MSI「MPG B850 EDGE TI WIFI」レビュー
白いマザーボードでは異質なほどゲーミング寄りデザインのAMD B850搭載モデルは貴重な存在
なお、M.2 SSDの固定については全スロットがツールレス対応している。全スロットにクリップを左右に回してリリース/固定する「EZ M.2 Clip」が、最上段のみバネ式で固定できる「EZ M.2 Clip II」が採用されているほか、残り3スロット分をClip→Clip IIに交換するための予備のEZ M.2 Clip IIも3つ付属する。
Serial ATAは4ポート
2.5インチSSD、3.5インチHDDなどを搭載したい場合は、4ポートあるSerial ATA 3.0が利用できる。黒いSATAポートを大きなチップセットヒートシンクが隠してくれるデザインがホワイトマザーボードではとくにうれしく感じられる。
ハイエンドビデオカード向けのレイアウト&サポート機能
拡張スロットは3本すべてx16形状だが、世代とレーン数をまとめるとPCI Express 5.0 x16、PCI Express 3.0 x1、PCI Express 4.0 x4となる。1、2番目スロット間に十分な空きスペースがあり、厚みのあるビデオカードを搭載しても2番目スロットが利用できるスロット配分だ。そして仮にこの2番目スロットも塞がれてしまったとしても、3番目スロットはPCI Express 4.0 x4対応と世代もレーン数も上位なところが救われる。
ビデオカード用スロットには、「EZ PCIe Release」が設けられている。ビデオカードをスロットから抜き取る際、本来ならスロット末端のラッチを操作しなければならない。ところが大型ビデオカードを挿し、大型空冷CPUクーラーを搭載するとラッチはほとんど見えず指を挿し込むのもギリギリで、なんなら鋭利なヒートシンクで指を怪我するおそれもある。EZ PCIe Releaseなら、メモリスロット横という周囲が開けた場所にあるボタンでラッチに相当するロック機構の操作を行なえる。リリース/固定の状態を示す窓もあるので分かりやすい。自作PC初心者には特にオススメ機能だ。
高性能VRM回路にゲーミング向けのLAN&オーディオ
ここからはMPG B850 EDGE TI WIFIのVRM(CPU電源回路)やボード上の各種チップなど少し深掘りしていこう。
まずはVRM。MPG B850 EDGE TI WIFIのVRMは14+2+1フェーズだ。マザーボードにおいて注目されるのがVCore用の14フェーズで、ゲーミングマザーボードでは一般的に10フェーズ以上。これには1フェーズあたりの負荷分散、それによる低発熱といった狙いもある。ここが多いほど上位モデルといったことになるが、16、18……と増えていくと高価になるのは当然、OCをしない定格運用となるとオーバースペックでもある。
数も重要として、ここに用いられているMOSFETのスペックにも目を向けるとよいだろう。MPG B850 EDGE TI WIFIでは80A対応のSmart Power Stage(SPS)が採用されている。SPSはMOSFETの種類で、たとえばエントリーゲーミングモデルではDrMOS(ドライバーMOSFET、MOSFETとドライバーICを統合したもの)、より上位のモデルではSPS(Smart Power Stage、ドライバーICのほか各種センサーなども統合したもの)といった具合だ。また、80Aという出力もポイントだ。ゲーミングマザーボードのスペックとしてはエントリーで60Aあたり、ウルトラハイエンドでは100Aを超えるものを採用するモデルもある。ここももちろん大出力のものを採用するほど高価、定格運用ではオーバースペックになる。80AならCPUの要求電力に対して十分な余裕を持ちつつ、ゲーミングユーザーの性能要求も満たしてくれるあたりになる。
フェーズ制御を行なうのがPWMコントローラ。14+2フェーズ部はMonolithic Power Systems「MP2857」が用いられており、MISC(VCoreとSoC以外)の1フェーズについてはRichtek Technology「RT3672EE」が用いられているようだ。マザーボードとして重要なのは14+2フェーズ側。MOSFETは先述のとおり80A SPSで、Monolithic Power Systems「MP87670」が用いられていた。一応、MISCの1フェーズも見ておくと、こちらはAlpha & Omega Semiconductor「AOZ5516QI」が用いられていた。