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ドイツ移住のきっかけは〝保活〟の失敗⁉ フリーランス&海外生活7年目にして 初書籍を出版

文●杉山幸恵

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 2018年より家族3人で、ドイツ・ベルリンにて暮らしているデザイナー、漫画家のいまがわさん。フリーランスとしてUIデザイン(WEBサイトやアプリをユーザーが使いやすく設計すること)やグラフィックデザインを手がけながら、ブログやXでドイツでの日常などを漫画やイラストで発信。2025年1月25日には、初書籍として漫画を担当した「教えて!からあげ先生はじめての生成AI」が出版されたばかりだ。そんないまがわさんに、なぜドイツ移住というライフシフトをすることになったのか、気になる現在の暮らしぶりなどを聞いてみた。

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「人生で一度くらいは海外に住みたい!」1歳児を連れて家族3人でベルリンに引っ越しを決意

 1988年生まれのいまがわさんは京都の美大を卒業後、WEB制作会社にデザイナーとして入社。ゲーム制作会社に転職したのちに、27歳で前職の同期と結婚、28歳で出産とライフイベントが続く。そして、この出産がドイツへの移住という大きなライフシフトにつながるきっかけとなった。

 「移住というと人生をかけた何か大きなことという感じがするため、個人的には〝引っ越し〟と言っています(笑)。ドイツに引っ越した時は29歳で、渡航一週間後に30歳の誕生日を迎えたので、『私の30代、大丈夫だろうか…』と不安だったのを覚えています」

 そう語るいまがわさんだが、そもそもなぜ、まだ幼い子どもを連れて海外へ移住することにしたのだろうか。

 「ひと言で言うと、日本で保育園に落ちたのでドイツに引っ越しました! 東京都世田谷区で出産したのですが、当時、恐ろしいほどの保活激戦区で…。市役所に相談しても『無理です』と一蹴されてしまったんです」

 新しい働き方が定着した現在と違い、コロナ禍以前では、保育園に預けることができなければ会社で仕事を続けることが困難だった。思い悩んだいまがわさんだったが、かねてより夫婦で「人生で一度くらいは海外に住んでみたいよね」と話していたこともあり、夫から海外移住を提案されたという。

 「最終的に会社を辞めることになるのであれば、保育園の空きがありそうな地元や地方へ引っ越し、フリーランスになってフルリモートワークで働くのはどうか?という話になり。『それなら、いっそのこと海外に住むのもおもしろいかも!』という流れになって(笑)」

 思いがけない夫からの提案に、最初は心の準備ができておらず、戸惑ったといういまがわさん。「言語、仕事、育児など、すべてが不安でした!」と、当時の心境を語る。

 「でも…保活がうまくいかず、結果的に私は会社を辞めるしかない状況だったので、思い切って海外への引っ越しを決断。最終的に気持ちを後押ししたのは、夫がすでにフリーランスだったので、住む場所が変わっても仕事が続けられそうだったという点が大きいですね。また、引っ越しにあたって周囲や両親、義両親からの反対がなかったのも幸運でした。悔いがあるとすれば、当時働いていた会社を辞めなければいけなかったこと。とても楽しくて安定していたので、辞めることは悲しかったです。もしあの時、普通に保育園に受かっていたら、今も日本で暮らしていたかなぁと。現在は、世田谷区の保育園の状況もだいぶ改善されたと聞いたのでよかったです」

 家族3人で海外へ引っ越すにあたり、移住先をドイツのベルリンにしたのはなぜだろうか。

 「フリーランスでも比較的ビザが出やすかったためです。同じくビザが出やすいカナダのバンクーバー、オランダも候補にあがりましたが、生活費が東京と大差ないドイツのほうが暮らしやすそうだと判断。そして、ベルリンは保育料や大学までの学費が安く、最大18歳の学年終了時まで公共交通機関を基本無料で使えるんです(※学生証明書が必要)。また、公園や図書館、美術館も充実しており、子どもを大切にする姿勢が気に入っています。さらにベルリンは公共交通機関が充実していて、車がなくても生活しやすいのも魅力でした。ただ、ドイツのほかの都市と比べて犯罪率はやや高め。そして、首都なのにもかかわらず日本からの直行便はありません!」

ベルリンのクリスマスマーケット

建物に落書きが多いベルリン

 2018年にドイツ・ベルリンへと引っ越しをしたいまがわさん一家。日本からの移住でまず必要となるのは、当然のことながら住居の確保となるわけだが、ここでドイツの住宅事情が大きな壁となって立ちはだかる。家賃の高騰や空き部屋不足など、ドイツ人ですら家を探すのに苦労するほどだという。

 「日本人は観光ビザで最長3か月滞在できるため、現地に来てから探すこともできます。ただしベルリンの場合は住宅難が深刻で、家を見つけるのに数か月かかることも珍しくなく…。そのため、住民登録が可能な中期滞在向けの住宅を確保することが最優先になるかと思います。ドイツで家を探す際には〝家賃滞納や借金がないかの信用情報書〟の提出が求められますが、現地に来たばかりだと、この書類を発行することができません。そのため、日本の銀行の残高証明や収入証明のドイツ語版を用意する必要があります」

 また、言葉が未熟な外国人を敬遠する大家がいたりするなど、ドイツで家探しに苦労しない日本人はレアだという。そんな状況でいまがわさん一家は、ヨーロッパの不動産エージェントに依頼してベルリンの中期滞在向けの部屋を確保してからドイツへ渡り、本格的な長期契約の家を探した。

 「正式に住む場所が決まったら、現地の役所で住民登録をします。また、子どもがいる場合は、保育園や学校の検討は住民登録前から始めておくといいですが、具体的な申し込みや手続きは住民登録を終えてからです。3か月の滞在猶予があるとはいえ、ビザの取得には大学の卒業証明書や婚姻証明など各種書類の翻訳が必要になるため、日本にいる間から準備を進めなければいけません。私たちの場合は、ベルリン在住の日本人エージェントにサポートをお願いし、ビザ取得や民間保険の手続きを手伝ってもらいました。実際、ベルリンでのビザ面談にも付き添っていただけたので心強かったです」

現在のいまがわさんが暮らす家のキッチン。壁の色は大家の趣味だそう

 3か月の間に無事、ベルリンで正式に暮らす家も契約でき、フリーランスビザも取得したいまがわさん。日本からドイツに引っ越すに際してどのくらいの費用がかかったかも聞いてみた。

 「片道のチケット代×家族分、住居費用にデポジット、ビザ申請費用、ビザサポート費用、健康保険費用、被服費、食費などの生活費、家具や家電購入費、日本からドイツへの荷物運搬費用で、150〜200万円ほどでした。私たちはトランクケース大2個、小1個のみでドイツに来たので、当面の生活で必要な物や服を買う必要があったので(笑)。また住宅について、家具付きのもの、キッチンすらついていない家具なしなどさまざまなので、物件によってもかなり費用は変わるかと思います」

 移住先をドイツに決めた理由の一つに東京での生活費+αという物価をあげていたが、それは7年が経った現状も変わらないのだろうか。

 「コロナ禍から物価が1.3倍ぐらいに上がったため、引っ越し当初と比べるともしかしたら月+10万円ぐらいは上乗せされているかな…と。特に外食費が非常に高く、日本で家族3人3000円で食べられるものが、ドイツの場合だと6000円近くするんです。必然的に自炊率が上がりました(笑)」

ベルリン名物であるカレーソースのかかったソーセージ、カリーブルストは約850円

自炊率があがった結果、寿司も自宅で握れるようになったとか

 「また日本の祖父母に息子を会わせるために、1年か2年に1回は日本に帰国するのですが、我が家の場合で1回約50万円は飛んでいきます。そのあたりの、月々の生活費とは別でかかる出費は、ドイツに住む前に予想していなかった部分でした。実家との関係にもよると思いますが、周りの家族もそれぐらいの頻度で一時帰国しています」

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