緊急開催された「Columbus DAY」AIエージェント特集をレポート
AIエージェントは“ROIが高い”! 日本マイクロソフトとパートナーが描くユースケースの現在地
2025年03月28日 15時00分更新
AIエージェントって儲かるの?
パートナーであるSIer企業が、ある意味最も気になるのは、AIエージェントは「儲かるのか?」という点だろう。まず、米国のとある調査では、2030年にAIエージェント市場は約23億ドルに達すると予測している。大谷氏は、「日本のクラウド市場が立ちあがった時よりも大きい感覚。ビジネスになる可能性は十分にある」と強調する。
また、大谷氏は、AIエージェントを4象限で分類。汎用(ローコード/SaaS)と個別(プロコード)、複雑(マルチエージェント)と容易(シングルエージェント)を軸とした場合、「汎用かつ容易」「汎用かつ複雑」の領域は、マイクロソフトがビルトイン型エージェントやノーコード・ローコード開発のCopilot Studioでカバーするという。
パートナー企業にビジネスとして推進して欲しいのが、「個別かつ容易」「個別かつ複雑」の領域だ。「個別かつ容易」は、通常業務における簡易RAGや外部APIなどと連携するカスタマイズされたAIエージェント、「個別かつ複雑」は、意思決定が伴う業務におけるRAGやファインチューニング、独自LLMなどを提供するカスタマイズされたマルチエージェントが挙げられた。大谷氏は、前者の汎用なAIエージェントと後者のカスタマイズされたAIエージェントは、同程度の市場規模になると推定している。
大谷氏は、「皆さんの得意領域でビジネスを創出できる。どの領域でも十分なオポチュニティ(機会)があるので、マイクロソフトと一緒にチャレンジして欲しい」とパートナー企業に呼びかけた。
ヘッドウォータース:AIエージェントの正確性を担保する3つのポイント
ここからはイベントに登壇した5社のパートナーから、各社のAIエージェント戦略や最新のユースケースについて披露された。
AIソリューション事業を手掛けるヘッドウォータースが共有したのは、「ゲーム・アニメ翻訳」のユースケースだ。本案件では、複数の専門的なAIエージェントが手順に沿って役割をこなす「エージェンティックワークフロー(Agentic Workflow)」のアプローチを採用。最初のエージェントが作品の属性や関係性、ストーリーを抽出することで、続くエージェントが世界観やキャラクターに合わせた翻訳が可能になる。
実際に2024年から稼働しているのが「金融系AIオペレーター」のユースケースだ。AIオペレーターが問い合わせの内容に応じて、専門的なAIエージェントに質問を振り分ける仕組みで、“タスクを分担・委任することで複雑な処理を効率化”している。
ヘッドウォータースの藤江梓氏は、AIエージェントにおいても課題となる正確性を担保するポイントとして、「解決できない場合に再問い合わせする『Refrain』、インプットが足りない場合に追加質問をする『Additional Questions』、そして、LLMに頼りきらずに適宜固定化する『定義済み Workflow』が重要となる」と語った。
ACES:インターフェイスに音声を用いたコンプライアンス領域のユースケースも
続いて登壇したのは、東大松尾研発のAIスタートアップであるACESの與島仙太郎氏だ。同社は、プライベートなデータやデータ化されていない暗黙知までを学習させる“エキスパートAI”の開発に強みを持つという。
このエキスパートAIを活用したAIエージェントは、特に営業領域での実績が増えているという。「稟議書作成」のユースケースでは、AIエージェントによる打ちや素案の生成などにより、担当者の業務負荷を軽減する。
コンプライアンスの領域でも活用が進んでいるという。具体例として、AIエージェントが取引履歴から不審な振り込みを検知して、口座の所有者に音声通話で確認の上で口座を停止するという、インターフェイスに音声を用いたデモが披露された。
與島氏は、「AI活用は、システムやデータ、アルゴリズム、はたまた業務やコンサルティングの観点まで専門性が求められる“総合格闘技”。ACESはデータやアルゴリズムに強いが、システムの領域は弱いため、パートナー同士で連携していきたい」と展望を語った。














