギュラーコーヒーの消費量は世界的に広がっており、そのうちの5〜8割をカプセル式が占めている。ただし、日本は6%程度と1割にも満たない。その理由は欧米ではエスプレッソコーヒーが主流であるのに対し、アジアではドリップ式の抽出が中心になっているためだという。
実はカプセル式コーヒーメーカーの大半はエスプレッソ式。日本人の味覚にあったドリップ式のカプセルコーヒーシステムを作れないか。それがUCCがドリップポッドの開発に至った経緯だという。
ちなみに、日本は世界で4番目にコーヒーを消費している国だが、フィリピンや中国などお茶文化中心のアジア圏でもドリップコーヒーの消費が増えている状況だという。
カプセル式コーヒーは手軽で簡単、そこに大きな間違いがあった
そんな日本だが、現在、カプセル式コーヒーの年平均成長率は約10%と非常に高い。ドリップポッドはさらにその速度を上回る約25%の成長を続けているという。
しかし、その道のりは平坦ではなかった。UCCは一杯抽出事業部を立ち上げ、2009年にPelicaという製品を発表したが、当初はあまり支持されることはなかった。その後、2015年にこの事業部がソロフレッシュコーヒーシステムとして独立し、ドリップポッドの開発へと進んでいくが、当時はカプセル式コーヒーメーカーに対する誤解があったという。
その一つが価値の定義。実はカプセル式コーヒーメーカーには「最高の一杯」をその都度抽出できるというクオリティー面でのメリットがある。しかしながら、提供する側はその価値を「はやい、簡単、便利」だと誤解していた。
また、一般消費者の側にもインスタント式コーヒーとの混同という誤解があったほか、交換式インクやカミソリの刃のようにサプライ品を買い続けるビジネスモデル=LTV重視のビジネスモデルを真に理解できていなかった。それは、量販店などでの売りきりとは異なる、顧客との関係性を作ることから始めなければならないという意識が希薄であったと言い換えることもできる。
そして、最高の一杯を提供するコーヒーメーカーへ
そこで、1世紀近い歴史を持つUCCが開発した”最高の一杯を飲める”カプセル抽出マシンという軸でブランドの軸を再定義。
農園の開拓・買い付けから始まり、品質検査、焙煎/粉砕の質の高さ、そして抽出へと進む一連の過程の中で、最後のひと工程となる「抽出」の重要性を改めて意識してもらうところからやり直したという。
例えば、カップオンタイプのコーヒーは、コーヒーカップ1杯分で設計しているため140mlの油量が適切だが、マグカップなどを使う人は300mlとより薄い味のコーヒーを飲んでしまっている。しかし、ドリップポッドのような機器を使い、抽出の理想的な工程をUCCが提供することで、提供者側の意図を忠実に再現した最適な一杯が飲めるようになる。
最高の一杯を提供するために
加えて、最高の一杯を体験できる場の創出にも取り組んだ。
気持ちにプラスアルファを感じられるホテル、ラウンジ、ポップアップストアといった場所で、コーヒーを味わい、それに見合うものだと認識してもらうようにしている。
定期便加入者の継続年数も2年以上が55%と高いが、そうできた理由は「あえて囲い込まない柔軟なサブスク」にしてきたためだとUCCジャパンの執行役員 ニュービジネス担当で、ソロフレッシュコーヒーシステムの代表取締役社長を務める柳原優樹氏は言う。
解約率を下げるため、解約の動線を敢えてわかりにくくするなど、ユーザー側に不利益が出流ような仕組みは絶対に取らず、代わりにカプセルが溜まりすぎて困ることがないよう、お届けカプセルの量を自由に増減できたり、届けるタイミングを変更できたりするようにする施策を取り入れた。
その結果、こうした提供条件の変更をしたことがある人の方が通常より1/4〜1/5も解約率が下がり、長く使ってもらえることが分かったという。
ドリップポッドのユーザーは年間約450杯のコーヒーをドリップポッドで飲んでいるというが、これは外食時なども含んで日本人が1年間に飲むコーヒーの平均杯数350杯を大きく上回る数字になっている。
また、サブスクに限らず、ECサイトでのリピート率も高い結果になっている。UCCの家庭用製品の中でもBLACK無糖(缶コーヒー)、ゴールドスペシャル(アロマパック)、職人の珈琲(ワンドリップ)に続く4番目の売り上げになり、年間100億円の売り上げも達成間近だという。
逆算した味づくり、10年の集大成的なスペシャリティカプセルも
10周年ということで10の企画も推進。第1弾は10周年アニバーサリーカプセルで、伝統の「ブルーマウンテン」と革新の「ゲイシャ」の2種類で展開。10年の集大成的な成果となっているという。
また、第2弾として水素焙煎のカプセルを提供予定。秋以降にも新製品ラインアップを展開したり、体験イベントを実施したりすることを計画している。
10周年アニバーサリーカプセルは農園からこだわった「まっすぐな一杯」としている。
ブルーマウンテンは、創業者の上島忠雄氏の想いを体現し、1981年より続く自社農園の豆を使用。この農園には3つの区画があるが、その中でも標高が平均200m高い、ローズヒルという特別な区画で栽培した豆を100%使用している。気象条件が過酷で、急峻な環境のため機械が使えず手作業での収穫になるなど、手がかかる農園でもある。
標高が高いと、寒暖差が出るため、引き締まった味わいになり、洋梨やサーモンのような優しい味わいが楽しめるという。
ゲイシャコーヒーは、複雑で多彩な香りが特徴。グアテマラのサンタ・クララ農園で収穫した豆を使用している。ジャスミン、トロピカルフルーツ、ハニー、ブラックティーなどのフレーバーを感じさせる。ゲイシャらしい華やかさがありながら柔らかな酸味のある甘やかさ。飲みやすさも備えた味わいになっている。
10thアニバーサリーカプセルセットは本日から予約販売を開始。4月1日に一般発売し、価格は4752円だ。
機器を持っていなくても、スペシャリティカプセルを期間限定で楽しめる
3月21日(金)から4月10日(木)までの平日9:00〜13:00には、青山一丁目駅そばのDRIP POD LAB(UCCグループ 東京本部)でその味を楽しむことも可能だ。
1杯200円で、ミモレットチーズやブルーマウンテンの組み合わせやゼリー菓子とゲイシャコーヒーの面白い組み合わせでの味わいも楽しめる。興味がある人は足を運んでみてはどうだろうか?
