産総研覚醒プロジェクト×研究者大喜利イベント開催! 第2弾も3月15日実施!!
“大喜利”を最先端の研究者がやるってどういうことなのか!?
2025年03月15日 10時30分更新
“大喜利”といえば、テレビ番組での芸人たちの知的なお遊び(あるいはバトル)としてだけではなく、X(旧Twitter)でのやり取りを大喜利と称したり、日常会話でも比喩として使われたりして、いまでは広く一般に目にする言葉になってきているだろう。では、研究者にとっての大喜利とは何か?
ディープテック分野の研究者たちが、それぞれの研究分野の深い知識で議論を深めるイベント「研究者大喜利~若手研究者による独創的な研究開発を支援する覚醒プロジェクト2024編~」が、2024年12月10日に、虎ノ門にあるCIC Tokyoとオンラインにて開催された。国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)が主導する覚醒プロジェクトと、これまで多様なかたちでの研究者大喜利を開催してきたアークレブおよびその研究者ネットワーク(AASN)とのコラボレーションイベントで、覚醒プロジェクトの研究実施者たちの研究テーマを軸に議論やアイデアを交わし、新たな発見や展望を追求した。
なお、この研究者大喜利の第2弾「研究者大喜利 ~若手研究者による独創的な研究開発を支援する覚醒プロジェクト2024編~ 第2弾!」が、3月15日(土)17:30より開催される。
覚醒プロジェクトの精鋭研究者が登壇!
覚醒プロジェクトは、ディープテック分野で活躍する若手研究者を支援するプログラムで、研究費の支給や産総研の最先端施設を利用することで研究環境を大幅に充実させる内容が特徴。2024年度はAI、生命工学、材料・化学、量子の4分野を対象に24件(研究実施者24名)を採択。各研究者にプロジェクトマネージャー(PM)やスーパーバイザー(SV)が伴走する体制のもと、成果を社会実装につなげるよう研究を推進する。
イベントには、覚醒プロジェクトの研究実施者として選ばれた綱島秀樹氏(早稲田大学)と伊東周昌氏(東京大学)の2名とPMの牛久祥孝氏(オムロンサイニックエックス)が登壇した。
左から、覚醒プロジェクトのPMを務める牛久祥孝氏(オムロンサイニックエックス株式会社 リサーチバイスプレジデント)と、研究実施者である綱島秀樹氏(早稲田大学)、伊東周昌氏(東京大学大学院 工学系研究科 博士前期課程)の3名
綱島氏は、自動運転の分野で「因果推論による系統的汎化エージェント」をテーマに研究を進めている。特に、自動運転車が未知の状況に直面した際に適切な行動を選択できるようにするため、AIが見たことのないデータを解決する能力を高める技術に焦点を当てている。因果探索というアプローチを活用し、学習データが限られている領域でAIの能力を拡張することを目指している。「より高度なAIを実現するためには、人間とAIの協働や共生が不可欠」と語る綱島氏は、覚醒プロジェクトが提供するリソースとメンターの存在が研究を大きく後押ししていると述べた。
伊東氏は、産業・工業的に重要なゼオライトと呼ばれる材料を研究の対象としている。不均一触媒に比べて環境負荷の少ないゼオライト触媒を実用化するべく、実験に頼らずシミュレーションを駆使することで、新たなゼオライト触媒設計の指針を模索している。「産総研の有する高価な自動触媒調整装置により研究がより進んでいる」と自身の研究が覚醒プロジェクトに採用されたことで、どのように社会課題の解決につながるかを語った。
お題に合わせて議論が進む研究者大喜利
本イベントのメインである「研究者大喜利」は、社会課題をお題として大喜利形式で議論を進めていく。登壇者だけでなく現地・オンラインの観客もコメントで参加でき、複数の分野の研究者の独自の視点や観客からの無茶ぶりが効果的に混ざり合うことで、新たな価値観や問題解決策の創出を目指している。
綱島氏が提示したお題は「人間を超えたエージェントをどのように作るか」。これに対し、研究者たちは自身の専門分野を交えながら多角的な視点で議論を展開した。また、観客からも活発な無茶振りが寄せられた。
例えば「脳そのものを計算資源として活用する」というアイデアが提示されると、登壇者たちは興味津々に反応した。生体デバイスやオルガノイドを活用したコンピューティングの可能性について、具体的な事例や最新の研究動向が紹介され、「エネルギー効率の高い生体コンピューティングは既存の計算機を凌駕するかもしれない」という期待が共有された。
さらに、「リザーバーコンピューティング」という概念も議論の中心となった。これは物理系の複雑な応答を利用して計算を行う手法であり、タコの足や柔らかいハイドロゲルが計算素子として利用可能であるという新たな視点が示された。人間の身体そのものが計算資源となる未来像も描かれ、会場は驚きと笑いに包まれた。
多角的な視点から新たな気づきが生まれる
伊東氏からのお題は「面倒な実験工程をどうやって淘汰するか」であった。研究者とは切っても切り離せない実験について、登壇者と観客から実験の効率化や自動化に関するアイデアが次々と提案された。伊東氏は「実験で面倒なのは片づけ。ゼオライトは粉状なので慎重に扱わなければならない。計算機によるシミュレーションは、やり直しやすく試行回数を増やすコストが掛からずに済む」と主張した。
MCから「実験装置そのものを改良して、プロセスを完全に自動化する」という提案が出された。これに対し、伊東氏は「粉は粒度によって舞ったりある程度固まったりするため、機械による自動化が難しい」と回答。牛久氏も「状態を認識して行動に反映するというのも、ロボットには難しい」と補足した。
さらに、登壇者から「人間の行動をなぞるから難しくなるなら、実験をロボットに合わせる」という発想の逆転を提示されると、伊東氏は「ロボットによって、これまで掘っていない領域をもっと深く掘ることができるようになると楽しそうだ」と人では得られない実験のメリットに興味を示した。
今回の研究者大喜利の登壇者。MCは左奥の今城 哉裕 氏(東京大学 大学院工学系研究科 精密工学専攻 講師)と松尾 英里子 氏(フリーアナウンサー)に2名。登壇者は左から日高 萌子氏(株式会社amulapo取締役CTO)、小田 悠加 氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科 特任助教)、金 剛洙 氏(株式会社松尾研究所 取締役 経営戦略本部ディレクター)の3名と、覚醒プロジェクトの牛久PM、鍋島・伊東氏
研究者大喜利は、単なる交流イベントに留まらず、覚醒プロジェクトの研究成果とその可能性を広く共有する場となった。普段は少し俗世間から離れたところに位置するように思われがちなディープテック分野の研究者という存在が、身近に感じられるだけでなく、他分野や一般の観客と交わることで、新しい展開を切り開く可能性が感じられた。
なお、この研究者大喜利の第2弾、「研究者大喜利 ~若手研究者による独創的な研究開発を支援する覚醒プロジェクト2024編~ 第2弾!」が、3月15日(土)17:30より、東京・CIC Tokyoで開催される。参加は無料で、会場だけでなく、オンラインでも参加することが可能だ。詳細および参加は、Peatixの「研究者大喜利 ~若手研究者による独創的な研究開発を支援する覚醒プロジェクト2024編~ 第2弾!」をご覧いただきたい。
さらに、覚醒プロジェクトは令和7年度の募集が始まっている。詳細、応募は以下および公式サイトを参照。
覚醒プロジェクト 2025年度研究テーマ募集中!
産総研が実施する若手ディープテック人材育成事業「覚醒プロジェクト」の、2025年度の募集を、3月31日(月)12時まで受け付けている。
覚醒プロジェクトはAI、生命工学、材料・化学、量子の4つの研究領域について、若手研究者による独創的かつ斬新な研究開発テーマを募集し、採択されたテーマの研究開発を支援する。主な支援内容は以下となる。
- 1研究テーマあたり300万円程度の事業費(給与+研究費)を支援
- AI橋渡しクラウド(AI Bridging Cloud Infrastructure:ABCI)やマテリアル・プロセスイノベーション プラットフォーム(Materials Process Innovation:MPIプラットフォーム)などの産総研保有の最先端研究施設の無償利用
- トップレベルの研究者であるプロジェクトマネージャー(PM)による指導・助言
- 事業終了後もPMや参加者による情報交換の場(アラムナイネットワーク)への参加
応募対象となる研究者は、大学院生、社会人(大学や研究機関、企業等に所属していること)。2025年4月1日時点で、学士取得後15年以内が条件となる。
応募は公式サイトから、3月31日(月)12時まで受け付ける。











