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ドイツ移住のきっかけは〝保活〟の失敗⁉ フリーランス&海外生活7年目にして 初書籍を出版

文●杉山幸恵

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仕事のツテも語学力もゼロからの出発。ここまでこれたのは〝なんとかなるだろうという謎の自信〟

 現在、フリーランスで働いているいまがわさんだが、独立して仕事を獲得したのはなんと移住してから。まったくゼロの状態からスタートし、ヨーロッパのゲーム会社や、ドイツの会社からデザインの仕事を請け負いつつ、おもに日本のクライアントと仕事をしている。

 「まったくツテもなにもない状態でフリーランスになったのですが、Twitter(現在のX)でたまたま見つけたゲーム会社の求人広告に応募。私のデザインの得意領域だったこともあり、英語が壊滅的だったのにもかかわらずトントン拍子に採用に。ドイツの会社は現地の人からの紹介だったり、ブログでデザイン関連の記事を発信していたことで問い合わせがきたりしました。今、メインでお仕事をいただいている会社もブログ経由です。かなりラッキーですね(笑)」

現在はフルリモートでデザインの仕事をしている

 そしてさらに驚くことに、ドイツ語はおろか英語すらほぼ喋れないレベルでドイツに渡ったといういまがわさん。ベルリンは移民が多く英語が通じる場合もあるので、移住に際しては最低でも旅行でやり取りができる程度の英語力、さらにA1(超初級)レベルのドイツ語力があるとよいとはされている。

 「本当に今思うとアホだなと思うんですが、引っ越した当時、ドイツ語はゼロ、英語も3歳児レベルで(笑)。7年目の今もずっと勉強中ですが、英語は旅行で困らないレベル、ドイツ語も日常生活が一応できるレベルにまで成長しました。今はYouTubeやChatGPTで十分勉強できるので、私たちが住み始めたときより語学学習のハードルは低いのではないでしょうか」

息子が通う学校でのやり取りなどは、基本的にドイツ語オンリーのため少し大変だそう

 いまがわさん同様にドイツ語がまったく喋れなかったという夫も、日常生活ができるレベルにまで上達。移住直後は日本の仕事を継続していたそうだが、アメリカやイギリスなどの会社ともつながりが増えたことで、英語力がかなり上達しているそう。

 「実際に住んでみると否が応でもお尻に火が付きますね(笑)。一応、こんな感じでも周りに迷惑をかけつつ、なんとかドイツに納税できているので、言葉の壁を理由にして『絶対に海外には住めない!』とは考えなくていいかなと」

 そして、移住当時は1歳だった一人息子は小学2年生になり、現地の小学校へ通う毎日。当然のことながら、家族のなかで一番ドイツ語の能力が高いのは彼だ。

 「ドイツ人YouTuberの動画を見て、ドイツ語でギャグを披露してくれることも。学校で友達もたくさんできており、『ドイツに一生住む!』そうです(笑)。親としては、私たちの身勝手な都合で無理やりドイツに住まわされているにもかかわらず、彼は人生を楽しんでいるようなので感謝しかありません」

「子どもが全力で遊べる公園が、近隣にいくつもあります」と、いまがわさん

いまがわさんの息子がお気に入りというベルリン自然史博物館

 2018年にドイツに引っ越しをし、2024年に3回目のビザ更新を無事すませたいまがわさん一家。異国の地で暮らして7年、何か新しい気づきや発見はあったのたずねてみた。

 「ドイツに限らず、世界中のどこにでも住めるぐらいの〝適応力〟〝なんとかなるだろうという謎の自信〟を得ることができました。漫画やブログなどに書いていない辛い体験、恥ずかしい体験が星の数ほどあるのですが(笑)、そこも含めて心が強くなったな、成長しているなと日々感じています。日本に住んでいる時はある程度、〝こういう風にあるべきだ〟といった理想像があったんですが、海外に住むといろんな文化や人との繋がりでそのイメージが打ち壊されて、〝無理をしない私のままでOK〟と受け入れられるようになりました」

 「あとドイツに住んでいると、フランスやイギリス、スペインなどヨーロッパ各地に旅行が気軽に行けるのがいい点です! 今年の夏はポルトガルに遊びにいこうかと話をしています。旅行好きには、最高にいい環境だと思いますね」

2日間遊びに行ったというディズニーランド・パリ

 もちろん海外での暮らしとなると大変なことも少なくないそうで、特に現在進行形で習得している言語の上達には苦戦しているとか。

 「聞き取りは英語の方ができるけど、口からパッと出やすいのはドイツ語。英語を喋ってるとドイツ語が混ざってきて、まるでルー大柴さんの〝ルー語〟みたいに(笑)。 これは英語話者が多いベルリンならではの悩みかもしれません。また、病院にかかるには予約が必要で、〝体調が悪いから即日病院へ〟というのは基本的に無理。診察にかかっても、日本と比べて『この治療方針で本当に大丈夫なのか?』ということが多々あり…。『いつのまにか大病を患って死ぬかも⁉』という漠然とした不安はあります。ドイツに来て、日本のお医者さんはすごい!と実感させられました。だから、海外に住むことで一番必要なのは健康を維持することですね!」

 そんないまがわさんだが、2025年1月25年に、生成AIを全く使ったことのない人に向けた入門書「教えて!からあげ先生はじめての生成AI」の漫画を担当。自身が手がけた漫画が掲載される初の書籍となる。

 「私は普段から、ChatGPTなどの生成AIでドイツ語翻訳や文法解説をお願いしたり、仕事のメール作成をしたり、夕飯のレシピ提案をしてもらったりと使い倒していて。いまや生成AIがないと生きていけないぐらいで、ブログでも使い方を載せていたんですね。そうしたら、同じくブロガーで生成AIのプロフェッショナルであるからあげさんから、『今度出す初心者向けの生成AI書籍のマンガ部分を担当してみませんか?』というご連絡をいただきました」

 もともと生成AIを使いこなしていたいまがわさんだったが、友人など周囲には「使い方がわからない」「なんだか怖いから使わない」という人が一定数いたそう。こんなに便利なのに使わないのはもったいないと感じ、いっそ自分でHOWTO漫画でも描こうかと考えていた矢先に今回の依頼が舞い込んできた。

 「からあげさんは普段から生成AIを研究、情報発信されている方。文章がいつも読みやすく理解しやすいため、『からあげさんの本なら生成AIをもっと多くの人に伝えられる!』と、とてもうれしかったです。この書籍の制作にあたっては、年齢や性別を問わず、生成AIをまったく触ったことがない初心者でも『生成AIって怖くないんだ!一度使ってみたい!』と思えることを一番の目標にしました」

 生成AIとは何かを知らないような超初心者、IT用語がわからない人でも理解できるよう、漫画と図解で簡単に説明されている同書。漫画担当のいまがわさんも細部にまでこだわって、制作した。

 「デザイナーとして普段から情報の優先度やユーザー視点を重視しているため、そのノウハウを生かし、初心者でも理解できるよう漫画部分は工夫しています。特にこだわったのは、生成AI初心者の友人からのフィードバックを反映してわかりづらいところを潰したり、生成AIのプロのチェックを入れることで、信頼性の高い内容に仕上がっている点です。完全な初心者から、少し触ってるけどまだよくわかっていない…という方にもピッタリ。さらに実際の使い方例を数多く掲載しているため、学生から社会人まで、どんな職業の方でも興味を持てる使い方が一つは見つかると思います!」

ChatGPT、Claude、Gemini、Copilotなど、どんな生成AIでも応用できる基礎知識が身に付く「教えて!からあげ先生はじめての生成AI」

生成AIとはなにかの説明から始まり、使い方までこの1冊ですべてが丸わかり

仕事のほか、英会話や資格勉強、ダイエットなど、さまざまな場面での使い方を紹介

 保活に失敗したことで安定した職を捨てドイツでフリーランスになるというライフシフトを果たし、さらには縁があって初書籍を出版したいまがわさんに、次なる目標を聞いてみた。

 「目まぐるしい日々に追われて、おもしろおかしいドイツ生活を思うように漫画に描けていません。なので、これからも漫画を描き続け、個人で一冊の本を出すことを目指しています。また、ドイツで苦労して試行錯誤した経験から、同じような悩みを持つ人が楽になれるようなドイツ生活の知見を集めたブログの運営も考えています。そして、10年後も今と同じくドイツに住み続けられたらいいですね。そのころには、語学の問題がさすがに解決してるといいのですが(笑)」

 加えて「まずは今の生活を無理なく維持していきたい」と話してくれたいまがわさん。最後に、彼女のように海外移住を考えている人に向けて、自身の経験を踏まえてアドバイスをもらった。

 「ドイツに限らず、海外移住に興味があるなら、まずは行動してみることをおすすめします。必要な書類や、どれくらいお金がかかるのかを調べていくうちに、具体的なイメージが湧いてくるはずです。一人暮らしであればポンッとフィリピンに英語留学みたいなものから始めるのもいいかもしれません。

 実際ドイツに住んでみても、仕事がうまくいかず日本に帰らざるをえなくなった人、家族が現地の生活と合わず帰った人、さまざまなケースを見てきました。結局行動してみないとわかりません。自分の人生なので、70歳くらいになって『一度くらい海外に住んでみたかった…』と後悔するよりも、行動してみた方が悔いなく生きられるのではないでしょうか。行動することは大変だし、結果的に時間とお金を無駄にすることもあるかもしれませんが、たとえ短い期間だったとしても私たちのように〝適応力〟〝なんとかなるだろうという謎の自信〟は、何かしら身に付くはずです!」

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