世界では「1社平均101個」のアプリを利用、「データコンプライアンスアプリ」が急成長
人気業務アプリの顔ぶれは10年前と様変わり Oktaが利用実態調査を発表
2025年03月19日 07時00分更新
アイデンティティ(ID)管理のクラウドサービスを提供するOktaが、毎年恒例の業務アプリ利用動向レポート「Businesses at Work 2025」を発表した。企業が導入する業務アプリの数は増加傾向にあり、日本は「平均46個」と前年から急増している。カテゴリ別では特に「コラボレーション」「セキュリティ」「開発者向け」のアプリ需要が高まっている。
この調査は、Oktaのサービス(OIN:Okta Integration Network)を通じてアプリに接続する企業の匿名化済みデータから、業務アプリ利用のトレンドや変化を追うもの。11回目となる今回は、2023年11月~2024年10月のデータをベースに分析している。Oktaでコンテンツリードを務めるローリー・イソラ氏が、調査結果の解説を行った。
「1社平均101個」、企業規模・国別で見る業務アプリの導入状況
まず、Oktaの顧客企業は、1社あたり何個の業務アプリを利用しているのか。グローバル平均では「101個」だが、調査国や企業の従業員規模でばらつきがある。
国別でアプリ利用数が最多だったのは米国で「平均114個」。日本の46個はグローバル平均を大きく下回るが、前年比の増加率31%は上位10カ国中で最も高かった。
一方、企業規模別に見ると、従業員数2000人以上の企業では「平均247個」、2000人未満の企業では「71個」と、3倍以上の差があった。
それでは、どんなアプリが多く利用されているのか。Oktaでは、2024年の「利用の多いアプリ」トップ15リストを明らかにすると同時に、10年前(2015年)のリストとの比較も行っている。
それによると、2024年のトップ5は「Microsoft 365」「Google Workspace」「AWS(Amazon Web Services)」「Salesforce」「Zoom」といった顔ぶれだ。2015年からの順位変化を見ると、Google WorkspaceやAWSが順位を上げた一方で、Salesforceは順位を落としている。
さらに、2015年のトップ15に入っていたアプリのうち、2024年のリストに残っているのは6個だけであり、この10年間のトレンドの変化を感じさせる。イソラ氏は、現在の業務アプリのトレンドは「コラボレーション」「セキュリティ」「開発者向け」の3つだと説明する。
コラボレーションアプリは10年前のリストにも登場しているが、その顔ぶれは大きく変わっている。2015年には「Outlook Web Access」や「GoToMeeting」の名前があったが、いずれも圏外となり、現在は「Zoom」や「Slack」に置き換わっている。
また、セキュリティの「KnowBe4」「DocuSign」「Palo Alto Networks」や、開発者向けの「Atlassian Product Suite」「GitHub」がトップ15に入っている点も特徴だ。これらのうち、2015年にもトップ15入りしていたのはDocuSignだけだ。
なお、日本で利用の多い業務アプリは、Microsoft 365、Google Workspace、AWSがトップ3だ。GitHubは前年比25%増の成長で、9位から8位にランクアップした。グローバルのトップ15には入っていない「Box」(5位)や「Netskope」(10位)がランクインしているのは「世界では見られない、日本のみのトレンド」(イソラ氏)だという。
世界では「データコンプライアンスアプリ」が急成長、「OCI」も躍進
レポートでは、2024年に「最も急成長したアプリ」トップ10のリストも紹介されている。日本市場では見慣れないアプリの名前も多い。
急成長1位のアプリ「Vanta」、8位の「Drata」の2つは、データ保護やプライバシーに関する要件/ポリシー順守を支援する「データコンプライアンスアプリ」にカテゴライズされる。イソラ氏によると、Vantaは昨年に続いて急成長アプリ1位となっており、データコンプライアンス分野への企業ニーズが高まっている現状がうかがえる。
そのほか、2位の「Bitwarden」はパスワード管理アプリ、3位の「Tailscale」はVPNアプリだ。7位にパブリッククラウドの「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」が登場しているのも興味深い。
MFA(多要素認証)やパスワードレス認証の導入が大幅に加速
すでにほかの調査でも指摘されているが、IDや認証をターゲットとしたセキュリティ脅威の検出件数はOktaでも大幅に増加しているという。顧客の業界別に見ると、エネルギー/採掘/石油/ガス業界では、脅威の発生率が前年の10倍に達した。"認証件数全体の32%が脅威"という非常に高い数字であり、特定業界を狙ったサイバー攻撃が展開されていることがうかがえる。
こうした状況に対して、顧客企業側はどう動いているのか。イソラ氏は、攻撃者の不正アクセスを困難にするために「多くの企業がMFA(多要素認証)の導入を加速させている」と説明する。
多要素認証にもさまざまな方式があるが、フィッシング耐性の高い認証方式へのシフトが進んでいるというたとえばOktaの「Okta FastPass」は前年比52%増の成長率、また「セキュリティキー/生体認証」も前年比16%増だった。その一方で「SMS/音声通話」は前年から14%減少している。
パスワードレス認証の利用も進んでいる。Okta FastPassを使ったパスワードレス認証(代わりにデバイス認証、生体認証などを行う)の件数は、前年比で377%の大きな増加を見せた。
このパスワードレス認証に生体認証を組み合わせているユーザー比率は、ドイツが21%、英国が20%、米国が17%などとなる一方で、日本は11%にとどまった。イソラ氏は、その理由について「生体認証をサポートするハードウェアへの移行が進んでいないからではないか」と分析している。
